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Xiaomiの独自チップ「XRING O1(玄戒O1)」はSnapdragon Eliteに肉薄?リークされたベンチマーク結果が物語ること

Y Kobayashi

2025年5月19日6:25AM

Xiaomiは先日、長年の悲願であった自社開発ハイエンドSoC(システム・オン・チップ)「XRING O1(玄戒O1)」の存在を明らかにした。10年という歳月と莫大な投資の末に姿を現したこのチップは、リークされたベンチマークテストにおいて、Qualcommの最新鋭「Snapdragon 8 Elite」に迫る驚異的な性能を示唆しており、市場の勢力図を塗り替える実力を秘めている可能性が明らかになっている。

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10年越しの悲願:巨額投資と執念が生んだ「XRING O1」

XiaomiのCEO、雷軍(Lei Jun)氏は、XRING O1の開発が10年にも及ぶ長期的プロジェクトであったことを明らかにした。この期間、研究開発には過去5年間だけで1050億元(日本円にして約2兆2500億円)という巨額の資金が投じられたという。 2025年だけでも300億元(約6300億円)が研究開発費に充てられており、Xiaomiの本気度が伺える。

この壮大なプロジェクトを推進するため、Xiaomiは1000人規模の専門チームを組織し、そのトップには元Qualcommのシニアディレクターを据えたと報じられている。 その狙いは明白で、QualcommやMediaTekといった既存のチップメーカーへの依存度を低減し、ハードウェアとソフトウェアの統合をより最適化することで、独自の「コア技術」による製品差別化を図ることにあると考えられる。Xiaomiは過去にも「Surge」シリーズといった自社製チップの開発経験があるが、XRING O1はその規模も複雑性も桁違いだ。

ベールを脱ぐXRING O1:リークされた驚異のスペックとアーキテクチャ

正式発表は5月下旬と言う事で、詳細な公式スペックはまだ多くが謎に包まれているXRING O1。しかし、複数のリーク情報から、その驚くべき輪郭が徐々に見え始めている。

CPU構成の謎:10コアの正体と異例のクラスタ

XRING O1のCPUは、10コア構成を採用しているとの情報が有力だ。 具体的には、Armの最新世代コアであるCortex-X925をプライムコアとして搭載し、そのクロック周波数は最大3.9GHzに達するとされる。
リークされたGeekbench 6のテスト結果によれば、その構成は「2 + 4 + 2 + 2」という、4種類の異なるコアクラスタを持つ異例のものとなっている。

  • 最速コア(おそらくCortex-X925):2コア @ 3.90GHz
  • 高性能コア群:4コア @ 3.40GHz
  • 中性能コア群:2コア @ 1.89GHz
  • 高効率コア群(おそらくCortex-A520):2コア @ 1.80GHz

こうしたモバイルSoCで4種類のコアタイプを採用しているものとしては、SamsungのExynos 2400が同様の構成を持っているが、全体としては数少ない事例と言える。 この複雑な構成が、実際のパフォーマンスと電力効率にどのような影響を与えるのか、大いに注目されるところだ。以前には「1+3+4」の8コア構成という噂もあったが、直近の情報では10コア説が有力視されている。

GPUはMali G925の強力版?グラフィック性能への期待

GPUには、Amrの最新世代GPUである「Immortalis G925」が搭載される見込みだ。 特に注目すべきは、そのコア数である。MediaTekのフラッグシップSoC「Dimensity 9400」に搭載されているのがImmortalis G925の12コア版(G925-MC12)であるのに対し、XRING O1は16コア版(G925-MC16)を採用するとの情報がある。 もしこれが事実であれば、単純計算で33%のコア数増加となり、グラフィック性能において大きなアドバンテージを持つ可能性がある。QualcommのAdreno 830(Snapdragon 8 Elite搭載)との性能比較が待たれる。

製造プロセスはTSMC 3nmか?高クロック動作の鍵

製造プロセスについては情報が錯綜している。当初、TSMCの4nmプロセス(N4P)という報道もあったが、3.9GHzという高いCPUクロック周波数を実現するためには、より微細なTSMCの3nmプロセスを採用している可能性が高い。 高性能と許容可能な消費電力を両立させるためには、最先端の製造プロセスが不可欠であり、3nm採用の真偽はXRING O1のポテンシャルを占う上で重要な要素となるだろう。

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リークされたベンチマークが示す「真の実力」

XRING O1の性能を巡っては、Geekbench 6のベンチマークスコアとされるものが複数リークされているが、予想外の高性能に驚かされる。

Geekbenchスコアが物語る、Snapdragon Eliteに迫る性能

リーカーの@Jukanlosreve氏によって明らかにされたGeekbench 6のスコア(現在は削除されている可能性あり)によれば、XRING O1を搭載したとされるXiaomi 25042PN24C(Xiaomi 15S Proと噂されるデバイス)は、以下の数値を叩き出している。

  • シングルコアスコア:2,709点
  • マルチコアスコア:8,125点

このスコアは驚異的だ。比較として、QualcommのSnapdragon 8 Eliteを搭載したXiaomi 15 Proのスコアはシングルコア2,919点、マルチコア8,699点とされており、XRING O1はマルチコア性能においてSnapdragon 8 Eliteに対してわずか約7%低い程度の肉薄ぶりを見せている。 この数値は、MediaTekのフラッグシップDimensity 9400とも肩を並べるレベルであり、スコアとしてはSnapdragon 8 Gen 3をも上回っている。 まさに、Xiaomiが10年をかけて開発してきた努力が実を結びつつある証左と言えるのではないだろうか。

複数のベンチマーク情報と情報の揺らぎ:何を信じるべきか?

一方で、同じXRING O1搭載機とされるデバイスで、より低いスコア(シングルコア1,860点、マルチコア7,449点)が記録された別のGeekbenchリストも存在することも報告されている。 これは、Snapdragon 8 Gen 2とSnapdragon 8 Gen 3の中間程度の性能に留まる。

このスコアのばらつきは、何を意味するのだろうか? テストされたチップが最適化の進んでいない初期のエンジニアリングサンプルである可能性、あるいは異なるクロック周波数や設定で動作する複数のバリアントが存在する可能性も考えられる。現時点では確定的なことは言えないが、複数の情報源を慎重に吟味する必要があるだろう。

また、高性能化に伴う電力効率も気になるところだ。特に10コアという複雑なCPU構成や高いクロック周波数は、バッテリー消費の観点からは懸念材料となり得る。この点については、実際の製品が登場してからの詳細なレビューを待つ必要がある。

XRING O1はスマホ市場のゲームチェンジャーとなるか?

XiaomiによるXRING O1の投入は、QualcommとMediaTekが長らく支配してきたハイエンドSoC市場に、大きな変革をもたらす可能性を秘めている。

Qualcomm、MediaTekへの挑戦状

もしXRING O1がリーク通りの性能を発揮し、かつ安定した供給体制を確立できれば、Xiaomiはハイエンドスマートフォン市場において、より強力な価格競争力と製品の独自性を手に入れることになる。これは、QualcommやMediaTekにとって無視できない「真の脅威」となるだろう。

Huawei、Lenovoに続く中国勢の自社チップ開発トレンド

近年、米国の制裁やサプライチェーンの不安定化などを背景に、中国のテクノロジー企業による自社製チップ開発の動きが加速している。HuaweiがKirinシリーズで先行し、Lenovoも自社製Armチップの開発を進めていると報じられる中、XiaomiのXRING O1は、このトレンドをさらに推し進めるものと言える。国家レベルで半導体産業の育成を目指す中国の戦略とも合致しており、今後の動向から目が離せない。

XRING O1は、早ければ今月後半にも正式にリリースされる予定だ。 そして、この新しいSoCを最初に搭載するデバイスとして有力視されているのが、「Xiaomi 15S Pro」である。 リークされたベンチマークテストで使用されたデバイスのモデル番号「25042PN24C」は、以前からXiaomi 15S Proのものとして噂されていたものと一致している。

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10年の歳月が生んだ「怪物チップ」への期待と懸念

Xiaomiの「XRING O1」は、まさに10年にわたる研究開発の集大成であり、同社の技術力の高さを世界に示す象徴的な存在となりそうだ。リークされているスペックやベンチマークスコアは、既存のハイエンドSoCに匹敵、あるいは凌駕する可能性を秘めており、スマートフォン市場の競争を新たな次元へと引き上げる起爆剤となるかもしれない。

もちろん、情報の多くはまだリーク段階であり、実際の製品でどこまでの性能と安定性を実現できるのか、そして電力効率という重要な課題をどうクリアするのか、見極めるべき点は多い。しかし、Xiaomiがこれほどの野心的なチップを開発したという事実は、テクノロジー業界全体にとって大きなニュースであり、今後他社に大きな影響を与える事は必至だろう。


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