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Xiaomi、独自フラッグシップ 3nm SoC「XRING O1」発表:AnTuTu 300万点超えでスマホ市場の勢力図を塗り替えるか

Y Kobayashi

2025年5月23日

Xiaomiが長年の沈黙を破り、ついに自社開発のフラッグシップ級システムオンチップ(SoC)「XRING O1(玄戒O1)」を正式に発表した。この発表は、同社の最新スマートフォン「Xiaomi 15S Pro」やタブレット「Xiaomi Pad 7 Ultra」の登場と同時に行われ、モバイルチップ市場におけるXiaomiの新たな野心を示すものとなっている。AnTuTuベンチマークで驚異の300万点を超えるスコアを記録したXRING O1は、QualcommのSnapdragon 8 EliteやAppleのA18 Proといった既存のトップチップに真っ向から挑む存在だ。果たして、この独自チップは世界のスマートフォン市場の勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めているのだろうか。

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ベールを脱いだ「XRING O1」:その野心的なスペックに迫る

Xiaomiが満を持して投入するXRING O1は、まさに同社の技術的野心と市場戦略を色濃く反映したチップであると言えるだろう。その詳細を見ていこう。

製造プロセスとトランジスタ数:微細化競争の最前線へ

XRING O1は、業界最先端のTSMC製第2世代3nmプロセス(N3E)を採用して製造される。これにより、190億個という驚異的な数のトランジスタを、109mm²という比較的小さなダイサイズに集積することに成功した。このダイサイズは現行の3nmチップセットの中で最小クラスであり、Apple A18 Pro(110mm²)をわずかに下回り、Snapdragon 8 Elite(124mm²)やDimensity 9400(126mm²)よりも小さい。この小型化は、コスト効率と電力効率の両立を目指した結果かもしれない。

CPU構成:異例の10コアアーキテクチャ

XRING O1のCPUは、スマートフォン向けSoCとしては珍しい10コア構成を採用している点が最大の注目ポイントだ。その内訳は以下の通りである。

  • 高性能コア (Prime Core): 2x Arm Cortex-X925 @ 3.9 GHz (各コア2MB L2キャッシュ)
  • パフォーマンスコア (Performance Core): 4x Arm Cortex-A725 @ 3.4 GHz (各コア1MB L2キャッシュ)
  • パフォーマンスコア (Performance Core): 2x Arm Cortex-A725 @ 1.9 GHz (各コア1MB L2キャッシュ)
  • 高効率コア (Efficiency Core): 2x Arm Cortex-A520 @ 1.8 GHz (共有512KB L2キャッシュ)

2つのCortex-X925プライムコアは最大3.9GHzという高いクロック周波数で動作し、シングルコア性能の向上に寄与すると考えられる。さらに、合計6つのCortex-A725パフォーマンスコアを異なるクロックで搭載することで、マルチコア性能と電力効率のバランスを追求しているのだろう。Android Authorityは、この10コア設計がマルチコアベンチマークにおいて高い競争力を示す可能性があると指摘している。競合となるMediaTek Dimensity 9400がCortex-X925を1コア、Snapdragon 8 EliteがOryon CPUコアを採用しているのとは異なるアプローチであり、Xiaomiの設計思想が興味深い。

GPU:強力なグラフィック性能への期待

グラフィック処理を担当するGPUには、Armの最新世代であるImmortalis-G925を16コア構成で搭載している。これは、同じくImmortalis-G925を採用しながらも12コア構成であるMediaTek Dimensity 9400を上回るコア数であり、より高いグラフィック性能が期待される。このGPU構成はSnapdragon 8 EliteのAdreno GPUと比較しても遜色ない性能を発揮しつつ、発熱を抑えられる可能性があると分析している。

先進技術へのフルサポートと独自のイメージング技術

XRING O1は、最新の技術標準にも幅広く対応している。具体的には、LPDDR5T RAM、Wi-Fi 7、UFS 4.1ストレージ、USB 3.2 Gen 2をサポートしており、フラッグシップSoCに求められる高速なデータ転送と接続性を確保している。

さらに、Xiaomi独自の「第4世代イメージングチップ」も搭載されており、これにより低照度環境での画質向上や4K解像度でのナイトビデオ撮影が可能になるとされている。ただし、モデムやAI処理を担うNPU(ニューラルプロセッシングユニット)に関する詳細は、現時点では明らかにされていない。

公称性能とベンチマーク:Snapdragon Eliteに肉薄か?

XiaomiはXRING O1のAnTuTu V10ベンチマークスコアとして、3,004,137点という数値を公表している。このスコアはRedMagic 10S Pro+に搭載されているSnapdragon 8 Elite Leading Version(最高クロック版)にはわずかに及ばないものの、標準的なSnapdragon 8 EliteやMediaTek Dimensity 9400シリーズとは同等レベルの性能を示唆している。

もちろん、メーカー発表のベンチマークスコアはあくまで参考値であり、実際のデバイスでのパフォーマンスや最適化の度合いによって変動する可能性がある点は留意すべきだろう。しかし、XiaomiがQualcommやMediaTekのハイエンドチップと肩を並べる性能目標を掲げていることは間違いない。

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電力効率と発熱管理:小型ダイの挑戦

Xiaomiは、XRING O1が競合するSnapdragon 8 EliteやApple A18 Proと比較して、より優れた電力効率と発熱管理能力を持つと主張している。特にゲームプレイ中や充電時の発熱抑制に自信を見せているようだ。前述の通り、XRING O1のダイサイズは比較的小さい。一般的にダイサイズが小さいと製造コストを抑えられる可能性がある一方で、パフォーマンスを維持するためには高度な設計技術が求められる。Xiaomiが10コアCPUという構成を採用した背景には、このダイサイズの制約の中で最大限の性能を引き出しつつ、発熱と消費電力をコントロールするという狙いがあるのかもしれない。

XRING O1搭載デバイス:まずはスマートフォンとタブレットから

XRING O1は、まず以下の2つの新製品に搭載されて市場に登場する。

  • Xiaomi 15S Pro: フラッグシップスマートフォン。興味深いことに、これは昨年Snapdragon 8 Eliteを搭載して発売された「Xiaomi 15 Pro」のチップをXRING O1に置き換えたモデルと見られ、新たにカーボンファイバーデザインを採用している。
  • Xiaomi Pad 7 Ultra: プレミアムタブレット。14インチの大型OLEDディスプレイ、12,000mAhの大容量バッテリーを搭載し、厚さ5.1mmという薄型設計が特徴だ。このPad 7 UltraにはXRING O1のダウンクロック版(動作周波数を抑えたバージョン)が搭載される可能性があるようだ。

さらにXiaomiは、スマートウォッチ向けのチップセット「XRING T1」も発表。4Gモデムを内蔵し、Watch S4のeSIM対応モデルに搭載されるという。これは、Xiaomiがスマートフォンやタブレットだけでなく、ウェアラブルデバイスにおいても独自チップ戦略を拡大していく意志の表れと言えるだろう。

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チップ戦国時代、新たな挑戦者の登場

XiaomiによるXRING O1の発表は、モバイルチップ市場に少なからぬ影響を与えるだろう。

長年、QualcommのSnapdragonシリーズの主要顧客であり、最新チップを搭載したスマートフォンをいち早く市場に投入してきたXiaomi。世界第3位のスマートフォンメーカーであるXiaomiが独自チップの開発を本格化させることは、Qualcommにとって大きな出来事だ。両社は最近、Snapdragon 8シリーズのチップ供給に関する複数年契約を締結したと報じられているが、Xiaomiが長期的にはAppleのようにチップの内製化を進め、製品の差別化、コスト管理、サプライチェーンの安定化を図ろうとしていることは想像に難くない。

XiaomiのXRING O1は特にGoogleのTensorチップに対して強力な対抗馬となり得るだろう。最新のCPU/GPUアーキテクチャと3nmプロセスを採用したXRING O1は、Tensorチップを性能面で凌駕する可能性が高い。

チップアーキテクチャの多様化が進む中で、コア数やクロック周波数だけでなく、実際のアプリケーションにおけるパフォーマンス、電力効率、そしてAI処理能力など、総合的なバランスがますます重要になっている。XRING O1がこれらの点でどのような実力を示すのか、市場は固唾を飲んで見守っていると言えよう。

Xiaomiの挑戦は始まったばかり

Xiaomi XRING O1の登場は、同社にとって大きなマイルストーンであると同時に、激化するモバイルチップ開発競争における新たな狼煙でもある。公表されたスペックやベンチマークスコアは非常に野心的であり、既存のチップメーカーにとって無視できない存在となる可能性を秘めている。

しかし、真価が問われるのはこれからだ。実際にXRING O1を搭載したXiaomi 15S ProやPad 7 Ultraが市場に投入され、独立した第三者による詳細なレビューやユーザー体験が明らかになることで、その実力が見えてくるだろう。発熱やバッテリー持続時間、長期的なパフォーマンス維持など、実使用環境での評価が重要となる。

XiaomiがこのXRING O1を足がかりに、今後どのようなチップロードマップを描き、モバイルテクノロジーの進化に貢献していくのか。そして、Qualcomm、MediaTek、Appleといった巨人たちとどのように渡り合っていくのか。これからのスマートフォン市場がまた面白くなってきそうだ。


Sources

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