PCのアップグレードや新規購入を検討しているユーザーは、かつてないコスト上昇に直面している。2026年に入り、DRAMやNAND Flashの価格が急騰し、一部のコンポーネントでは1年でコストが2倍に跳ね上がった。AIインフラへの投資加速がメモリ需要を根本から塗り替え、新工場を増設しても生産能力はまずAI向けHBM(High Bandwidth Memory:広帯域メモリ)へ向かう。供給不足は一時的な混乱ではなく、2027年以降も長期化する見通しだ。

AD

1四半期で最大75%上昇する契約価格の正体

TrendForceの報告によれば、2026年第2四半期の通常DRAM契約価格は、前四半期比で58〜63%上昇する見込みだ。NAND Flashに至っては、前四半期比で70〜75%という極めて高い上昇率が予測されている。北米のクラウドサービスプロバイダー(CSP:Cloud Service Provider)がAI推論の展開を加速させ、高容量RDIMM(Registered DIMM)を大量に調達していることが価格を押し上げている。

サプライヤー側は、限られた生産キャパシティをHBMやサーバー向けアプリケーションへ優先的に再配分した。主要顧客であるCSPは、安定供給を確保するために、より高い価格を許容してLTA(Long Term Agreement:長期契約)を締結する傾向にある。この結果、一般消費者向けのメモリ供給量は相対的に減少している。

グラフィックスDRAMの状況も深刻だ。需要自体は減少傾向にあるが、GDDR(Graphics Double Data Rate)の供給が極めて限定的であるため、価格上昇が止まらない。エンタープライズSSDも別の問題を抱える。2026年中に明確な不足が予想されており、供給の拡大は2028年まで見込めない状況にある。

PC出荷台数増加の裏に潜む需要の前倒し

Counterpoint Researchによると、2026年第1四半期のグローバルPC出荷台数は6330万台に達し、前年同期比で3.2%増加した。Lenovoが前年比9%増の1650万台を出荷し、市場シェア26%という過去最高の第1四半期実績を記録している。Asusに至っては20%という最大の成長率をマークした。

Windows 10のサポート終了に伴う買い替え需要と、メモリ価格がさらに上昇する前に購入しようとする先行購買が成長を支えた。Lenovoの幹部は顧客に対し、早急に製品を購入するようアドバイスしており、消費者の不安が短期的な数字を押し上げた。Appleは長期契約によってコンポーネントを確保しており、他社よりも有利な立場にある。

Counterpoint ResearchのシニアアナリストであるMinsoo Kang氏は、PC用メモリ価格が2026年第1四半期に前四半期比でほぼ2倍に急騰したことを指摘し、このコスト増が2026年のPC市場成長に大きな打撃を与えると分析する。今の数字の伸びは需要の前倒しであり、持続的成長の証左ではない。

AD

新工場建設でも解消しない構造的供給不足

Samsung、SK hynix、Micronの主要3社は生産増強を急いでいるが、2027年末までにDRAM需要の60%しか満たせない見通しだ。Counterpoint Researchの分析では、年率12%の生産増が必要であるのに対し、実際の増産計画は7.5%に留まっている。SK hynixは2026年2月に清州(Cheongju)の新工場を開設したが、これは3社の中で唯一2026年中に増産できる拠点である。

HBMとコンシューマ向けDRAMでは製造プロセスが根本的に異なり、ラインの切り替えは容易ではない。HBMの販売単価はDDR5コンシューマ品の数倍に達するため、メーカーは経済合理性に基づいてHBMの生産を優先する。この構造的な選好により、工場を増設してもその恩恵が一般消費者向け製品に届く可能性は低い。

Samsungの平澤(Pyeongtaek)キャンパス第4工場は2026年中に稼働予定だが、本格的な量産は2027年以降となる。AIタスク専用DRAMを生産する第5工場の目標は2028年以降に設定されている。SK hynixの龍仁(Yongin)新工場も2027年2月の完成を予定しており、スケジュールは前倒しで進行している。各社のスケジュールを総合すると、需給の正常化はHwang氏(Counterpoint Research)の予測通り2028年になると見るのが妥当だ。SK GroupのChey Tae-won会長は、メモリ不足が2030年まで続く可能性に言及しており、さらに長引くリスクも排除できない。

レガシー製品の切り捨てと市場の二極化

MicronはCrucialブランドを廃止し、HBMやSOCAMM2(Small Outline Compression Attached Memory Module 2:AIサーバーやエッジAI向けに設計された次世代コンパクトメモリモジュール規格)などの高収益製品へ完全にシフトした。SamsungやSK hynixも、DDR3、DDR4、LPDDR4といったレガシーDRAMの生産を停止している。低価格帯のメモリを求める層への供給ルートが遮断された形だ。

中国のYMTC(Yangtze Memory Technologies Co.)やCXMT(ChangXin Memory Technologies)が参入し、その空白を埋めようとしている。YMTCとCXMTは3つの新工場を建設中で、合計生産量を2倍に引き上げる計画だ。中国メーカーがレガシーDRAM市場を掌握しつつあるが、最新規格の高性能メモリでは依然として韓国・米国勢の独占状態が続いている。

小規模OEMは大手メーカーとのLTA確保が困難なため、調達コストの増大に直接さらされている。MSIなどのメーカーは、ゲーミング在庫からAIサーバー向けへ注力をシフトせざるを得ない。DDR5 RAMの高騰を受け、エントリーレベルのPCユーザーや自作PCユーザーが新規ビルドを延期する事態となっている。

AD

消費者・法人IT担当者が今できること

2026年後半から2027年にかけて、メモリ価格の下落は見込めない。AIサーバー向け需要が飽和し、メーカーが再びコンシューマ向けラインへ投資を回し始めるまでは、高止まりの状態が続く。

一般消費者は、メモリの増設やPCの買い替えを検討しているなら、価格がさらに上昇する前に決定を下すべきだ。特にDDR5への移行を予定している場合、後から調達するコストは現在の1.5倍以上に膨らむリスクがある。予算が限られている場合は、中国メーカー製などのレガシー規格を許容してコストを抑える選択肢も検討に値する。

法人IT担当者は、個別のパーツ調達ではなく、ベンダーとの包括的な長期契約への切り替えを急ぐ必要がある。単発のスポット購入では、市場価格の乱高下に直接さらされ、予算計画が破綻する恐れがある。AI PCへの移行に伴いメモリ要件が底上げされるとき、調達戦略を持たない企業は2025年以前よりも大きなコスト圧力に直面することになる。


Sources