MicrosoftのAI事業を巡り、収益の見え方を変える数字が出てきた。Bloombergは8月5日、Microsoftが示したAI事業の年換算売上のうち、およそ65〜70%がOpenAIに結び付くと推計した。OpenAIはMicrosoftのクラウド顧客であり、両社の契約には収益分配も残る。AI事業の収益の成り立ちを考えるうえで、無視できない比率である。

ただし、この約70%はMicrosoftが決算書に掲げた顧客別の会計項目ではない。Bloombergによる推計であり、分母はMicrosoftの全社売上でも、Microsoft Cloud全体でもない。狭いAI事業の年換算売上と、広いクラウド事業の実績を分けて読む必要がある。

AD

70%は何を分母にした推計か

MicrosoftはFY26第3四半期に、AI事業の年換算売上規模(annual revenue run rate)が370億ドルを超えたと説明した。前年同期比では123%増である。これはある時点の事業規模を年換算した指標で、FY26に認識したGAAP売上の合計ではない。Microsoftは第4四半期の決算資料でも、AI売上を独立した会計セグメントや顧客別の売上高としては開示していない。

MicrosoftはFY26第4四半期に900億700万ドル、通期に3318億3900万ドルの売上を計上した。一方で370億ドル超のAI年換算売上は、同じ期間に認識した売上を加えたものではなく、AI事業の現在の年間規模を示す表現だ。会計上の実績値と事業指標を混ぜないことが、約70%の射程を捉える出発点になる。

Bloombergの約70%という推計は、この370億ドル超のAI年換算売上を分母に置く。したがって、「Microsoftの売上の約70%がOpenAI由来」という意味にはならない。MicrosoftのFY26全社売上は3318億3900万ドルであり、こちらは年度を通じて認識した実績値だ。年換算指標と年度実績を同じ比率として扱えば、数字の対象が崩れる。

参考までに、370億ドルをFY26通期の3318億3900万ドルに並べれば約11.1%になる。ただし、前者は年換算、後者は年度実績であり、厳密な構成比ではない。Bloombergの算定方法と、OpenAI関連額から370億ドル超へつなぐ計算の詳細はMicrosoftの公開資料では確認できない。約70%は、Microsoftの監査済み開示ではなく、Bloombergが同社開示を基に行った分析として受け取るべき数字である。

広いクラウド事業では景色が変わる

Microsoft CloudのFY26売上は2144億ドルだった。第4四半期だけでも593億ドルに達し、Microsoft 365 Commercial cloud、Azureとその他のクラウドサービス、商用LinkedIn、Dynamics 365を含む広い指標である。Microsoftはこの年間Microsoft Cloud売上の約90%が、フロンティアモデル企業以外の顧客から来たと説明している。

この90%は、370億ドル超のAI年換算売上の内訳ではない。逆に、Bloombergの約70%もMicrosoft Cloud全体のOpenAI比率を示さない。両方とも成り立つ。AI事業という狭い分母ではOpenAIへの集中が大きく、Microsoft Cloudという広い分母では顧客基盤が分散している、という関係だ。

将来の収益を示す指標も、売上と置き換えられない。Microsoftの商用RPO(remaining performance obligation、残存履行義務)は6780億ドルで、前年同期比84%増だった。OpenAIを含むRPOの加重平均期間は2.3年で、約30%を今後12カ月で売上として認識する見通しである。RPOは契約済みの履行義務であり、認識済み売上や利益ではない。

第4四半期の商用ブッキング成長率は前年同期比で、OpenAIを除くと18%、OpenAIのAzureコミットメントを含むと10%(通貨一定ベースでは11%)だった。Microsoftは四半期中の商用RPOの純増分がすべてフロンティアモデル企業以外から来たとも述べ、OpenAIを除くRPOは25%伸びた。これらは契約の増え方を示す材料であって、OpenAIがAI売上の何%を占めるかを直接確定する数字ではない。

AD

Azureを軸にした契約は続く

MicrosoftとOpenAIは4月27日、修正後の提携契約を公表した。MicrosoftはOpenAIのprimary cloud partnerであり続け、Microsoftが必要な能力を提供できない、または提供しない場合を除き、OpenAIの製品はまずAzureで提供される。一方、OpenAIはすべての製品を任意のクラウドプロバイダーで提供できる。Azureとの結び付きは強いが、全ワークロードを恒久的に排他的に囲い込む契約ではない。

経済的なつながりも一方向ではない。修正契約では、MicrosoftがOpenAIへ支払う収益分配は終了する一方、OpenAIからMicrosoftへの収益分配は、上限を条件に同じ比率で2030年まで続く。Microsoftが持つOpenAIの知的財産ライセンスは2032年まで継続するが、非独占である。

この契約には二つの収益経路がある。OpenAIがAzureの計算資源を使うことで生じるクラウド収入と、収益分配の取り決めだ。Bloombergの推計を読む際も、AI機能を搭載したMicrosoft製品の売上と、OpenAIに結び付くインフラ利用・契約上の収入を、同じ顧客別売上高として単純に重ねることはできない。

AI売上の内訳を開示できるか

Microsoftは第4四半期の決算説明で、OpenAIを含む他社モデルと自社のMAIファミリーを合わせ、1万1000超のモデルを提供すると述べた。モデルを代替可能にする仕組みを使い、Maia 200はOpenAIモデルとMAIモデルの双方を支えるという。OpenAIへの収益集中を推計する分析と、Microsoftが提供するモデルの幅は、別の角度から同社のAI事業を照らしている。

自社製品側にも拡大の材料はある。Microsoft 365 Copilotの有料席数は約3000万で、GitHub Copilotの売上は従量課金の導入後に前四半期比60%超で伸びた。ただし、Microsoftはこれらを含む顧客別・製品別のAI売上合計を公表していない。席数や成長率だけから、OpenAI以外のAI収入がどの程度まで育ったかは算出できない。

第4四半期の資本支出は410億ドルで、その約3分の2は主にCPUとGPUといった耐用年数の短い資産に向かった。大規模な計算基盤を誰がどれだけ使うかは、投資回収の見通しを左右する。それでも、約70%というBloombergの推計から、Microsoftの利益率やOpenAI以外の需要を結論付けることはできない。

次に確かめるべきなのは、MicrosoftがAI事業の顧客別・製品別の内訳をどこまで示すかである。370億ドル超のAI年換算売上、2144億ドルのFY26 Microsoft Cloud売上、3318億3900万ドルのFY26全社売上という三つの分母を分け、65〜70%というBloombergの推計が最初の分母にかかるものとして追うことが、依存度の変化を見誤らない条件になる