NANO Nuclear Energyは2026年7月17日、Virginia Nuclear Energy Consortium(VNEC)に加入し、CEOのJames Walkerが理事に就任した。会社は、データセンターや大口需要家の電源を検討する組織との関係づくりに会員資格を生かす考えだ。ただし、発表にはバージニア州内の建設候補地や顧客がなく、発電容量と導入契約、工期も示されていない。動いたのは商用発電所ではなく、州の原子力産業と政策を結ぶネットワークへのアクセスである。

バージニア州ではデータセンターの電力需要がすでに数GWに達し、州と電力会社は大口需要家向け料金を整え、将来の電源確保を検討している。その市場へマイクロ炉を持ち込むには、会員加入をサイト、電力購入、許認可へ変える必要がある。NANO Nuclearの主力炉KRONOS MMRは米原子力規制委員会(NRC)の正式審査に入ったが、現在の申請対象はイリノイ州の研究炉だ。

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顧客ではなく、州の原子力ネットワークへの接点

VNECは、バージニア州法に基づいて設立された株式を持たない非営利法人である。州法は別にVirginia Nuclear Energy Consortium Authorityを州の政治的下部組織として設ける一方、VNECそのものは州政府機関ではないと明記している。会員には州内大学、研究所、原子力関連企業などを想定し、理事会が承認すればその他の個人・法人も加われる。

James Walkerが加わったVNEC理事会には、Dominion Energyのほか、Framatome、X-energy、TerraPower、NuScale Power、GE Hitachiなどの関係者が並ぶ。原子力産業の供給側や電力会社、大学と同じ場で事業開発や政策提言に関われる点は、NANO Nuclearにとって実務上の利点になる。同時に、この顔ぶれは会員資格が排他的な技術選定ではないことも示している。

VNECの2025〜2029年戦略計画は、新型炉と小型モジュール炉(SMR)の導入支援、研究・教育炉の設置、資金確保、供給網と人材の育成を主要目標に掲げた。データセンターは、病院や軍事施設と並ぶ常時電源の用途候補である。NANO Nuclearの加入は、この計画に自社技術を売り込む入口になるが、州の採択や補助金、Dominionの発注を意味しない。

4GWから16.6GWへ膨らむ電力需要

Dominion EnergyがPJMへ2026年1月に提出した資料によると、同社管内のデータセンターが記録した2025年の同時最大需要は4GWだった。同社は2046年の需要を16.6GWと予測する。

一方、電力会社は顧客が示した容量を、そのまま将来需要へ足していない。Dominionが2025年7月時点で把握していた契約上の容量は合計47GWで、内訳は電力サービス契約が9.8GW、建設段階の契約が7.1GW、技術検討段階が30.1GWだった。最後の30.1GWは顧客に建設義務がない。Dominion自身が47GWの容量と16.6GWの需要予測を分けているのは、検討案件がすべて稼働するわけではないからだ。

州の監査機関JLARCは、大型の新設データセンターが100MWから200MWを超え、計画中のキャンパスでは1,000MWを上回る場合があると報告した。発電側は出力の大きさを決めたうえで、常時運転と保守停止中の代替電源を設計し、予備力と送電接続も確保しなければならない。需要の大きさはマイクロ炉の商機を生むが、必要なモジュール数と料金を示せなければ電力計画には入れない。

バージニア州企業委員会は2025年11月、25MW以上の大口需要家を対象とするGS-5料金クラスを承認した。2027年1月1日から、対象顧客は契約した送配電需要の最低85%、発電需要の最低60%を支払う。州はデータセンターを呼び込む政策と並行して、需要予測が外れた際の費用を他の利用者へ移さない仕組みを整え始めている。新しい電源も、こうした費用分担の中で経済性を問われる。

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45MWth研究炉とデータセンター電源の間

NRCが審査しているKRONOS MMRは、高温ガス炉である。UCO燃料核を多層で包むTRISO燃料を使い、その層を放射性物質の閉じ込め機能の一部にする。一次冷却材のヘリウムは炉心から熱を運び、溶融塩の熱エネルギー貯蔵システムへ渡す。原子炉の熱と発電設備をこの貯蔵系でつなぐ構成だ。

NRCが掲載する出力は45MWth、すなわち熱出力である。発電時には熱を電気へ変える過程の損失と所内消費があるため、電気出力は熱出力より小さくなる。NRCの案件ページは正味の電気出力を示しておらず、データセンターの100MWという電力需要と直接比べることはできない。商用提案には、電力変換設備を含む1基当たりの送電端出力が必要だ。

現在の申請者はUniversity of Illinois Urbana-Champaignで、建設場所もイリノイ州シャンペーン郡である。目的は研究炉の建設許可であり、バージニア州の商用データセンター発電所ではない。申請は2026年3月31日に提出され、5月18日に受理された。NRCの審査予定では、環境評価の最終版が2027年5月、安全評価の最終版が同年9月となる。

建設許可が下りても運転は始まらない。NRCは、大学が運転前に別途運転免許を申請し、取得する必要があると説明している。さらにバージニア州で商用案件を進めるなら、サイトと申請主体を定め、発電設備としての出力、複数炉の配置、保守時の冗長性、燃料調達を具体化しなければならない。VNEC加入は、この許認可段階を短縮しない。

州内で先行するのはDominionのNorth Anna計画

州内で具体的に進むSMR計画は、Dominion EnergyのNorth Anna原子力発電所を起点にしている。同社は2024年7月に技術提案を募り、Amazonと開発の枠組みを検討してきた。バージニア州の立法委員会が2026年6月にまとめた作業計画では、目標時期は2030年代半ばであり、技術選定、費用、現実的な工程が引き続き確認事項に挙げられた。

州法は電力会社がSMRの初期開発費を料金から回収する道も用意した。上限は年2,500万ドル、累計1億2,500万ドルである。ただし、建設許可や統合ライセンスの取得費、本体建設費は対象外だ。調査と設計に電気料金を通じた費用回収の仕組みがあっても、建設へ進むには別の審査と資金判断が残る。

NANO Nuclearは2026年5月、Supermicroとデータセンター向け電源の統合を検討する覚書を結んだ。しかし会社発表は、この覚書に拘束力がなく、確定契約や売上を生む案件へ進まない可能性を明記している。VNEC加入は販売先と供給網へ近づく次の事業開発策だが、現時点の公表資料から受注へ読み替えることはできない。

最初の転換点は、NANO Nuclearまたは提携先がバージニア州内のサイトと電力購入者を示し、拘束力のある契約へ進むことだ。そこで初めて、電気出力と必要な炉数を確定し、料金と稼働時期を州の需要予測と比較できる。KRONOS自体では2027年9月に予定される安全評価の最終化が次の具体的な期限になる。その前後にバージニア州向けの申請と顧客が続くかが、会員加入を発電計画へ変えられるかを決める。