AIインフラの増設が、半導体の外側にある金属市場まで揺らし始めた。中国基金報によると、タンタルインゴットは2025年末から2026年6月1日までに158%上昇し、インジウムも年初から6月中旬までに約60%値上がりした。錫は6月初めに1トン45万元へ達した後、すぐに反落している。三つを「コンピュート金属」とまとめれば同じ相場に見えるが、AI機器の中で担う仕事も供給制約もまるで違う。価格の持続性を測るには、金属ごとに需要と供給を分けて見る必要がある。
158%はタンタルインゴット単体の値動き
158%は、タンタルインゴットの2025年末と2026年6月1日を比べた数字だ。中国基金報が6月15日に報じた国内相場では、1キログラム2,600元から6,700元へ上昇した。上昇率を計算すると157.7%となり、報道の158%と一致する。インジウムも年初の1キログラム2,960元から6月中旬の4,720元へ上がり、上昇率は59.5%だった。
錫の値動きは、上昇と反落を一緒に見なければならない。中国基金報は、1トン当たりの価格が2025年11月の約30万元から2026年6月初めに45万元へ達した後、約39.8万元まで下がったと伝えている。6月初めの高値からの下落率は11.6%になる。「半年40%上昇」という数字は上昇局面を捉えているが、価格が一方向へ動き続けたわけではない。
三つの上昇率は同じ指数の構成銘柄ではない。タンタルはインゴット、インジウムは精製金属、錫は国内のトン価格であり、品位も基準日も異なる。数字は各市場の逼迫を捉えているが、158%、60%、40%という順番を、そのままAI需要の強さの順番に置き換えることはできない。
実装・電源・光伝送を支える三つの金属
錫はチップを基板へつなぐはんだに入る。先端パッケージではチップレットや積層した部品を多数の接点で接続するため、実装が増えるほどはんだ材料の需要も増える。CCTV Financeの業界調査はAIサーバー1台の錫使用量を従来型の3倍超、中国基金報は4倍超と報じた。ただし、サーバー構成や比較対象は公開されていない。確定できるのは、使用量が従来型を上回る点である。
タンタルは、小型で信頼性を求める電子コンデンサーに使われる。AIサーバーでは高出力のプロセッサーへ安定して電力を供給する部品が増え、タンタル需要を押し上げる。一方、USGSはコンデンサーの代替材料としてアルミニウム、セラミックス、ニオブを挙げるものの、用途によって性能低下やコスト上昇を伴うとしている。値上がりしても、直ちに別材料へ切り替えられるとは限らない。
インジウムは光通信側で効く。USGSによれば、リン化インジウム(InP)は高速光検出器やレーザーダイオードに使われ、光ファイバーでデータを送受信する。データセンター内の接続速度が上がれば、光トランシーバーに必要なInP素子も増える。錫が実装、タンタルが電源回路、インジウムが光伝送を支える。「コンピュート金属」は一つの用途分類ではなく、AI設備の異なる用途と機能を束ねた市場用語なのである。
なぜ需要増より供給地域の集中が効くのか
タンタル鉱山はアフリカ中部へ大きく偏る。USGSの2025年推計では、世界の鉱山生産2,500トンのうちコンゴ民主共和国が1,300トン、ルワンダが400トンを占めた。両国だけで68%になる。鉱山事故や地域情勢で出荷が止まれば、需要増が小さくてもインゴット価格まで短期間で波及しやすい。
インジウム精錬は中国への集中がさらに明確だ。USGSは2025年の世界生産を1,100トン、中国を760トンと見積もっており、その比率は約69%に達する。しかもインジウムは独立した鉱山から大量に採る金属ではなく、主に亜鉛硫化鉱の処理過程で回収される。インジウム価格が上がっても、亜鉛鉱山や精錬工程をすぐに増やせなければ供給は追いつかない。
錫は二つより供給国が分散しているが、余裕が大きいわけではない。2025年の世界鉱山生産29万トンに対し、中国は7.1万トン、インドネシアは6.1万トンだった。ミャンマーは前年の2万トンから1.2万トンへ40%減った。AI機器向けの増分は全需要の一部でも、主要産地の減産と重なれば価格を押し上げるには十分である。
生産3.3%増と利益99.4%増の隔たり
中国国家統計局によると、2026年上期の十種有色金属生産は4,151万トンと前年同期比3.3%増えた。対して、有色金属冶金・圧延業の利益は99.4%増だった。銅冶金は53.9%、アルミニウム冶金は117.1%の増益である。数量の伸びを大きく上回る利益成長は、高い金属価格が上流と精錬の採算へ流れ込んだことを示している。
価格上昇は2026年に突然始まったわけでもない。中国工業情報化部がまとめた第1四半期の平均価格は、前年同期比で銅30.5%、アルミニウム17.3%、錫48.6%上昇した。AIインフラは需要を増やしたが、輸出規制や鉱山の減産、在庫の薄さも同時に働いた。小金属は市場規模が小さいため、資金の流出入で現物需給以上に振れやすい。
調達側が追うべき数字も金属ごとに変わる。錫は主要産地の生産回復と在庫、タンタルはコンゴ民主共和国とルワンダの出荷、インジウムは中国の精錬量とInP基板の増産が先行指標になる。リサイクルや代替材料が増えれば圧力は和らぐ。反対に、光通信とAIサーバーの増産が続く間に供給集中が崩れなければ、「コンピュート金属」の高騰は投機テーマでは済まず、部品メーカーの納期と原価を縛る調達問題として残る。



