ニューヨーク大学(NYU)の研究チームは2026年7月31日、米国本土にあるデータセンター4,283施設の立地を分析した論文を『Nature Cities』に発表した。施設の97.5%が都市または小都市統計圏にあり、市レベルの統計モデルでは、地元発電所の定格容量が立地と最も強く関連していた。IT関連雇用、光回線の品質、廃止された石炭火力の存在がそれに続く。

調査結果は、データセンターを広い土地がある農村部の大型建築物として捉える見方を修正する。建物が中心市街地から離れていても、送電設備と通信網、雇用市場を共有する都市圏からは外れていないケースが多い。データセンターの電力需要拡大が見込まれるなか、クラウドの物理基盤は既存都市の電力計画へ深く入り込む。

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「97.5%」と高密度な市街地は別の境界

論文が使うmetropolitan statistical areaとmicropolitan statistical areaは、行政上の市境でも、建物が連続する市街地でもない。米国行政管理予算局が統計用に定め、郡を構成単位とする地域である。人口5万人以上のurban areaを核にするものがmetropolitan、1万人以上5万人未満を核にするものがmicropolitanで、中心部と通勤関係の強い周辺郡も含む。

この広い境界では4,283施設の97.5%が都市圏に入る。一方、米国国勢調査局が住宅密度などから引くCensus urban areaの内部にある施設は73.5%だった。urban areaは、密集したCensus blockをつなぎ、少なくとも2,000戸または人口5,000人を含む地域である。

Census urban areaとの位置関係 全施設に占める割合
境界の内側 73.5%
境界から5km以内 92.9%
境界から10km以内 95.1%
境界から20km以内 97.5%

施設からurban areaまでの距離は平均5.9km、中央値1.26kmだった。つまり、論文が見つけたのは「都心への集中」より「市街地の内側と近郊への集中」である。広大な郡を丸ごと都市圏に数える97.5%と、密集市街地を示す73.5%を使い分けると、郊外型キャンパスと都市インフラの結びつきが見える。

集積には大きな偏りもある。ワシントン―アーリントン―アレクサンドリア都市圏は610施設で全体の14.2%を占めた。シカゴ圏241施設、ダラス・フォートワース圏192施設、ニューヨーク圏163施設、フェニックス圏154施設が続き、上位5都市圏で約3分の1に達する。最大市場の規模は、クラウドが均等に分散した網ではなく、少数の都市圏を太い結節点とする構造を示す。

発電容量の係数がIT人材と光回線を上回る

研究チームは、施設数のようにゼロが多く偏った計数データを扱うため、910都市圏を対象に負の二項回帰を使った。各説明変数を標準化して比べると、地元発電所の定格容量の係数は1.324で最も大きかった。IT関連雇用は0.719、光回線品質は0.444、廃止石炭火力の存在は0.162で、いずれも正の関連を示した。自然災害リスクはマイナス0.476だった。

定格容量は発電設備の最大出力を表す。データセンターへ実際に流れた電力量や、送電線に残る空き容量を直接測った値ではない。それでも、大量の電力を扱ってきた地域ほど施設数が多いという関係は、都市人口や電力価格だけで立地を説明するより強かった。水ストレス、電力価格の変動、送電網ストレスは市レベルの主モデルでは統計的に有意ではなかった。

郡単位に細分した2,137郡の分析でも、発電容量とIT雇用は正の有意な関連を保った。光回線品質、廃止石炭火力も同じだった。ただし、送電網ストレスと電力価格変動は郡モデルで負の有意な関連へ変わり、自然災害や州の税制優遇は有意でなくなった。観察する地理の細かさで一部の結果が動くため、係数を全国共通の立地ルールとみなすことはできない。

論文はPCアルゴリズムによる因果構造探索も行った。施設数へ直接つながる経路が発電容量とIT雇用から伸び、光回線品質、廃止石炭火力も同じ構造に入った。ただし、この分析は時間順序を入力せず、因果効果の大きさも求めない。立地を決めた企業の稟議や系統接続申請を追跡した結果ではなく、変数間の条件付き独立関係と整合する構造仮説である。

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旧化石燃料地域と開発中施設の重なり

旧化石燃料地域との重なりは、開発段階の施設で大きい。稼働・開発状況を確認できた4,177施設のうち、開発中は1,221施設、稼働中は2,956施設だった。炭鉱閉鎖または石炭火力廃止に由来する「Coal Closure Energy Community」に入る割合は、開発中が79施設で6.47%、稼働中が90施設で3.04%。開発中の比率は約2.13倍である。

ここでいうEnergy Communityは、2022年のInflation Reduction Actが適格なクリーンエネルギー事業の税額控除を上乗せするために設けた地理指定だ。Coal Closure区分は、1999年末より後に炭鉱が閉鎖した地区、2009年末より後に石炭火力ユニットが廃止された地区と、その隣接地区を対象にする。データセンター建設へ直接与える補助金の名称ではなく、研究は旧化石燃料地域を識別する地理データとして使っている。

Energy Communityとの重なりは、データセンターが廃止発電所と同じ敷地に建つことや、残存設備を実際に使うことまでは示さない。一方、米エネルギー省傘下のPacific Northwest National Laboratory(PNNL)は、廃止発電所の跡地で系統への接続設備、管理棟、駐車場などを再利用できると整理し、データセンター需要へ新しいクリーン電源を接続する候補地に挙げている。論文の地理的な関連を説明し得る経路の一つだが、個々の施設で検証された機構ではない。

廃止石炭火力との重なりを、現役の石炭電源を好む証拠へ置き換えることはできない。補足分析では、州の発電量に占める石炭比率や再生可能エネルギー比率と、データセンターの活動・容量に意味のある関連は確認されなかった。研究結果は燃料の選好より、系統接続や産業用地が長く残す経路依存という説明と整合する。

都市の電力計画へ戻ってくるクラウド

Lawrence Berkeley National Laboratory(LBNL)が2026年6月に更新した推計では、米国データセンターの2030年電力消費は基準ケースで649TWh、全米消費の11.8%に達する。機器出荷や冷却性能などの不確実性を重ねた範囲は521~843TWh、9.5~15.3%である。確定した需要ではないが、立地が少数の都市圏へ重なるなら、全国合計より先に地域の発電・送電制約が表面化する。

論文は2025年に少なくとも1施設を持つ319都市について、人口と施設数の関係も調べた。スケーリング指数は0.746で、95%信頼区間は0.672~0.820だった。大都市ほど施設の絶対数は多いが、人口当たりでは少ない。4種類の人口シナリオを使った2050年投影でも、既存の都市階層が維持された。ただし、これは人口だけで延長した統計投影で、個別の建設計画や系統接続、電源政策を織り込んだ予測ではない。

研究の元となる施設一覧は商用のDataCenterMapで、完全な生データは公開されていない。著者らは分析を再現できる処理済みデータとコードをGitHubで公開したが、施設容量には欠損があり、実際の電力契約や接続可能容量も対象外である。この制約を踏まえると、次に確認すべきは施設発表の総MWより、系統接続契約の進捗、開発中から稼働中へ移った比率、旧火力跡で調達される電源の内訳となる。

クラウドの地理は、サーバーを置ける土地の分布より、都市が築いてきた電力・通信・雇用の履歴に沿っている。旧化石燃料地域と開発中施設の重なりが今後も続くなら、データセンター政策は企業誘致の問題と電源・送電・住民負担の問題を同じ地図で扱う必要がある。