台湾のDRAMメーカー、南亜科技(Nanya Technology)が設備投資を一気に引き上げる。李培瑛総経理は2026年7月10日の決算後会見で、2027年に2,000億台湾ドル超を投じる予備計画を示した。2026年の投資上限520億台湾ドルに対しておよそ4倍にあたる。ただしReutersによれば、この金額はまだ取締役会の承認を得ていない。価格高騰で得た利益を、建設が長期化してきた新工場の生産設備へ振り向けられるのか。南亜科技はDRAM不足の恩恵を受ける側から、供給を増やす側へ踏み出そうとしている。

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2,000億台湾ドル超が動かす新工場の中身

2027年の投資規模は、南亜科技にとって平年の延長では説明できない。設備投資は2023年が132億台湾ドル、2024年が161億台湾ドル、2025年が134億台湾ドルだった。2026年は上限を520億台湾ドルへ引き上げたが、上期に実際に使ったのは69億台湾ドルにすぎない。2027年の予備計画は、2023年から2026年までの4年間を合計した947億台湾ドルの2倍を超える規模である。

資金の向かう先は、新北市泰山区の南林科技園区で建設中の12インチDRAM工場だ。南亜科技は第1段階として、2028年までに月3万枚のウェハ投入能力を立ち上げる。最終的には月4万5,000枚まで広げる計画で、建屋を含む総投資額は4,800億台湾ドルに達する見通しだ。2027年の2,000億台湾ドル超は、この総額の一部を単年で執行する計画にあたる。

ここには時間軸の変化もある。2022年6月の起工時、南亜科技は総投資額を3,000億台湾ドルとし、2025年の工場完成を予定していた。現在は2027年第1四半期に装置を搬入し、2028年までに第1段階を月3万枚へ引き上げる工程へ移っている。総投資見積もりは1,800億台湾ドル増え、能力の立ち上がりも後ろへ延びた。増額の理由を、会社は明らかにしていない。

新工場では、自社開発の10nm級プロセスを使う。現在開発中なのは1C、1D、1E世代とEUV露光への対応だ。巨額の投資額は建物の完成を意味する数字ではない。先端製造装置を入れ、工程を認定し、歩留まりを上げるための費用を含んでいる。2026年の設備投資計画でも、ウェハ製造装置が約30%を占める。

粗利益率79.5%を作ったのは数量より価格

投資拡大を可能にしたのは、DRAM市況の急反転だ。南亜科技の2026年第2四半期売上高は825億4,900万台湾ドルで、前四半期から68.2%増えた。粗利益は656億1,900万台湾ドル、粗利益率は79.5%に達する。前年同期は粗損失21億6,500万台湾ドル、粗利益率マイナス20.6%だった。わずか1年で採算が逆方向へ振れた。

売上高を押し上げた主因は出荷量ではない。第2四半期の平均販売価格は前四半期比で60%超上昇した一方、ビット出荷量は横ばいだった。第1四半期も平均販売価格が70%超上がり、出荷量は中一桁%減っている。つまり製品を大幅に多く売った結果ではなく、限られた供給へ買い手が高い価格を払ったことで利益が膨らんだ。

第2四半期の純利益は501億9,200万台湾ドル、2026年上期では762億5,000万台湾ドルとなった。これは2025年通期純利益66億300万台湾ドルの約11.5倍にあたる。市況の振れ幅は大きい。それでも設備投資には、価格が高い間に稼いだ現金を将来の生産能力へ変えるという合理性がある。

南亜科技は2026年通期のビット出荷量を前年比10%台後半増やす計画だ。既存工場で製品構成と生産効率を調整すれば、短期の出荷は増やせる。だが、ウェハ投入能力そのものを大きく広げるには新工場が要る。足元の高利益率と2028年の供給増の間には、少なくとも1年半の隔たりがある。

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HBM需要が汎用DRAMの価格まで押し上げる

南亜科技の収益急回復は、AI向けメモリ需要がDRAM市場全体へ波及した結果でもある。同社は、AIサーバーと汎用サーバーがHBMやRDIMMを大量に必要とし、PCやスマートフォンのほか、自動車・家電向けのメモリ供給も圧迫していると説明する。大手メーカーが採算の高い製品へ生産枠を移せば、DDR4など成熟製品の供給も細る。AIデータセンターに載らない機器までメモリ価格上昇の影響を受けるのは、このためだ。

南亜科技はDDR5とLPDDR5/5Xに加え、DDR4、LPDDR4/4X、DDR3、LPDDR3を供給している。2026年上期には、AIインフラとサーバー向けが売上高の20%超を占めた。AI計算機の中核メモリに限らず、企業向けSSD、ネットワーク機器、管理コントローラーなど周辺機器でもDRAM搭載量が増えている。幅広い製品群を持つ同社には、供給の空いた市場へ製品を振り向ける機会が生まれている。

ただし、供給不足は南亜科技の増産だけで解ける規模ではない。同社は逼迫が今後数四半期続くとみており、新設能力は複数年の長期供給契約と需要見通しを合わせながら2028年以降に増やす方針だ。これは過剰生産で価格が崩れるDRAM業界の循環を避ける動きでもある。顧客との契約を先に固め、売り先を見通せる範囲で設備を動かす。

現金1,984億台湾ドルでも、承認と量産は別問題

南亜科技には投資を始めるための資金が積み上がった。2026年6月末のネットキャッシュは1,984億台湾ドルで、2027年設備投資の予備計画に近い。第2四半期だけで営業活動から550億1,300万台湾ドルを得て、設備投資40億4,600万台湾ドルを差し引いたフリーキャッシュフローは509億6,700万台湾ドルにのぼる。

さらに同社は4月、主要顧客4社を引受先とする私募増資で787億2,000万台湾ドルを調達した。増資後の発行済み株式に占める比率は10.19%である。会社は調達資金を工場施設と先端メモリ製造設備へ使うと説明している。資金と長期の顧客関係を同時に確保したことで、新工場への投資を進めやすくなる。

とはいえ、現金残高と量産能力は直結しない。まず2027年予算が取締役会で承認される必要がある。続いて装置搬入、1C以降の工程認定、顧客の製品評価、歩留まり向上が控える。月3万枚という能力も、2028年までに到達する計画値だ。

2027年の投資額が正式予算へ入るか、2027年第1四半期の装置搬入が予定通り始まるか、そして2028年に月3万枚へ達するか。この三つが、現在の価格高騰を実際の供給増へ変えられるかを決める。南亜科技がそこまで到達すれば、AI需要で狭くなった汎用DRAMの供給経路はようやく太くなる。