TrendForceは2026年7月27日、NVIDIAがSpectrum-X Ethernet Photonicsを一部のパートナーへ出荷し、Broadcomも51.2TbpsのBaillyを小量出荷していると報告した。NVIDIAは5月末に同製品を「生産中」と発表しており、今回の調査はその後に限定出荷が始まったことを伝える。ただし、出荷先での用途が評価・検証なのか、商用導入なのかは明らかにされていない。一方、Broadcomは2024年からCPO製品を顧客へ納入し、翌年には量産を掲げていた。それでも市場への供給は限られる。光学部品をスイッチASICのすぐそばへ移すCPOは、電力と帯域密度の問題を和らげる代わりに、光エンジン、熱、先端パッケージの難題を一つの製品へ集めるからだ。
「生産中」と「広く買える」の間
NVIDIAは2026年5月31日、Vera Rubinの量産立ち上げとともに、200Gbps SerDesを使うSpectrum-X Ethernet Photonicsも生産中だと発表した。初期のパートナー兼採用者にはCoreWeave、Lambda、Oracle Cloud Infrastructureを挙げている。公式製品ページが示す提供時期は2026年下半期であり、TrendForceが確認した一部パートナー向け出荷は、その途中に当たる。出荷数量や歩留まり、一般販売の開始日は開示されていない。
Broadcomの先行例は、「量産」という言葉の幅をよく表している。同社は2024年3月にTomahawk 5と光エンジンを組み合わせたBaillyを顧客へ納入し、2025年5月には「初の量産CPOソリューション」と表現した。Delta ElectronicsとMicas Networksもスイッチシステムの生産を発表している。ところが、TrendForceが2026年7月時点で捉えたのは、なお小量の出荷である。
技術検証はかなり進んだ。Broadcomが2025年10月に公表したMetaでの試験では、高温ラボ環境における400G相当ポートの累積稼働が100万ポート・デバイス時間に達し、瞬断を表すlink flapは0件だった。これは特定条件のcharacterization結果であり、本番ネットワークへの全面配備や将来の無故障を保証しない。両社のEthernet CPOは「作れる」段階を越えたが、「必要なだけ供給できる」段階には届いていない。
409.6Tbpsは4基のASICでつくる
TrendForceはSpectrum-X CPOの処理能力を最大400Tbpsと記した。NVIDIAの資料では、製品群の上限は409.6Tbpsである。ただし、この数字は1基の巨大なスイッチASICの性能ではない。
| 製品 | スイッチ構成 | 総帯域 | ポート/レーン構成 |
|---|---|---|---|
| NVIDIA SN6810 | Spectrum-6 ASIC×1 | 102.4Tbps | 800Gbps×128 |
| NVIDIA SN6800 | Spectrum-6 ASIC×4 | 409.6Tbps | 800Gbps×512 |
| Broadcom TH5-Bailly | Tomahawk 5×1 | 51.2Tbps | 400Gbps×128 |
| Broadcom TH6-Davisson | Tomahawk 6×1 | 102.4Tbps | 200Gbps/レーン |
NVIDIAの102.4Tbps級パッケージは、3.2Tbpsのシリコンフォトニクス光エンジンを32個搭載し、200Gbpsの電気レーンを512本収容する。SN6800はこのクラスのASICを4基使い、筐体内のfiber shuffleで409.6Tbpsへ束ねる。400Tbpsという丸め値を単一ASICの能力として読むと、パッケージ規模と必要部品数を見誤る。
Broadcomも世代を進めている。Baillyは6.4Tbpsの光エンジン8個で51.2Tbpsを構成する。2025年10月に発表した次世代Davissonは同じ帯域の光エンジンを16個へ増やし、1レーン200Gbps、合計102.4Tbpsに達した。ただし、発表時の提供条件は早期アクセス顧客とパートナーへのサンプル出荷だった。先端世代の存在は、Baillyがすでに広く普及したことを意味しない。
光をASICへ近づける代償
従来のプラガブル光トランシーバーでは、スイッチASICが出す高速電気信号を基板上の長い配線とコネクターに通し、前面の光モジュールで光へ変える。周波数が上がるほど信号が崩れるため、DSPで補償しなければならない。NVIDIAの比較では、200Gbpsチャネルの電気損失は最大22dB、インターフェース当たりの電力はしばしば30Wに達する。
CPOは光電変換をASICのパッケージ近傍へ移し、電気経路を短くする。NVIDIAは同じ比較で損失を約4dB、電力を最小9Wまで下げられるとし、Spectrum-Xで3.5倍の電力効率を掲げる。BroadcomもBaillyの光インターコネクト電力が標準的なプラガブル構成より70%以上少ないと主張している。いずれも各社の構成に基づく値であり、同じ試験条件による横並びの性能表ではない。
集積すると交換性が失われるという課題には、レーザーを外へ出す設計で対処する。NVIDIAの光エンジンは変調器や受光器をパッケージ内に置く一方、光源は前面から交換できるExternal Laser Source(ELS)に分離した。単一ASIC版はELSを16個、4 ASIC版は64個使う。BroadcomのBaillyも交換可能なRemote Laser Moduleに対応する。したがって「光エンジンがレーザーまで内蔵する」という一般説明は、現在の主要製品すべてには当てはまらない。
良率、熱、先端パッケージの三重制約
部品を減らせるCPOは、残った部品の製造を簡単にはしない。光ICと電子ICを接合し、光ファイバーを高精度に位置合わせしてから、電気特性と光学特性を一体で検査する必要がある。さらに、高発熱のスイッチASICの近くで微小な変調器を安定動作させなければならない。1カ所の不良が高価な複合パッケージ全体の歩留まりへ響く。
NVIDIAの分業体制を見ると、供給制約の所在が分かる。TSMCはCOUPEプロセスで光ICと電子ICを積層し、SPILがパッケージの組立と試験を担う。TFC Communicationはレーザーダイをモジュール化して信頼性を検証し、Foxconnがスイッチシステムへ組み上げる。TSMCは2026年にCOUPE on substrate方式のCPO生産を始める計画を示した。TrendForceは、この工程がAIチップやHPCプロセッサーと2.5D/3Dパッケージング資源を奪い合うとみている。
NVIDIAは供給網を契約でも固めた。2026年3月、LumentumとCoherentへ各20億ドル、計40億ドルを投資し、両社と複数年の購入契約を結んだ。契約には将来の生産能力へアクセスする権利が含まれるが、いずれも非独占である。NVIDIAは光部品を完全内製するのではなく、設計と調達を結び付け、必要な生産能力へのアクセスを早期に確保している。
0.5%から35%へ向かうまで
CPOが量産入りしても、プラガブル光学系がすぐ消えるわけではない。TrendForceが2026年3月に示した推計では、AIデータセンター向け光通信モジュールに占めるCPOは2026年に約0.5%で、2030年に35%へ達する可能性がある。Broadcomは、銅配線がコストと低消費電力を生かし、2028年まではラック内の短距離接続で主流を保つと予測している。
光学系の中でも経路は分かれる。NPOは光エンジンをASICと同じ基板上へ近づけつつ、別パッケージとして交換性と複数社調達を残す。TrendForceは多数のクラウド事業者が近中期の移行策としてNPOを優先するとみる。より高密度なCPOは、NVIDIAのようにスイッチからシステムまで一体で供給する構成と相性がよい。
同社の6月予測では、CPOとNPOの合計市場は2030年に390億ドルを超える一方、プラガブル光モジュールも約260億ドルを保つ。CPOスイッチの増産期は2027〜2028年、Scale-up接続への光導入で市場全体が加速する時期は2028〜2029年と見込まれている。2026年下半期に確認すべきなのは、NVIDIAが一部パートナー向け出荷を一般提供へ広げられるか、そして光エンジン良率とCOUPEパッケージング能力をどこまで数字で示せるかである。そこまで進んで初めて、CPOの「量産」は市場規模を動かす言葉になる。
