米国の対中輸出規制が厳しさを増す中、NVIDIAが中国事業を将来的に分割・独立させる可能性が浮上している。台湾メディアDigiTimesの報道によると、NVIDIAは中国企業との合弁事業設立などを通じ、同市場での事業継続を図る「プランB」を検討している模様のようだ。
NVIDIA、中国事業スピンオフを計画か
NVIDIAにとって中国市場は、AI分野だけでなく、自動車やコンシューマー向けグラフィックスにおいても極めて重要である。同社はこの市場で30年にわたり関係を築き、支配的な地位を確立してきた。しかし、近年強化される米国の輸出規制により、その立場は揺らいでいる。
NVIDIAはこれまでも、規制に対応するために中国向けAI GPUの仕様を変更するなど対策を講じてきたが、規制の変更によって計画が覆される状況が続いていた。このような不確実な状況を受け、DigiTimesはNVIDIAが中国事業を独立させる、いわゆる「事業スピンオフ」を計画している可能性があると報じている。
この計画は、中国国内企業との合弁事業設立を通じて実行される可能性があるという。スピンオフが実現すれば、NVIDIAの中国事業は独立した法人として運営されることになり、米国の規制の影響を直接受けにくくなるかもしれない。
報道によれば、この変革の第一歩として、NVIDIA独自の並列コンピューティングプラットフォームである「CUDA」エコシステムの維持に焦点が当てられる可能性がある。ハードウェア分野ではHuaweiのような強力な国内競合企業が出現しているが、ソフトウェア・エコシステムにおいては依然としてNVIDIAが優位性を保っている。中国事業を独立させ、CUDAエコシステムを維持・管理することで、国内AI技術企業が容易に追随できないようにする狙いがあるとみられる。
中国市場の重要性とNVIDIAの「プランB」
NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、公式の場で繰り返し中国との30年にわたる関係と市場の重要性を強調してきた。この発言は、同社にとって中国事業がいかに重要であるかを物語っている。
地政学的リスクの高まりを受け、Huang氏が水面下で「プランB」を進めているという噂も流れている。これは、前述の合弁会社設立によるCUDAエコシステム維持、そして将来的な中国事業の完全な分割を示唆するものだ。
最近、NVIDIAが中国のAI企業DeepSeekとカスタムチップ開発で提携するという報道があったが、これはNVIDIAによって否定されている。しかし、今回のDigiTimesの報道は、NVIDIAが中国市場に対して何らかの重要な決定を下そうとしている可能性を示唆している。独立法人化により、米国の規制を部分的に回避し、巨大な中国AI市場でのビジネスを継続しようとする戦略かもしれない。
NVIDIAの中国事業分割が実現すれば、世界最大の半導体企業の一つが事実上二つに分かれることになり、グローバルなテクノロジーサプライチェーンの分断が一層鮮明になる。
ただし、これらの情報は現時点ではDigiTimesの報道に基づくものであり、NVIDIAや関係各社からの公式な発表はない。計画の実現可能性や具体的な内容については不明な点が多く、今後の動向を注視する必要があるだろう。
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