OpenAIが、現職・元従業員から約70億ドル相当の株式を買い取った。Bloombergが2026年8月10日に報じ、CNBCも売却総額と8,520億ドルの評価額を独自に確認した。非公開企業の従業員が上場を待たずに持ち分を現金化する取引だが、今回の変化は売却額の大きさに限らない。2025年10月は外部投資家が従業員株を買ったのに対し、今回はOpenAI自身が買い手になった。
約70億ドルは、3月にOpenAIが調達した1,220億ドルの約5.7%に当たる。従業員への流動性供給を、投資家の追加購入ではなくOpenAIの資金で賄ったことになる。
約70億ドルの従業員株をOpenAI自身が買い取った
Bloombergによると、OpenAIは外部投資家を募らず、現職・元従業員が差し出した株式を自ら買い取った。CNBCは、取引が3月の大型調達時から準備されていたと伝えている。売り手は保有株の一部を現金に換えられるため、IPOの完了を待つ必要がない。
Investor.govは、会社が自社の証券を取得するテンダーオファーを「発行会社テンダー」と説明する。第三者が買う取引と比べ、売り手が現金を受け取る点は同じでも、資金を出す主体が違う。今回はOpenAI自身が約70億ドルの買い手になった。
OpenAIは2025年10月の資本再編で、営利部門をOpenAI Group PBCへ移行した。同社の公式説明では、再編後は全株主が同じ種類の伝統的株式を持つ。今回の取引は、この株式を現金化する大規模な社内流動性イベントになった。
ただし、参加人数や売却株数、1人当たりの上限、1株当たり価格は公表されていない。約70億ドルは取引全体の規模を示すが、売却代金が従業員へどう分布したかまでは分からない。
約10カ月で評価額は70%上がった
2025年10月の取引では、現職・元従業員が約66億ドルの株式をThrive CapitalやSoftBankなどへ売却した。AP通信によると、そのときのOpenAIの評価額は5,000億ドルだった。今回の8,520億ドルは、そこから約70%高い。
一方、売却総額は66億ドルから約70億ドルへ約6%増えたにすぎない。二つの数字を並べると、換金規模の拡大よりも、同じ会社の株式に付けられた評価基準の上昇の方がはるかに大きい。もっとも、各取引の株式条件が完全に同じかは開示されていないため、比較できるのは報じられた評価額と総額までである。
今回は買い手も変わった。前回は外部投資家が従業員株を取得したが、今回はOpenAIが自ら買い取ったとBloombergは報じている。従業員への流動性供給を続けながら、3月の資金調達と同じ8,520億ドルの評価額を使った。
1,220億ドル調達後に背負う資金負担
OpenAIは2026年3月31日、1,220億ドルのコミット済み資本を調達し、投資後評価額が8,520億ドルになったと公式発表した。今回の約70億ドルは、その調達額の約5.7%、評価額の約0.8%に当たる。2025年10月の従業員株売却額66億ドルを約4億ドル上回った。
同社は3月時点で、約47億ドルのリボルビング信用枠も確保し、クロージング時には未使用だったと説明している。今回の買い取り額はその枠を約23億ドル上回る。ただし、資金が3月の調達金、事業から得た現金、別の資金手当てのどれから出たかは明らかになっていない。
株式の処理も不明だ。OpenAIが買い取った株式を消却すれば発行済み株式数は減るが、自己株式として保有する場合は意味が変わる。処理方法が開示されるまでは、既存株主の持分比率や将来の希薄化への効果を決めつけられない。
IPO時期より先に確認すべき条件
CNBCによると、OpenAIは2026年6月、SECへIPO書類を非公開で提出した。ただし、上場時期は公表していない。今回のテンダーオファーは従業員がIPO前に換金できる手段を提供するが、それだけで上場延期を意味するわけではない。
取引の実質を判断するには、参加人数、1人当たりの売却上限、買い取った株式の処理方法が要る。OpenAIは次のテンダーでも会社が買い手になるのか。今回の約70億ドルが一度限りの措置か、会社主導の換金を定例化するのかは、次回の条件で確かめることになる。



