OpenAIは8月17日、オハイオ州パイク郡のPORTS-Pikeで約8 IT-GWのAI計算基盤を20年間借りる契約をSB Energyと結んだ。SB Energyが施設を建設、所有、運営し、OpenAIがテナントとなる。NVIDIAは同日、初期約4.25 IT-GWを対象に、残存価値保証契約を結んだことをForm 8-Kで開示した。

今回の開示により、OpenAIの20年リースと、NVIDIAの支払義務を累計最大1050億ドルとする保証の範囲・条件が契約として示された。ただし、この1050億ドルはOpenAIの賃料総額でも、NVIDIAの即時投資額でもない。

約8 IT-GWはサーバーなどIT機器側の負荷を表す数字であり、発電計画の10GWとは同じ指標ではない。契約の規模と電力インフラ、そしてNVIDIAが負う条件付きの金融リスクを切り分けて見る必要がある。

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1050億ドルは、賃料でも現金投資でもない

NVIDIAの残存価値保証は、OpenAIが賃料を払えなくなった時点で毎期の賃料を肩代わりする仕組みではない。OpenAIの倒産に伴うリース不履行、または賃料不払いが起き、SB Energyが施設を再リースまたは売却しても保証最低価値を回収できない場合に、NVIDIAがその差額を原則として負担する。初期契約の支払義務には、累計1050億ドルの上限が置かれた。

各保証は原則、対応するリース開始時に効力を持つ。SB Energyが2028年から見込む利用可能状態(ready-for-service)の条件を満たすことも、NVIDIAの支払義務が生じる条件の一つだ。契約は署名されたが、初期4.25 IT-GWがすべて利用可能になったことを意味しない。

保証が発動した場合、NVIDIAにはリース承継、再リースの要請、売却手続き、リース終了という選択肢がある。一定の事業費を払いながら、救済手段の選択を最長1年先送りすることもできる。OpenAIは、NVIDIAがSB Energyへ実際に支払った全額をNVIDIAへ償還し、補償することに合意した。

NVIDIAの義務は、各リース開始から20年目、OpenAIが契約に沿ってリースを終了した時点、OpenAIが契約上十分とされる信用格付けを得た時点などのうち、最も早い時点で終わる。1050億ドルは損失額や会計計上額を示す数字ではなく、特定の不履行後に残る価値不足へ備えた名目上限である。

4.25 IT-GWの保証と、まだ行使されていない約3.8 IT-GW

NVIDIAが契約した保証の対象は、OpenAIが借りる約8 IT-GW全体ではなく、初期約4.25 IT-GWである。残りについてNVIDIAは追加約3.8 IT-GWを支援できるが、行使は同社の単独裁量に委ねられている。NVIDIAの発表では残りを3.75 IT-GWと表記しており、約3.8 IT-GWという整理は丸めの違いに当たる。追加分を確定済みの保証としては扱えない。

比較の目安になるのは、NVIDIAが2026年4月26日時点で開示していた既存の施設リース保証である。最大総エクスポージャーは35億ドル、期間は5〜7年で、7億1200万ドルをエスクローに置いていた。今回の1050億ドルは名目上限で30倍だが、最大20年の残存価値保証であり、期待損失や当初の現金支出が30倍になるとはいえない。

また、NVIDIAによるSB Energyへの15億ドル出資は、1050億ドルの保証とは別の取引だ。計算基盤の独占供給者、施設を建てる企業の株主、保証人という三つの役割を、同社がPORTS-Pikeで同時に担うことになる。

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2028年に使えるのは第1期800MW、全体は2032年まで段階建設

OpenAIによると、第1期800MWは既存のAEPインフラを主に使い、2028年から利用可能になる見込みだ。これは約8 IT-GW全体の完成時期ではない。全体は2032年までの6年間で段階的に建設する計画で、OpenAIは完成容量が利用可能になってから支払いを始めるとしている。

PORTS-Pikeの電源計画は、少なくとも10GWの新規発電を含む。このうち9.2GWは天然ガスで、米エネルギー省は日米戦略的貿易投資協定に基づく日本側資金333億ドルがガス発電へ向かうとしている。IT負荷の約8 IT-GW、発電規模の10GW、天然ガスの9.2GWは、いずれも同じ施設に関わるが、分母と用途が異なる数字である。

送電側では、SB EnergyがAEP Ohioを通じて高圧送電線など地域送電網に42億ドル以上を投じる計画だ。各社とDOEは、電力と送電の費用を事業側が負担すると説明する。追加開発には新規発電所、送電線、関連インフラが必要であり、許認可、環境審査、資金調達も前提条件として残る。

この計画を巡る金額は、負担する企業も使途も異なる。

金額 資金・保証の層 状態と範囲
最大1050億ドル NVIDIAの残存価値保証 初期4.25 IT-GW。OpenAIの不履行後に条件付きで発動
15億ドル NVIDIAからSB Energyへの出資 保証とは別の株式投資
333億ドル 9.2GWの天然ガス発電 日米戦略的貿易投資協定に基づく日本側資金
42億ドル以上 送電網の増強 SB EnergyがAEP Ohioを通じて投資
8000万ドル 地域基金 SB Energyの既存4000万ドルに、OpenAIが追加4000万ドルを拠出

したがって、これらを足してデータセンターの総事業費とみなすことはできない。1050億ドルは条件付き保証の上限、15億ドルは企業への出資であり、発電と送電の資金は計算機を収める建屋の外側へ向かう。

OpenAIは建設雇用3万5000人、長期運用雇用2500人を見込む。どちらも将来予測であって実績ではない。

売り手が買い手の信用リスクにも関わる

NVIDIAはPORTS-PikeのAI計算基盤を独占的に供給し、初期展開にはGPU、CPU、ネットワークを含むDSXプラットフォームを使う。OpenAIは約8 IT-GWの顧客になる。一方でNVIDIAはSB Energyへ出資し、OpenAIの不履行後に施設価値が不足した場合には保証人として救済手段を選べる。

NVIDIAが押さえるのは、同社がLPSと呼ぶ土地、電力、建屋の長期容量である。GPUなどの計算機は世代交代が速いが、電源と建屋は20年のリース期間を通じて使う。NVIDIAは新しい世代へ繰り返し更新できる施設として設計する方針を示している。ただし、どの世代の製品を何台導入するかは開示されていない。

この関係は、GPU売上が直ちに確定することを意味しない。しかし、OpenAIの支払い能力とNVIDIAの財務リスクは、従来の機器供給契約より強く結び付く。OpenAIは賃料を、売上、事業のキャッシュフロー、投資家から調達した資本で支払う計画を示しているが、その説明自体が将来の支払いを保証するものではない。

保証契約の書式全文は、2026年7月26日終了四半期のNVIDIA Form 10-Qの添付資料として提出される予定である。第1期800MWが利用可能状態の条件を満たす時期と、NVIDIAが追加約3.8 IT-GWの選択権を行使するかで、この契約が実際にどこまで広がるかが決まるだろう。