Oracleは、企業向けソフトウェアに組み込んだAIがより多くの業務を処理することで、既存顧客からの売上を増やそうとしている。2026年10月28日の投資家向け説明会(Investor Day)で、アプリケーション開発担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのChris Leone氏が、AIの作業量が増えればAIユニットの消費が進み、契約ユーザー数を増やさなくても売上が伸びると説明したことを、The Registerが報じた。従来のユーザー数に基づくサブスクリプション収入に、AIの利用量に連動する収入を加える戦略だ。

ただし、AIの作業量に応じて料金が発生するという説明だけでは、使用した分を後から請求する仕組みなのか、あらかじめ購入した利用枠を消費する仕組みなのかは分からない。Oracleが公開した2026年10月8日付の価格表と、10月20日発効の契約文書「Fusion Cloud Service Descriptions v102026」を照合すると、AIユニットの直接購入、指名ユーザー単位、従業員単位の3方式では、いずれも一定量のAIユニットが先に付与される。定価を付与ユニット数で割ると、3方式とも1ユニットあたり0.01ドルとなる。実際の利用可能量を左右するのは、契約によって付与されるユニット数と、AIモデルや作業の種類ごとに設定された消費倍率だ。

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OracleのAI収益戦略と、価格表に並ぶ4種類の契約

Oracleが10月28日のInvestor Dayで示したのは、AI関連事業の成長を前提とする長期的な財務計画だった。米証券取引委員会(SEC)に提出された臨時報告書(Form 8-K)の添付資料によると、同社は2030年5月期(FY2030)の年間売上高を2,250億ドル以上と予想している。また、2027年5月期から2030年5月期までの投資計画について、既存債務の借り換えを除く追加資金調達額を200億ドルに抑える方針も示した。こうした成長計画の一環として、企業向けアプリケーションのAI利用を新たな収益源に育てようとしている。

製品面では、Oracleは9月29日に、エージェント型アプリケーションの実行基盤「Oracle Fusion Claw」を発表した。これはAIによる推論や計画と、従来型の計算処理を組み合わせ、複雑な業務を自律的に進めるための仕組みだ。Oracleの発表によると、Fusion Clawを利用する25種類のアプリケーションが追加され、同社のエージェント型アプリケーションは合計75種類となった。対象には会計、人事、物流、営業などの業務が含まれる。

こうしたAI機能に関連する料金は、Oracleが10月8日に公開した「Fusion Cloud Service Global Price List」に記載されている。価格表には、次の4種類のSKU(販売単位)が掲載されている。

契約・サービス 定価(米ドル) 課金単位 最低契約数量
Fusion AI Units Cloud Service 1,000ドル 10万AIユニット 1単位
Fusion AI Agents Cloud Service(指名ユーザー) 月額150ドル 指名ユーザー1人 50人
Fusion AI Agents Cloud Service(従業員) 月額5ドル 従業員1人 500人
Fusion Agentic Applications Cloud Service 年額50万ドル アプリケーション契約1件 1件

いずれも値引き前の公開定価であり、実際の契約金額を示すものではない。重要なのは、ユニットを直接購入する方式だけでなく、ユーザー数や従業員数を基準とする契約にもAIユニットの利用枠が含まれていることだ。ただし、4種類の契約がすべて同じ料金体系というわけではない。エージェント型アプリケーションの年額契約には、AIユニットの付与に加えて、アプリケーションの利用権も含まれている。

指名ユーザー月額150ドルも1万5,000ユニット、3方式の実質単価は共通

Oracleの契約文書「Fusion Cloud Service Descriptions v102026」では、契約方式ごとに付与されるAIユニット数が定められている。指名ユーザー単位の契約では「1万5,000ユニット×指名ユーザー数×契約月数」、従業員単位の契約では「500ユニット×従業員数×契約月数」が、契約期間の開始時にまとめて付与される。AIユニットを直接購入する場合は、1単位につき10万ユニットが利用枠に加算される。いずれも、契約によって定められたユニット数を先に確保し、AI機能の利用に応じて残高が減っていく仕組みだ。

この付与量を基に計算すると、3方式のユニットあたりの価格はすべて同じになる。10万ユニットを1,000ドルで購入する場合は1,000÷100,000、指名ユーザー1人あたり月額150ドルの場合は150÷15,000、従業員1人あたり月額5ドルの場合は5÷500となり、いずれも1ユニットあたり0.01ドルだ。ただし、これは公開定価を付与ユニット数で割った換算値であり、それぞれの契約に伴う利用権や対象ユーザーの制限まで同一という意味ではない。

2026年10月29日の欧州中央銀行(ECB)参照レートである1ドル=158.06円を用いると、1ユニットは約1.58円、指名ユーザー1人あたりの月額150ドルは2万3,709円、従業員1人あたりの月額5ドルは約790円となる。指名ユーザー契約には最低50人という条件があるため、定価での最低契約額は月額7,500ドルだ。これらは為替レートを使った参考換算であり、日本の顧客が実際に支払う金額を示すものではない。

一方、年額50万ドルの「Fusion Agentic Applications Cloud Service」は、他の3方式とは分けて考える必要がある。この契約では、1カ月あたり250万ユニットに相当する利用枠が付与され、12カ月契約なら年間3,000万ユニットとなる。1ユニット0.01ドルで換算すると30万ドル分で、年間契約価格の60%に相当する。残る20万ドルの差額が生じるため、50万ドルの全額をAIユニットの購入代金として扱うことはできない。ただし、この差額についてOracleが個別の機能利用料などとして明示的に配分しているわけではなく、価格の内訳を確定することもできない。

3方式が利用枠を先に付与する仕組みであることは、契約条項からも確認できる。Oracleの契約文書では、契約期間の終了時点で使い切れなかった購入済みAIユニットは失効し、未使用分の返金や料金の減額は行わないと定めている。また、残高が不足した場合には追加ユニットを購入するか、ユニットを消費する機能の利用を停止しなければならない。残高がゼロを下回った場合、Oracleは該当機能へのアクセスを制限、縮小、遮断する権利を留保している。

重要なのは、確認したAIユニット関連条項には、利用枠を超過した分を自動的に事後請求する規定が見当たらないことだ。ここでいう「前払い枠」とは、実際の支払日を意味するのではなく、契約期間に使えるユニット数を先に付与し、使い切れば追加購入か利用停止を求める仕組みを指す。指名ユーザーや従業員単位の契約は価格表では月額料金として記載されているが、支払いの具体的な時期までは、この文書だけでは判断できない。また、開発環境やテスト環境でのAI利用もユニット消費の対象となるため、本番運用以外の作業も利用枠の管理に含める必要がある。

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同じAI処理でも0ユニットから20ユニットに変わる消費倍率

AIユニットの消費量を決めるのは、単純な実行回数ではない。Oracleの契約文書では、各作業の入力トークン数と出力トークン数を合計し、1万で割って整数に切り上げた値に、モデル区分と作業の種類に応じた消費倍率(Action Value Factor)を掛ける方式が採用されている。トークンはAIが文章などを処理する際の単位であり、同じ作業でも入力内容や生成する回答の長さによって消費量が変わる。

例えば、入力と出力の合計が1万トークン以内であれば、倍率を掛ける前の値は1となる。一方、合計が1万1トークンになれば2に切り上げられるため、消費倍率が20倍のモデルでは40ユニットを消費する。ユニットの消費量はトークン数に完全に比例するのではなく、作業ごとに1万トークン単位で切り上げられる点に注意が必要だ。

契約文書の表1では、作業とモデル区分ごとに次の倍率が設定されている。

作業の種類 Basic区分 Frontier区分
一般的な作業(質問への回答、要約、取引の承認、推論ステップ) 0倍 20倍
Fusion Clawの作業(詳細な調査、自律実行、計画立案) 利用不可 20倍

※Oracle Fusion Cloud Service Descriptions v102026の表1に基づく。消費倍率は2026年10月1日発効。契約文書にはこのほか、Balanced区分とBring Your Own(顧客が用意するモデル)の区分もある。

この仕組みでは、同じ1万トークン以内の一般的な作業でも、Basic区分のモデルを使えば消費は0ユニットだが、Frontier区分では20ユニットとなる。公開定価で換算すると20ユニットは0.20ドル、前述の為替レートでは約32円だ。また、1回の作業で入力と出力の合計が100万トークンになった場合、Frontier区分では100×20=2,000ユニットを消費し、定価換算で20ドル(約3,161円)となる。ただし、複数の作業に分割すると作業ごとに切り上げが発生するため、同じ総トークン数でも消費量が増える場合がある。

どのAIモデルがどの区分に該当するかは、契約文書の表2で定められている。Frontier区分にはGoogleのGemini 3.5 FlashやOpenAIのGPT-5.5が含まれ、Basic区分にはOracle Cloud Infrastructure(OCI)上で動作するOpenAIのGPT-OSSが分類されている。また、Cohere Command-R-08-2024とMeta Llama 3.3は「Included」区分とされ、対象となる利用ではAIユニットを消費しない。

OracleはBasic区分のGPT-OSSについて、開発やテスト、比較的利用量の少ない基本的な用途に適したモデルと説明している。一方、計画立案やツール呼び出しを伴うAIエージェントの処理には、Basic以外のモデルを推奨している。実際にFusion Clawの作業ではBasic区分を利用できず、Frontier区分なら20倍、顧客が持ち込むモデルでは10倍の消費倍率が適用される。OracleがFusion Clawの推論基盤として挙げているのも、GeminiやOpenAIのフロンティアモデルだ。

このため、AIの作業量が増えたとしても、すべての処理が同じペースでAIユニットを消費するわけではない。無料枠に収まる処理や消費倍率0倍のモデルを使う処理は、追加のユニット購入につながらない。一方、Frontier区分を使う複雑な作業が増えれば、利用枠の減少も速くなる。OracleがInvestor Dayで説明したAI利用の拡大による増収は、こうした作業内容とモデル選択によって左右される。

さらに、Oracleは契約上、第三者モデルの価格変更や基盤技術の変更、新サービスの追加などを理由に、消費倍率と対象モデルの表を変更できる。変更には原則として30日以上前の通知が必要で、通知期間の経過後、将来の利用に対して適用される。つまり、契約期間中の利用枠が変わらなくても、モデルの分類や消費倍率が変われば、同じ作業に必要なユニット数が増減する可能性がある。企業がAIの運用コストを見積もる際には、ユニットの単価だけでなく、この倍率の変更リスクも考慮する必要がある。

毎月3万ユニットの標準枠と「AIは追加料金なし」という説明

OracleのAI料金体系を考えるうえでは、同社が以前から説明してきた「AIの追加料金を取らない」という方針との関係も重要になる。Computingの報道によると、アプリケーション担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのSteve Miranda氏は、ロンドンで開催されたOracle AI World Tourで、AIに追加料金を課さないと説明した。また、Forresterが5月に公開した分析でも、Oracleが4月のアナリスト向け説明会でFusionに組み込まれたAIエージェントへの追加課金を予定していないと繰り返したことが報告されている。こうした説明は、今回明らかになったAIユニットの料金体系と一見矛盾するようにも映る。

しかし、Oracleの契約文書には、購入済みのAIユニットとは別に標準で付与される利用枠が定められている。具体的には、Fusionの本番環境1つにつき毎月3万ユニットが割り当てられ、AIの利用による消費はまずこの枠から差し引かれる。標準枠を使い切った後に、契約によって購入・付与された共通利用枠から差し引かれる仕組みだ。

3万ユニットは、公開定価の1ユニット0.01ドルで換算すると300ドル(約4万7,418円)分に相当する。Frontier区分の一般的な作業で、1回あたりの入出力が1万トークン以内なら、20ユニットずつ消費するため、理論上は月1,500回分となる。ただし、この標準枠は同じ本番環境に関連する他のAI処理でも消費されるため、特定のエージェントが1,500回の実行を保証されるわけではない。また、Included区分や消費倍率0倍のBasic区分を利用する一般的な作業では、そもそもAIユニットが減らない。

こうした仕組みを踏まえると、Oracleの「AIに追加料金を取らない」という説明と、利用量に応じたAIユニットの購入が必要になる仕組みは、必ずしも矛盾しない。既存のFusionアプリケーションに標準搭載されたAI機能を追加料金なしで利用できる一方、標準枠を超える利用や、別途契約が必要な高度なエージェント機能には費用が発生するという整理が可能だからだ。ただし、どの機能が標準契約に含まれ、どの機能に追加契約が必要になるかは、個別のサービスや契約条件によって確認しなければならない。

一方、利用枠を先に購入する方式であっても、使い切るたびに追加購入が必要になる以上、実質的には従量課金だという見方も成り立つ。実際、The Registerが伝えたLeone氏の説明も、AIが処理する業務量の増加によってOracleの売上が拡大するというものだった。したがって、今回の分析はAIの利用量が顧客の支払総額に影響しないと主張するものではない。あくまで、公開契約文書で確認できる課金の仕組みが、超過利用分の自動的な事後請求ではなく、あらかじめ付与された利用枠と追加購入によって構成されているという点にある。

特にFusion Clawでは、Basic区分を利用できないことが料金面で重要になる。Oracle自身が複雑なエージェント処理にFrontier区分のモデルを利用する構成を示しており、1万トークン以内の作業でも20ユニットを消費する。AIエージェントが計画立案や推論を繰り返すほど、標準の3万ユニットや購入済みの利用枠が減っていく。Oracleにとっては、ユーザー数を増やさずにAI利用の拡大を売上につなげられる一方、顧客にとっては作業ごとのユニット消費量を把握し、追加購入の必要性を見極めることが重要になる。

Miranda氏は、将来的にソフトウェアの料金体系がユーザー数に基づく方式から、取引量や企業規模に基づく方式へ移行する可能性にも言及している。今回のAIユニットは、既存のユーザー単位の料金体系を直ちに廃止するものではないが、AIが実行する業務量を新たな収益指標に加える仕組みとして位置づけられる。企業向けソフトウェアの価値を、利用する従業員の人数だけでなく、AIが実際に処理した仕事の量によって測る方向への変化ともいえる。

今後、この料金体系の解釈を左右するのは、Oracleの契約文書と価格表の改訂内容だ。現行の「Fusion Cloud Service Descriptions v102026」や「Global Price List」に、AIユニットの不足分を自動的に事後請求する条項が追加されるか、指名ユーザー・従業員単位のSKUが実際の消費量に応じた請求方式へ変更されれば、先に利用枠を付与する仕組みという今回の見立ては崩れる。逆に、こうした変更が行われなければ、Oracleが掲げるAI利用量に応じた収益拡大は、当面、利用枠の先行付与と追加購入を通じて進むと考えられる。