ゲーム制作・配信プラットフォームのRobloxは、2026年第3四半期の株主向け資料で、直近1カ月の総プレイ時間上位100作品のうち、80%超が制作を効率化するためにAIを利用していたと明らかにした。また、文章による指示からゲームを生成するツール「Build」では、アルファ版の提供開始以来、7万を超える作品が公開されたという。

ただし、これらの数字は異なる側面を表している。前者は人気作品の制作工程におけるAIの普及状況、後者はBuildによって新たに公開された作品の数を示すものだ。さらに、同社が別途公開したBuildの評価例では、技術面が98点だった一方、ゲームデザインは31点にとどまった。AIによってゲーム制作のハードルが下がるなか、動作するゲームを作ることと、プレイヤーが繰り返し遊びたくなる作品を生み出すことは別の課題であることが浮き彫りになっている。

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80%超と7万作品は何を数えているのか

まず、上位100作品の選定基準は総プレイ時間である。Robloxの2026年第3四半期株主向け資料(PDF、1ページ)によると、その80%超が直近1カ月に制作を効率化する目的でAIを利用していた。これは制作工程の一部でAIが使われたことを意味しており、上位作品の80%超がほぼ全自動で制作されたわけではない。

一方、Buildの実績は、ニュージーランド、シンガポール、セルビア、タイの4カ国で実施しているアルファ版に関するものだ。同社によれば、提供開始以来50万人超が利用し、7万を超えるゲームが公開された。あくまで対象地域を限定した試験段階での累計実績であり、Roblox全体の制作状況を表す数字ではない。

Robloxはさらに、「Break and Steal an Egg」と「Huss Valley」の2作品を、ほぼ全体をAIで制作した事例として紹介している。両作品は2026年第3四半期に、同時接続プレイヤー数で上位20作品に入ったという。ただし、こちらは特定の時点で同時に遊んでいる人数に基づく順位であり、総プレイ時間で選ばれた上位100作品とは評価基準が異なる。

同社が株主向け資料で公表した主な数字を整理すると、次のようになる。

数字 対象と測定方法 示していること
80%超 直近1カ月の総プレイ時間上位100作品のうち、制作の効率化にAIを利用した割合 人気作品の制作工程におけるAI支援の普及
7万超 4カ国でのBuildアルファ版提供開始以来、公開されたゲームの累計 Buildを通じた作品の供給量
2作品が上位20 ほぼ全体をAIで制作したとされる2作品の、第3四半期における同時接続プレイヤー数の順位 AIを活用した個別作品が多くの同時接続を集めた事例

このように、80%超、7万超、上位20という数字は、それぞれAIの利用率、公開作品数、同時接続プレイヤー数の順位を表している。測定対象も異なるため、これらを組み合わせても、Buildで公開した作品がヒットする確率を算出することはできない。また、上位20に入った2作品についても、人間がどの工程に関与し、どの程度の修正を加えたのかは明らかになっていない。これらの実績だけでAIがヒット作を生み出したと結論付けることはできず、7万を超える公開作品全体の品質を判断する根拠にもならない。

技術評価98点、ゲームデザイン31点という公式の評価例

ゲームの技術的な完成度と、遊びとしての面白さをどう評価するのか。その手掛かりとなるのが、Robloxが10月8日に公開したBuildの評価手法に関する公式記事だ。Buildは、単に文章をプログラムコードに変換するツールではない。ユーザーの指示からゲームの仕様を定め、コードや素材を生成し、ゲームの仕組みやユーザーインターフェース(UI)、操作方法などを組み合わせて作品を構築する。

こうした複数の要素を含むゲームの品質を、一つの点数で正確に表すことは難しい。そこでRobloxは、指示された仕様を満たしているかを確認するだけでなく、コードなどの静的な品質、実際にプレイした際の動作、視覚・音響表現などを分けて評価する仕組みを採用している。指示どおりの内容が実装されているか、問題なく操作できるか、ゲームとして魅力があるかを、それぞれ異なる観点から検証するためだ。

公式記事では、障害物コース型のゲーム「Skyforge Ascent」を生成例として取り上げている。この作品に対する同社内部の自動評価では、技術面が100点満点中98点だったのに対し、ゲームデザインは31点にとどまった。技術的には高い評価を得た一方、遊びとしての完成度には大きな改善の余地があると判定されたことになる。

Robloxによれば、この作品には繰り返し遊びたくなる仕組みや、ゲームを進めるにつれて体験が深まるような設計が不足していた。一方、実際のプレイを通じたテストでは100点満点を獲得しており、動作確認だけではゲームデザインの問題を十分に検出できないことも分かった。ゲームを正常に動かすための技術的な課題を解消しても、プレイヤーに再挑戦を促す仕組みまで自動的に完成するわけではない。

ゲーム開発では、生成されたコードが正しく動くかを確認するテストと、プレイヤーが繰り返し遊ぶ理由を評価する工程が、それぞれ異なる役割を担う。技術面で高得点を獲得したという理由だけで作品を完成と判断すれば、遊びの設計に残された問題を見落としかねない。Robloxが複数の評価軸を設けているのも、こうした違いを把握するためだと考えられる。

もっとも、98点と31点は一般プレイヤーによる評価でも、第三者機関が測定した結果でもない。Roblox自身が公開した単一の生成例に対する内部の自動評価であり、両者は異なる品質を測定している。この点差をBuild全体の平均的な性能差や、面白さを客観的に数値化した結果と解釈することは適切ではない。それでも、ゲームを技術的に完成させることと、遊びとして成立させることを別々に評価する必要性を示す事例といえる。

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作品が増えるほど重要になる、発見される仕組みと継続利用

AIによってゲームを作りやすくなっても、プレイヤーに作品を見つけてもらい、継続して遊んでもらえなければ、成功したとはいえない。Robloxも株主向け資料で、コンテンツの供給が増えるほど、ユーザーの注意を引き、人と人とのつながりを生み出すことが難しくなるとの見方を示している。作品を大量に生み出せる時代には、制作ツールの性能だけでなく、それらを適切なプレイヤーへ届ける仕組みが重要になるという考え方だ。

Robloxが配信面での強みとして挙げているのは、既存のユーザー同士のつながりと、友人をゲームに招待する行動である。プレイヤーが自分で作品を検索するだけでなく、友人と一緒に遊ぶために新しいゲームへ参加する経路がある。ゲームの発見と人間関係が結び付いていることが、同社のプラットフォームの特徴だ。AIによって作品数が増えるほど、こうした仕組みの重要性も高まるとみられる。

実際、同社の推薦システムでは新しい作品が積極的に紹介されている。Robloxによると、週次のおすすめ機能「RFY」において、表示回数で上位100作品に入ったゲームの約40%は、過去3カ月以内に制作されたものだった。ただし、この数字はおすすめ表示回数の多い上位100作品に占める新作の割合であり、全公開作品に占める新作の割合やAIの利用率を表すものではない。

また、新作がおすすめに表示されることと、プレイヤーがその後も遊び続けることは別の問題だ。Robloxは今後、長期的な定着を重視する方向で推薦システムを改良する方針を示している。単に作品を表示してプレイヤーを呼び込むだけでなく、継続的に利用される作品へ適切に誘導できるかが課題となる。AIによる制作支援の普及を成果として評価するには、公開作品数だけでなく、こうした利用状況も確認する必要がある。

ゲーム専門メディアPC GamerのAndy Chalk氏は、制作速度や作品数を成功の主要な指標とするゲーム業界の方向性に懸念を示している。ただし、公開作品が7万を超えたという事実だけで、その大半が低品質だと判断することもできない。重要なのは、増え続ける作品の中からプレイヤーが楽しめるゲームを見つけられるか、そして、その作品に継続して遊ぶだけの魅力があるかという点だ。RobloxのAI戦略の成否を判断するには、作品の供給量と実際の利用状況を区別して検証する必要がある。

Roblox外へのゲーム配信と今後の課題

Robloxは、AIによる制作支援と推薦システムを組み合わせるだけでなく、作品の配信先をプラットフォームの外へ広げる構想も進めている。その一つが「Roblox Everywhere」である。Roblox上の作品を独立したアプリとして外部のストアへ配信する計画で、選抜された上位作品を対象とする第1段階は2027年前半に始まる見込みだ。ただし、すべての制作者が直ちに外部配信を利用できるわけではなく、まずは対象作品を限定した展開となる。

これとは逆に、外部のゲームをRobloxへ取り込む構想が「Universal Player」だ。既存のPC、コンソール、モバイル向けゲームをAIの力でRoblox上でも遊べるようにすることを目指している。Roblox Everywhereが作品の配信先を広げる取り組みなのに対し、Universal Playerはプラットフォームに取り込める作品の供給元を広げるものといえる。ただし、Universal Playerの一般提供時期や対応作品の範囲、権利処理などの具体的な条件は、まだ明らかになっていない。

Roblox Everywhereが実際に始まれば、Roblox内で人気を獲得した作品が、外部ストアでも同様にプレイヤーを集められるかが注目点となる。一方、Universal Playerについては、どの作品を、どのような条件で取り込めるのかが、構想の実現可能性を判断する材料になる。いずれも現時点では計画段階にあり、実際の配信成果とは分けて考える必要がある。

AIによるゲーム制作の普及は、作品を生み出すまでの負担を軽減し、これまで制作に参加できなかった人々にも機会を広げる可能性がある。しかし、Buildの評価例が示すように、技術的に動作するゲームを作れても、それだけで魅力的な作品になるとは限らない。Robloxが今後、増え続ける作品をプレイヤーの継続利用につなげられるか、さらに外部ストアへの配信でも成果を上げられるかが、AIを活用したゲーム制作・配信戦略の実力を測る重要な指標となる。