ByteDanceは、音声と映像を同時に生成する新モデル「Seedance 2.5」を発表した。1回で作れる動画は最大30秒となり、1クリップに最大50件の参照素材を渡せる。Dreaminaでは、段階展開に合わせて、動画の特定の時間位置や人物を選んで修正する機能も提供する。短い映像を何度も作り直す生成ツールから、演出を保ちながら長いシーンを詰める制作ツールへ踏み込んだ更新である。
強調すべきは、新しい入力形式が増えたことではない。前世代のSeedance 2.0は、テキストと画像に加え、音声や動画も一つの生成系で扱っていた。2.5は、その仕組みに渡せる材料を増やし、生成後に直せる範囲を細かくした。長さ、参照、編集という三つの変更が、同じ制作工程の中でつながる。
15秒から30秒へ、生成上限が2倍に
Seedance 2.0の技術報告によると、同モデルが直接生成できる音声付き動画は4〜15秒、ネイティブ解像度は480pまたは720pだった。2.5は単発で最大30秒を生成する。上限時間は15秒から30秒へ倍増した。
30秒化によって、一度の生成で一貫性を保つ区間も長くなる。人物の外見と動きに加え、照明やカメラのつながりを、従来より長い範囲で維持しなければならない。Dreaminaは滑らかな場面転換と人物の一貫性が強まったと説明し、Seedのモデルページも動きの安定性と画面の写実性が向上したとする。ただし、今回の発表には改善幅を示す数値や比較条件がない。品質向上は、現段階ではByteDanceによる評価である。
Seedのモデルページは、生成した動画を2回延長できるとも明記した。延長1回あたりの秒数は示しておらず、合計尺は確定できない。単発30秒と、後からつなぐ延長機能は分けて考える必要がある。
50件の参照を一つのクリップへ
Seedance 2.5は、画像や動画、音声からテキストまでを合わせて、1クリップにつき最大50件の参照を受け取る。商品画像や絵コンテに、動きの見本と音声を加え、演出指示とともに同じ生成へ渡せる。文章だけで撮影意図を再現させる負担を減らせるため、広告や短編映像では、登場人物や商品の見た目を保ちながらカメラと音の狙いも伝えやすくなる。
前世代の公開プラットフォームは、動画3本、画像9枚、音声3本までを参照できた。合計すると非テキスト素材は15件である。2.5は総数を50件へ広げた一方、画像や動画を何件ずつ使えるかは公表していない。しかも50件にはテキストも含まれるため、入力容量が単純に3倍以上になったとは断定できない。
それでも、変更の方向は明確だ。2.0が複数形式を一つのモデルへ統合した世代なら、2.5は多数の制作資料を一つのクリップへ束ねる世代に当たる。生成AIに任せる範囲が広がるほど、参照どうしが矛盾した場合の優先順位や、どの素材が結果へ効いたかを確認する機能も必要になる。ByteDanceは、参照動画の意図、構図、映像表現をより正確に理解すると説明するが、その評価方法はまだ開示していない。
再生成より先に、時間位置と人物を直す
Dreaminaで加わる編集機能は、修正したい時間位置、人物、その他の要素を指定できる。従来の生成では、一部の不具合を直すために全体を作り直し、気に入っていた動きや照明まで変わることがあった。部分指定が狙いどおり働けば、問題のある箇所を絞って反復できる。
指定した人物などを変える編集自体は、2.0の技術報告にも記載されていた。同報告は、クリップや動作、筋書きの要素を対象にした修正と、動画の延長を挙げている。2.5で前面に出たのは、Dreamina上で時間位置や人物を直接選び、対話的に修正する細かさである。部分編集という考え方の初登場ではなく、制作画面から狙った対象を選べるようにした進化と見るべきだ。
Seedのモデルページは、参照動画の動きを移す処理から、画面構成やカメラ表現を読み取った創造的な変換へ進んだと説明する。グリーンスクリーン編集に加え、専門的なカメラワークや演技の段取りにも対応するという。ByteDanceはこれらを、複雑な動画制作や専門的な制作工程を支える機能と位置付けている。
制作現場では、最初の出力の美しさに加えて、修正を重ねられるかどうかが価値を左右する。30秒の映像で人物が崩れないか。特定箇所を直しても前後の音や照明を保てるか。50件の参照から重要な指示を取り違えないか。2.5は、生成結果を採用できるかという評価から、納品物へ近づけられるかという評価へ試験項目を広げる。
提供は段階的、性能条件はこれから
Dreaminaは2026年7月31日の発表で、Seedance 2.5を翌週から段階的に展開するとした。対象地域は欧州とアジアに加え、中東と南米である。サブスクリプション契約アカウントが必要で、利用者は16歳を超えていなければならない。発表時点で全アカウントが一斉に使えるわけではなく、地域とアカウントごとに利用可否を確認することになる。
Dreaminaは生成物の透明性対策として、不可視ウォーターマーク、C2PA Content Credentials、可視のAIラベルを組み合わせる。有害な内容や本人の許可がない肖像利用などに対しては、プロンプトの遮断、生成物の審査、利用者からの報告で対応すると説明した。知的財産の無断生成を防ぐ技術も掲げる。いずれも被害を完全に防ぐという保証ではなく、検知と執行を重ねる設計である。
今回の2.5モデルページとDreaminaの発表には、モデル規模や学習データ、比較ベンチマークが載っていない。ネイティブ解像度と生成速度も不明である。料金、1回あたりのクレジット消費、APIの提供条件も未公表だ。2.0では480pと720p、4〜15秒という出力条件が技術報告に明記されていたため、2.5の技術報告やAPI仕様が出れば、30秒化に伴う計算コストと画質の関係を比較できる。
評価方法の開示にも差がある。2.0の技術報告は、動きの安定性を自動評価し、美的品質を専門家によるブラインド評価へ回す枠組みを説明した。編集では、手を加えていない領域がどれだけ保たれるかを「編集一貫性」として測っている。2.5はまさにその部分編集を売りにするが、対応するスコアや試験条件は今回示されなかった。
Seedance 2.5が制作ツールとして定着するかは、公開デモの見栄えより、同じ指示で再現できる割合と部分編集の成功率で決まる。段階展開後に確認すべきなのは、30秒を通した人物と音の一貫性、修正箇所以外を保てる範囲、そして1本を完成させるまでの時間と費用である。



