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Snap、開発者向け新型ARグラス「Spectacles ’24」発表 – 月額$99で高性能AR体験を提供

Y Kobayashi

2024年9月18日

Snapは9月18日、開発者向けの新型ARグラス「Spectacles ’24」を発表した。この最新モデルは、視野角の拡大や解像度の向上、ハンドトラッキングの改善など、ハードウェア面で大きな進化を遂げている。さらに、ソフトウェアスタックも一新され、AR体験の質を大幅に向上させている。

Spectacles ’24の主要スペックと改良点

Spectacles ’24は、本日から開発者向けに提供が開始される。興味深いのは、その価格設定だ。Snapは月額99ドル、1年間の契約(総額1,200ドル)で本製品を提供する。これにより、開発者がARグラスを入手する障壁を下げることを狙っている。

Spectacles ’24は、すべての機能が眼鏡本体に内蔵されたスタンドアロン型ARグラスだ。前モデルのSpectacles 4と比較すると、以下のような改善が見られる:

  • 視野角:46度(対角)と、前モデルの26.3度から大幅に拡大
  • リフレッシュレート:120Hz(前モデルは不明)
  • 解像度:37ピクセル/度(前モデルは不明)
  • プロセッサ:2つのSnapdragonプロセッサ(具体的な型番は非公開)
  • バッテリー駆動時間:45分(外部バッテリーで延長可能)
  • カメラ:RGB×2、赤外線カメラ×2、深度センサーを搭載

これらの改善により、AR体験の質が大幅に向上している。ただし、重量は226gと、前モデルの134gから増加しており、サイズも大きくなっている点には注意が必要だ。

ソフトウェア面では、新たに「SnapOS」が導入された。これは前モデルのソフトウェアスタックを完全に刷新したもので、ハンドトラッキングを中心とした共通インターフェースと操作性を提供する。特筆すべきは、SnapOSに組み込まれたソーシャル機能だ。近くの他のSpectacles ’24を認識し、共同でARセッションに参加できる機能や、スマートフォンユーザーがARセッションを覗き見できる「スペクテーターモード」などが実装されている。

開発者向け戦略とAR市場への挑戦

Snapは、Spectacles ’24を通じて開発者エコシステムの拡大を目指している。開発者は、Lens Studioを通じてSpectacles ’24向けのアプリケーションを開発できるが、Snapは「開発者税」を課さないことを明言しており、将来的な収益化の可能性を開発者に示唆している。

すでに、LegoやNiantic、ILM Immersiveなど、主要なコンテンツパートナーがSpectacles ’24向けのアプリケーション開発を発表している。特に注目されるのは、Nianticによる『Pokémon GO』の開発者が手がける『Peridot』と『Scaniverse』、そしてILM Immersiveによる『Star Wars』タイトルだ。

さらに、Snapは人工知能(AI)との統合も進めている。Lens Studio 5.0では、SnapMLを通じてカスタムML(機械学習)モデルをレンズに直接使用できるようになった。また、OpenAIとの新たなパートナーシップにより、クラウドホスト型のマルチモーダルAIモデルをSpectaclesに導入する予定だ。これにより、開発者は視覚、音声、聴覚に関するより豊富なコンテキストを持つ新しいモデルをSpectacles体験に組み込むことができるようになる。

AR市場における Spectacles ’24の位置づけは、フルXRヘッドセットと携帯性の高いスマートグラスの中間に位置する。重量は約227グラムと、Apple Vision Proの約635グラムと比べると大幅に軽量化されているが、一般的なメガネと比べるとまだ重たい。Snapは、この中間的な立ち位置が開発者にとって魅力的であり、将来的な消費者向け製品への橋渡しになると考えているようだ。

Spectacles ’24の開発者向けプログラムは、Lens Studioを通じて申請可能だ。承認された開発者は、ハードウェアへのアクセスだけでなく、Snap Labチームからのサポートリソースも利用できる。これにより、Snapは質の高いAR体験の創出を促進し、将来的な消費者向け製品の基盤を築こうとしている。

Xenospectrum’s Take

Spectacles ’24の発表は、AR市場に新たな風を吹き込む可能性を秘めている。Snapが採用した月額制の価格モデルは、開発者にとって参入障壁を下げる効果的な戦略だ。これにより、より多様な開発者がAR開発に携わることができ、結果としてより豊かなARエコシステムの構築につながるだろう。

特に注目すべきは、SnapOSのソーシャル機能だ。ARを単なる個人体験から、共有可能な社会的体験へと拡張する試みは革新的だ。これは、Snapの強みであるソーシャルメディア領域の知見をARに活かした結果と言える。

ただし、重量とサイズの増加は課題といえる。消費者向け製品として成功するためには、さらなる小型化と軽量化が必要不可欠だろう。また、45分という短いバッテリー駆動時間も改善の余地がある。

それでも、Spectacles ’24は開発者向け製品として十分な魅力を持っている。AIとの統合や、高性能なハードウェアは、革新的なAR体験の創出を可能にするだろう。Snapが描く未来のAR体験が、どのような形で実現されるのか、今後の展開が非常に楽しみだ。


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