中国のSunwoda(欣旺達)が、電気自動車の電池残量を10%から97%まで9分で充電するという新システムを発表した。2026年9月17日に中国・山東省棗荘で披露したもので、常温では10%から70%まで5分という性能も掲げている。
同時に、蓄電設備を組み合わせたメガワット級の充電インフラも公開し、2027年末までに1万拠点を整備する方針を示した。発表内容を詳しく見ると、電池そのものの充電速度と、多数の車両へ継続して大電力を供給できるかという充電拠点側の能力は、分けて考える必要がある。
9分で97%という発表が意味するもの
Sunwodaが今回発表したのは、15C対応の「スマート超急速充電電池システム」だ。易車の現地報道によると、常温で残量10%から70%まで5分、97%まで9分という性能を掲げている。
SOCは電池の充電状態を示す指標であり、「9分」は空の電池を完全に満充電にする時間ではない。あくまで指定されたSOC区間に対するメーカー発表値であり、独立機関による実測値とは区別する必要がある。
この常温での2つの値は、BYDが3月5日に公表した第2世代Blade BatteryとFLASH Chargingの数値と一致する。ただし、両社の電池を同じ条件で測定した比較試験ではない。
電池容量や搭載車種が異なれば、同じSOCの割合を充電する場合でも必要な電力量は変わる。9分という数字が同じだからといって、両社の充電性能が同等だとは判断できない。
15Cという表記にも注意が必要だ。Cレートは、電池容量に対してどの程度の電流で充放電するかを示す指標であり、充電開始から終了までその出力を維持できるという意味ではない。
実際の使い勝手を評価するには、SOCの上昇に伴って充電電力がどのように変化するのかを示す充電曲線が必要になる。今回確認できた現地報道では、充電曲線や対応する電池パック容量、具体的な試験車種までは示されていない。
設備側については、もう少し具体的な仕様が公開されている。Sunwodaの充電設備に関する登壇スライドには、充電設備を0.8〜2.4MWの範囲で構成でき、液冷ケーブルを使用した1口で最大1.5MWに対応すると記載されている。
複数ブランドの車両や電池への対応も掲げているが、充電器に接続できることと、すべての車両が1.5MWを受け入れられることは別である。高出力充電を利用するには、車両側の電池、電圧系、充電制御も対応している必要がある。
9分充電を支える蓄電設備は、どこまで連続運用できるか
Sunwodaは発表会で、車載電池とは別に、充電拠点へ設置する蓄電設備の構成も示した。9月17日の登壇スライドに記載された容量と出力は、次の3種類である。
| 蓄電容量 | スライド記載の出力 | 容量÷出力から換算した時間 |
|---|---|---|
| 176kWh | 0.7MW(700kW) | 約15.1分 |
| 352kWh | 1.4MW(1,400kW) | 約15.1分 |
| 528kWh | 2.1MW(2,100kW) | 約15.1分 |
3つの構成はいずれも、蓄電容量を記載された最大出力で割ると約15分となる。計算式は「容量kWh ÷ 出力kW × 60」で、例えば176 ÷ 700 × 60 ≒ 15.1分となる。
ただし、これは蓄電容量をすべて使用し、変換損失がなく、一定の最大出力で放電し続け、さらに系統からの電力供給がないと仮定した単純換算である。実際の連続稼働時間を測定した値ではない。
表から分かるのは、容量が大きくなるにつれて出力も同じ比率で増えていることだ。つまり、容量を増やして同じ出力を長時間維持する設計というより、より大きな蓄電設備ほど短時間により大きな電力を送り出せる構成になっている。
また、ここで示されている出力は蓄電設備側の定格であり、前述した充電口1口あたり最大1.5MWという仕様とは別の値である。
充電拠点に蓄電設備を置く大きな理由は、電力網から受け取る電力と、車両へ瞬間的に送り出す電力との差を吸収できるためだ。
BYDも公式発表で、比較的低い出力で電力を蓄え、必要なときに高出力で放電する蓄電システムを充電拠点に併設すると説明している。系統から瞬間的に受け取れる電力に制約があっても、蓄えておいた電力を追加することで、車両への充電出力を高めることができる。
ただし、蓄電設備そのものがエネルギーを生み出すわけではない。
車両へ送り出す電力が系統から受け取る電力を上回る状態が続けば、蓄電池の残量は減少する。反対に、利用者が少ない時間帯や充電出力が低い時間帯に補充できれば、次の高出力充電に備えられる。
実際にどの程度の時間、高出力を維持できるかは、使用可能な蓄電容量、電力変換時の損失、系統から同時に受電できる電力などによって変わる。「約15分」という換算値は、充電拠点が15分で停止するという意味ではない。
したがって、この表だけから「何台まで9分で充電できるか」を算出することもできない。車両ごとに必要な電力量や、同時に受け入れられる充電出力が異なるためだ。
休日などに車両が連続して到着する状況を評価するには、充電口の最大出力だけでなく、拠点全体の系統受電能力や蓄電残量がどのように変化するかを見る必要がある。1台あたりの充電時間だけでは、混雑時の待ち時間は判断できない。
超急速充電の寿命は保証条件まで確認する必要がある
Sunwodaは、電池の監視システムも刷新した。
現地報道によると、新システムでは専用チップを備えた「スマートセル3.0」、エネルギー制御装置、クラウド管理を組み合わせる。セルから得た情報を車載制御とクラウド分析へつなぎ、異常や故障の兆候を早期に検出する構想である。
ここで区別する必要があるのは、電池を監視する仕組みと、電池そのものの寿命や安全性を実証する試験である。
故障予測機能が備わっているからといって、電池が劣化しないことや、事故が起こらないことが保証されるわけではない。長期利用を評価するには、実際にどのような充放電条件を繰り返した電池で、一定期間後にどれだけ容量が残るのかというデータが必要になる。
保証についてSunwodaは、非営業用車両では超急速充電の回数を制限せず、10年・30万kmの保証要件を満たすとしている。
超急速充電の回数を利用者が意識せず使える設計を目指している点は注目される。ただし、この発表だけで、今後採用されるすべての車種に同じ保証条件が適用されることを意味するわけではない。
実際には、残存容量の保証基準や免責事項を含め、採用車種ごとの保証内容を確認する必要がある。
寒冷地での性能も、常温での9分という値とは分けて考える必要がある。低温環境での充電時間を評価するには、充電前に電池を予熱したのか、その予熱時間が充電時間に含まれているのかといった条件が重要になる。
今回確認できた情報だけでは、こうした試験条件までは明確になっていない。常温での性能を、そのまま冬季の利用条件へ当てはめることはできない。
1万拠点計画で問われる実車性能と運用能力
2027年末までに1万カ所のメガワット級充電拠点を整備するという目標は、中国能源報の公式アカウントに掲載された現地報告でも、Sunwodaの充電事業責任者の発言として確認できる。
ただし、これはすでに完成した拠点数ではなく、協業先を募りながら今後整備していく計画である。
Sunwodaが示した構想は、車載電池を供給するだけでなく、蓄電設備と充電器を組み合わせた充電インフラ事業まで手掛けるものとなる。
複数ブランドの車両へ対応できれば、メーカーごとに個別の充電網を整備する必要性を減らせる可能性がある。一方、利用できる車種が増えるほど、複数台が同時に接続された際の出力配分や、需要が集中した時間帯の運用能力が重要になる。
拠点の立地や系統から受け取れる電力が分からない段階では、設置拠点数だけで実際の利便性を評価するのは難しい。
日本の利用者にとっても、今回の発表をそのまま購入判断へ結びつけるのは早い。
確認できた発表資料と現地報道では、このシステムを最初に採用する車種、量産開始時期、日本での導入条件までは確認できない。電池側が高出力充電を受け入れられることと、それを利用できる充電拠点が十分に整備されることの両方が必要になる。
今後、採用車種の実際の充電曲線に加え、複数台を連続して充電した際のデータが示されれば、「9分」という数値を実際の利用環境に近い形で評価できるようになる。
電池と充電設備の双方が対応し、利用者が集中する時間帯でも短時間充電を繰り返し提供できるのであれば、長距離移動時の充電に対する考え方も大きく変わる可能性がある



