MicrosoftのSurface部門責任者が、新しいSurfaceを「Copilot+ PC」とは呼ばない方針を明らかにした。Windows Centralが2026年9月24日に報じたインタビューで分かった。
Microsoftは2024年、「Copilot+ PC」をAI処理向けのNPUを搭載するWindows PCの新しいカテゴリーとして打ち出した。2025年には12インチのSurface Proと13インチのSurface Laptopを発表する際、「Copilot+ PC」という名称を前面に掲げていた。
ところが、2026年に発表された後継モデルでは、この名称が使われていない。
一方、Microsoftの法人向けサイトには現在も「Copilot+ PC」というカテゴリーと専用機能の説明が残っている。
変わりつつあるのは単なる製品の呼び方なのか。それとも、MicrosoftがWindows PCのAI機能を説明する方法そのものなのか。
Surface責任者は何を明らかにしたのか
Windows Centralの取材で、MicrosoftのSurface担当コーポレートバイスプレジデント、Brett Ostrumは、2026年の新型Surfaceについて「これらをCopilot+ PCとは呼んでいない」と答えた。
ただし、従来Microsoftが定めていたCopilot+ PCのハードウェア要件は、すべて満たしているとも説明している。
AI処理をPC本体とクラウドの双方で行う方針についても変えていない。
つまり今回明らかになったのは、「Copilot+ PC」という名称を新しいSurfaceの前面には出さない一方、その名称で定めていた性能基準や機能は維持するという判断だ。
Qualcommのコンピューティング部門幹部Kedar KondapもWindows Centralに対し、Copilot+ PCという名称の目的は、NPUを使うAI体験に一定の性能基準を設けることだったと説明した。
今後、同じAI機能を提供しながら「Copilot+ PC」という言葉を使わなくなるのかという問いには、「おそらくそうなるだろう」との見方を示している。
MicrosoftとQualcommの発言は同じ方向を示している。
ただし、Microsoftがすべてのメーカー、すべてのPCについて「Copilot+ PC」という名称を廃止すると正式発表したわけではない。
The Vergeの記事は、こうした発言を踏まえてCopilot+ PCブランドの事実上の終了を論じた。
同記事はRecallを巡る批判や、Copilotという名称を広範囲に使いすぎたことなども背景として挙げている。
ただし、それらが名称変更の直接的な理由だとMicrosoft自身が説明したわけではない。確認された事実と、その背景についての分析は分けて考える必要がある。
新Surfaceから名称は消えたが、基準は残っている
Microsoft自身の発表を比べると、「Copilot+ PC」という名称の扱いが変わったことは明確だ。
2025年5月の発表では、12インチのSurface Proと13インチのSurface Laptopを、タイトルから「Surface Copilot+ PCs」と呼んでいた。
本文でも、新しいCopilot+ PCラインアップに加わる製品として繰り返し紹介されている。
一方、2026年9月の後継モデル発表では、タイトルにも本文にも「Copilot+ PC」という表現は登場しない。
新製品は、Snapdragon X2 Plusを搭載するSurface Pro 12インチとSurface Laptop 13インチとして紹介されている。
| Microsoftの資料 | 対象 | 「Copilot+ PC」の扱い |
|---|---|---|
| 2025年5月のSurface発表 | 初代Surface Pro 12インチ、Surface Laptop 13インチ | 発表タイトルと本文で製品カテゴリー名として使用 |
| 2026年9月のSurface発表 | 第2世代の同サイズモデル | タイトル・本文ともに不使用。Copilot自体への言及は残る |
| 現行の法人向けWindows案内 | PCカテゴリーとAI機能 | 「Copilot+ PC」の名称を維持し、NPU要件や専用機能を説明 |
ここで比較しているのは、同じ画面サイズのSurfaceが世代交代した際の公式発表と、現在公開されている法人向けWindowsページだ。
市場にあるすべてのWindows PCの商品名を調べた結果ではない。
それでも、新しいSurfaceの製品発表から「Copilot+ PC」という名称が消えた一方で、その性能基準や機能カテゴリーの説明は残っていることが分かる。
2024年にCopilot+ PCを発表した際、Microsoftは毎秒40兆回以上の演算能力を持つNPUを、この新しいPCカテゴリーの基準の一つに据えた。
NPUは、画像や音声処理、生成AIなどの処理を効率よく実行するための専用回路だ。
現在の法人向けページでも、Copilot+ PCは高性能NPUを搭載するWindows 11 PCとして説明されている。
16GB以上のメモリ、256GB以上のストレージといった構成条件に加え、Recall、Click to Do、リアルタイム翻訳を含む字幕機能などがCopilot+ PC向けの体験として紹介されている。
つまり、新製品の名称から「Copilot+ PC」を外すことと、これらの機能を利用するためのハードウェア基準がなくなることは別の話だ。
「Copilot+ PC」と書いてあれば、すべて使えるわけではない
利用者にとって重要なのは、製品に「Copilot+ PC」という名称が付いているかどうかより、実際に使いたい機能の提供条件だ。
Microsoftの法人向け案内では、Recallは現在もプレビュー版とされている。
利用には対応するPCだけでなく、Windows Helloを使った強化されたサインイン保護などの条件もある。
Click to Doで利用できる操作も、PC、地域、言語によって異なり、一部の機能ではサブスクリプションが必要になる。
改善されたWindows検索についても、対応するファイル形式や言語に制限がある。
そのため、「Copilot+ PC」として販売されているPCでも、Microsoftが紹介しているすべてのAI機能を購入直後から同じ条件で利用できるとは限らない。
さらに、「Copilot」という名前自体が複数の異なる機能に使われているため、混同しやすい。
CopilotというAIアシスタントを利用すること、PC内のNPUを使ってRecallなどを実行すること、Microsoft 365の有料AI機能を利用することは、それぞれ別の条件で提供される。
実際、2026年のSurface発表では、新しいペン向けアプリ「Microsoft Ink Canvas」が紹介されている。
このアプリは新Surfaceだけでなく、対応する既存のSurfaceやWindows PCにも提供される予定だ。
また、一部のAI機能を利用するには対象となるMicrosoft 365の契約が必要で、利用回数にも制限がある。
つまり、Microsoftはこれを新Surfaceだけで使える「Copilot+ PC専用機能」として説明しているわけではない。
製品名から「Copilot+ PC」が消えたからといって、同じAI機能がすべてのWindows PCへ無条件に開放されるわけではない。
反対に、製品説明に「Copilot」と書かれていても、そのPCでRecallなどのCopilot+ PC向け機能を利用できるとは限らない。
PCを選ぶ際には、NPUを含むハードウェア構成、Windowsのバージョン、利用したい機能ごとの条件を個別に確認する必要がある。
Microsoftは何を前面に出すようになったのか
2026年のSurface発表では、2025年に目立っていた「新しいAI PCカテゴリーの一員」という説明よりも、持ち運びやすさや具体的な使い方が前面に出ている。
Surface Pro 12インチではペン入力とInk Canvas、Surface Laptop 13インチではバッテリー駆動時間や画面の明るさなどが強調された。
Microsoftはまた、対応するAI機能について、PC本体、クラウド、あるいは両方を組み合わせて処理できると説明している。
特定のPCカテゴリー名を強調するよりも、個々の用途や機能を説明する方向へ重心が移っているように見える。
性能向上も新製品の主な訴求点だ。
Microsoftによると、前世代と比べてOffice作業で最大17%、グラフィックス性能で60%超、NPUを使った端末上のAI推論で最大95%高速になったという。
ただし、これらはMicrosoftが指定した比較機種とベンチマークで得られた結果だ。あらゆるアプリや処理で同じ性能向上が得られるという意味ではない。
米国ではSurface Proが1149.99ドルから、Surface Laptopが1199ドルからで、一部市場では10月13日から発売される予定だ。
この価格だけから、日本での販売価格や構成を判断することはできない。
こうした訴求方法の変化を、Recallへの批判やCopilot+ PCの販売不振が原因だと断定できる材料は現時点ではない。
確認できるのは、Microsoftが以前は「Copilot+ PC」という共通カテゴリーを強く打ち出してAI性能を説明していたのに対し、現在は同じ系統の後継機を、個別の性能や用途を中心に紹介しているという変化だ。
ブランド名への評価と、実際にどのAI機能を利用できるのかは分けて考える必要がある。
「Copilot+ PC」という名前は本当になくなるのか
今後Microsoftが「Copilot+ PC」という名称を完全に使わなくなるのであれば、Surfaceの製品発表だけでなく、法人・一般消費者向けのWindowsサイトや、他社PCの製品説明、Windowsの機能要件にも変化が現れるはずだ。
現時点でMicrosoftは、Copilot+ PCという名称を終了する日程や、ハードウェア要件を廃止する方針を公表していない。
法人向けページでは現在も、Copilot+ PCを一つのPCカテゴリーとして説明している。
PCを購入する側にとっては、名称が残るかどうかよりも確認すべきことは明確だ。
Recallやリアルタイム翻訳など、使いたい機能が購入するPCの構成や地域で利用できるのか。追加のサブスクリプションが必要なのか。Windows Updateによる機能追加を待つ必要があるのか。
Microsoftが今後どの名称を使うとしても、こうした条件を確認する方が、実際に使えるAI機能を判断するうえでは重要になる。



