AMDが2027年の投入を予定しているZen 6ベースのノートPC向けAPU(CPUとGPUを1チップに統合したプロセッサー)「Medusa」のエンジニアリングサンプル(ES品)が、2026年11月4〜5日にGeekbench 7のデータベースに相次いで登場した。いずれもLenovo製の試作機で、10コア、8コア、6コアの3構成が確認されている。Wccftechは11月7日、10コアモデルがシングルコア3100、マルチコア18313を記録したと報じ、現行のRyzen AIシリーズを大幅に上回る性能として紹介した。しかし、同じ10コアモデルの測定結果11件を詳しく調べると、3100は最高値にすぎず、6件はシングルコア2000未満にとどまっている。さらに、内蔵GPUの「4CU」という表示にもGeekbench特有の数え方が関係している可能性があり、今回の数値をZen 6の実力として評価するには慎重な検証が必要だ。
Lenovo製試作機4機種で確認された10コア、8コア、6コアの測定結果
Geekbench 7のCPU結果を「AuthenticAMD Family 26 Model 129」で検索すると、2026年11月8日時点で10コア20スレッドの測定結果が11件見つかる。いずれも11月4〜5日にアップロードされており、機種名は「LENOVO 22ETPF6DTA」と「LENOVO 22EUFVT023」の2種類だ。ES品番もそれぞれ「100-000001713-32_Y」と「100-000002192-30_Y」で異なる。このうち最高スコアはシングル3100、マルチ18313を記録した結果(v7/cpu/804566)で、Wccftechが取り上げたのもこの数値である。
8コアと6コアのモデルについては、別の識別子「Family 26 Model 224」で同期間に計13件の結果が確認できる。8コアモデルは「LENOVO 22EUFVT027」(100-000002152-50_Y)の8件、6コアモデルは「LENOVO 22EQFVT006」(100-000001658-50_Y)の5件だ。Wccftechが報じた8コアモデルのシングル2913、マルチ15075は、シングルコアの最高値を記録した結果(804572)に基づいている。ただし、マルチコアの最高値は別の結果(804742)で記録された15151であり、両方の最高値が同じ測定で得られたわけではない。6コアモデルのシングル2651、マルチ10670(804574)も、シングルコアの最高値を記録した結果である。
| CPU構成 | 機種名(いずれもLenovo) | 元記事の集計件数 | シングル最高値を記録した回 | 同じ回のマルチ |
|---|---|---|---|---|
| 10コア/20スレッド | 22ETPF6DTA、22EUFVT023 | 11件 | 3100 | 18313 |
| 8コア | 22EUFVT027 | 8件 | 2913 | 15075 |
| 6コア/12スレッド | 22EQFVT006 | 5件 | 2651 | 10670 |
各モデルのコア構成については、まだ確定的な情報がない。Wccftechは8コアモデルを「Zen 6×2+Zen 6c×6」、6コアモデルを「Zen 6×1+Zen 6c×5」と説明している。一方、AnandTechのフォーラムでは、低消費電力コアを含む「2+4+2」や「1+3+2」という別の構成も推測されているが、AMDはいずれも確認していない。現時点でGeekbenchの結果から読み取れるのは、10コアモデルが4コアと6コアの2つのクラスタで構成されているという表示に限られる。
10コアモデルについては、GPUの測定結果ページ(v7/gpu/361996)にも仕様に関する情報が残されている。この結果は11月4日に「LENOVO 22ETPF6DTA」から投稿されたもので、シングル3100を記録したCPU結果とは別の測定だ。実行環境はGeekbench 7.1.0とWindows 11 Proで、L3キャッシュは16MB、L2キャッシュは各コア1MB、ベース周波数は2.00GHzと表示されている。メモリは4チャネル構成のDDR5 5188MT/sで、認識容量は55.58GBだった。ただし、最大周波数の欄は1996MHzとなっており、この結果だけでは実際のブースト周波数を判断できず、L3キャッシュ容量についても測定ページ上の情報として扱う必要がある。
| 項目 | Geekbenchの表示 |
|---|---|
| ベンチマーク | Geekbench 7.1.0 for Windows AVX2 |
| OS/電源プラン | Windows 11 Pro/Balanced |
| ES品番 | 100-000001713-32_Y |
| クラスタ | 4コア+6コア |
| L2/L3キャッシュ | 1MB×10/16MB×1 |
| ベース/最大周波数 | 2.00GHz/1996MHz |
| メモリ | 55.58GB、DDR5、5188MT/s、Channels: 4 |
AMDは2025年11月11日のFinancial Analyst Dayで、Zen 5のリフレッシュ版「Gorgon」を2026年、Zen 6ベースの「Medusa」を2027年に投入するロードマップを示している。Wccftechは今回の結果について、OEMメーカーが2027年モデルの開発に向けてAMD製プロセッサーを評価している段階のものだと説明した。つまり、今回確認されたスコアは、製品投入まで約1年を残した試作段階の測定値である。
10コアモデルの11件はシングル3000台と1500〜1900台に二極化
10コアES品のGeekbench 7スコア11件を比較すると、シングルコア性能が大きく異なる2つのグループに分かれている。3000台を記録したのは5件で、スコアは3030、3033、3059、3080、3100、マルチコアは16969〜18313だった。一方、残る6件のシングルコアスコアは1560、1595、1870、1900、1920、1931で、マルチコアも11575〜13416にとどまった。1931と3030の間には測定結果が存在せず、両グループの性能差は明確だ。
注目すべきは、3000台のスコアが特定の試作機だけで記録されたものではない点である。「22ETPF6DTA」は3030と3100、「22EUFVT023」は3033、3059、3080を記録しており、ES品番の異なる両機種で同水準の性能が確認されている。一方、低スコアのグループにも両機種が含まれ、「22ETPF6DTA」は1560、1900、1920、「22EUFVT023」は1595、1870、1931を記録した。したがって、3100は1台の試作機だけが偶然記録した突出値ではなく、異なる2機種で繰り返し確認された高性能グループの最高値と位置付けられる。ただし、同じ機種で大幅に低いスコアも記録されており、測定結果のばらつきは無視できない。
この分布は、Geekbench Browserの公開データベースから確認できる。Geekbench Browserでは、ユーザーが投稿したベンチマーク結果が個別のページとして公開されており、CPUの識別子で検索すれば、該当する機種名、アップロード日、スコアを一覧できる。リーク情報として広まる数値は、こうした測定結果の中から選ばれた一例にすぎない。同じ識別子の結果を比較することで、報じられたスコアが全体のどの位置にあるのか、異なる機種でも同水準の性能が得られているのかを検証できる。
8コアモデルと6コアモデルでも、測定結果には大きな開きがある。8コアモデルの8件のうち5件はシングル2875〜2913だったが、残る3件は1415〜1833にとどまった。6コアモデルでは5件中2件が2607と2651を記録しており、Wccftechが紹介した2651はその最高値にあたる。つまり、Wccftechが取り上げた10コアの3100、8コアの2913、6コアの2651は、いずれも各構成で確認されたシングルコアの最高値だった。
低スコアの結果が生じた原因は、公開されている測定情報だけでは特定できない。いずれも開発途中のES品であり、量産モデルの性能を直接示すものでもない。それでも、シングル3000台の結果が異なる機種とES品番で繰り返し確認されていることは、Zen 6の単スレッド性能を推測する上で注目に値する。ただし、11件の測定結果全体を代表する数値として最高値の3100を用いるのは適切ではない。
Wccftechの性能比較には測定条件とGeekbenchのバージョンの違いがある
Wccftechの比較によると、10コアMedusaのシングルコアスコア3100は、Ryzen AI MAX+ 395の2422を約28%、Ryzen AI 9 HX 370の2354を約32%上回る。8コアモデルの2913はHX 370より約23.7%、6コアモデルの2651はRyzen AI 5 340の2119より約25.1%高いという。マルチコアでは、10コアモデルの18313がHX 370の15064を約21.5%上回り、8コアモデルの15075はHX 370とほぼ同等とされている。
ただし、この比較は測定条件が統一されたものではない。Wccftechは比較対象のスコアについて、Geekbenchのデータベースに掲載された比較値を使用したと説明している。一方、Medusa側にはES品の測定結果から選んだ最高値が使われており、データベースの比較値と試作品の最高値を直接比較する形になっている。前述のとおり、10コアモデルの11件のうちシングル3000台を記録したのは5件だけだ。WccftechのシニアエディターであるHassan Mujtabaは、ES品の段階でこれだけの性能を発揮していれば量産モデルではさらに高速化する可能性があるとの見方を示したが、その予測を裏付ける具体的な根拠は示していない。
さらに注意が必要なのは、Geekbenchのバージョンの違いである。開発元のPrimate Labsは2026年7月23日にGeekbench 7を公開した。Geekbench 6の結果ページには、スコアを比較できるのは同じGeekbench 6の結果同士に限られると明記されている。Geekbench 6とGeekbench 7では測定方法やスコアの基準が異なるため、数値をそのまま比較して性能差を求めることはできない。
Wccftechは同じ記事に「Geekbench 6」と題した別の比較表も掲載し、「AMD Medusa (10-Core ES)」のスコアとしてシングル3407、マルチ16826を挙げている。この結果をGeekbench 6のデータベースで調べると、アップロード日は8月27日で、機種名はLenovo製ノートPCではなく、AMDの評価用基板「AMD Plum-MDS1」だった。ES品番も「100-000001713-33_N」となっており、11月のLenovo製試作機とは異なる。また、比較対象のスコアにはWccftechが電力設定を変更して独自に測定した値が使用されている。3407という数値自体は8月27日の測定結果として正しいが、比較表には測定日や使用機種が記載されておらず、11月のLenovo製試作機とは区別して読む必要がある。
Medusaの10コアモデルについて、これまでに確認された主な測定結果を時系列で整理すると、次のようになる。
| 日付(2026年) | 結果 | 機種 | バージョン |
|---|---|---|---|
| 7月17日 | シングル3329、マルチ16555 | AMD Plum-MDS1 | Geekbench 6 |
| 7月23日 | Primate LabsがGeekbench 7を公開 | — | — |
| 8月27日 | シングル3407、マルチ16826 | AMD Plum-MDS1 | Geekbench 6 |
| 11月4〜5日 | 11件を確認。最高はシングル3100、マルチ18313 | LENOVO 22ETPF6DTA、22EUFVT023 | Geekbench 7 |
| 11月4〜5日 | シングル2997〜3060、マルチ10266〜15101 | SU AEN55など | Geekbench 6 |
| 11月7日 | Wccftechが2種類の比較表を掲載 | — | — |
Medusaの10コアモデルは7月の時点ですでにGeekbench 6に登場しており、8月27日の3407というスコアも、その開発過程でAMDの評価用基板が記録したものだ。一方、11月のLenovo製試作機はGeekbench 7で測定されており、使用機種もベンチマークのバージョンも異なる。これらを単純に並べても、Zen 6の性能が時間とともに向上したのか、それとも低下したのかは判断できない。
内蔵GPUは本当に4CUなのか? Radeon 890Mを「8」と数えるGeekbenchの表示
10コアモデルのGPU測定結果(v7/gpu/361996)では、内蔵GPUのデバイス名が「gfx1170」、Compute Units(CU、GPUの演算ユニット)の数が「4」と表示されている。最大周波数は3200MHzで、OpenCLスコアは22249だった。AMDのレイトレーシング用ライブラリ「HIP-RT 3.2.0」には、Medusa向けとしてgfx1170、gfx1171、gfx115Eが追加されている。これらのうちGFX117XはRDNA 4m、GFX115XはRDNA 3.5に分類される。
WccftechはGeekbenchの「4CU」という表示をそのまま採用し、RDNA 4mの4CU構成GPUが、8CUのRadeon 860M(20642)を上回ったと紹介した。比較表には16CUのRadeon 890M(31475)、12CUのRadeon 880M(26814)、4CUのRadeon 840M(12019)も掲載されている。仮にMedusaのGPUが本当に4CUで、比較対象との測定条件もそろっているなら、半分のCU数でRadeon 860Mを上回ったことになり、CUあたりの性能が大幅に向上したと解釈できる。
しかし、GeekbenchのCompute Units表示が、AMDの公称CU数と一致しない事例が確認されている。Geekbench 6.4.0のOpenCL測定結果では、仕様上16CUを搭載するRadeon 890M(gfx1150)が、Compute Units「8」と表示されていた。この測定ではOpenCLスコアが30946、最大周波数が2900MHzとなっている。つまり、Geekbenchの表示値がAMDの公称CU数の半分になっている例が実際に存在するため、gfx1170の「4」も8CU相当を表している可能性がある。
この違いは、RDNA系GPUの内部構造と関係していると考えられる。AMDの技術資料によると、RDNAアーキテクチャでは2つのCUを1つのWGP(Workgroup Processor)としてまとめている。GeekbenchのOpenCLが報告するCompute Unitsが、このWGP数に相当している可能性はある。ただし、Radeon 890Mの測定例だけでGeekbenchの表示仕様全体を断定することはできない。OpenCLのデバイス情報が報告する演算単位の数と、メーカーが製品仕様として公表するCU数が、必ずしも一致しない点に注意が必要だ。
この表示の違いを考慮すると、gfx1170のGPU構成には2つの解釈が残る。表示どおり4CUであれば、Wccftechが指摘したように、Radeon 860Mの半分のCU数で高いスコアを記録したことになる。一方、Radeon 890Mと同じ数え方が適用されているなら、実際には8CU相当となり、Radeon 860Mと同じCU数での比較になる。AMDはgfx1170の正式なCU数を公表しておらず、RDNA 4mでも同じ表示方式が使われているかは不明だ。なお、Radeon 890Mの測定はGeekbench 6.4.0、gfx1170の測定はGeekbench 7.1.0で行われているため、この推測はバージョンが変わってもCU数の表示方式が共通していることを前提としている。
GPUスコアの比較自体にも、ベンチマークのバージョンという問題が残る。Wccftechが比較に使用したRadeon 890Mの31475というスコアには測定バージョンが明記されておらず、Geekbench 6で確認された30946という結果に近い。Geekbench 7で測定されたgfx1170の22249と、Geekbench 6のスコアが混在している可能性を排除できない。そのため、22249という数値からRadeon 860Mや840Mに対する正確な性能向上率を算出することはできず、CUあたりの性能についても現段階で結論を出すのは難しい。
2027年のMedusa投入までに確認すべき性能とGPUの正式仕様
AMDの製品ロードマップでは、2026年にZen 5のリフレッシュ版「Gorgon」、2027年にZen 6ベースの「Medusa」が予定されている。Gorgonは「Gorgon Point」としてRyzen AI 400シリーズに採用され、CES 2026では12コア24スレッドのRyzen AI 9 HX 470が発表された。Medusaはその次の世代に位置付けられ、今回のGeekbench結果はOEMメーカーが2027年向けの製品開発を進めていることをうかがわせる。ただし、AMDが正式な製品仕様や性能目標を公表したわけではない。
現在、Ryzen AI 300シリーズのHX 370やRyzen AI 400シリーズのHX 470を搭載したノートPCの購入を検討している場合、今回の結果はMedusaを待つ判断材料になるだろうか。CPUのシングルコア性能については、3000台のスコアが異なる2機種で繰り返し確認されており、Zen 6の性能向上を期待させる結果ではある。しかし、現行製品に対する28%や32%という性能差は、ES品の最高値と異なる条件で得られた比較値から算出されたものだ。そのため、これらの割合を量産モデルの性能向上率とみなし、購入判断にそのまま使うことはできない。内蔵GPUについても、実際のCU数が4なのか8相当なのかが判明しなければ、現行のRadeon 860Mや890Mからどれほど性能が向上するのかは評価できない。
今後の検証で重要になるのは、まずAMDがgfx1170の正式なCU数を明らかにすることだ。これにより、Wccftechが示したRadeon 860Mとの比較が、半分のCU数によるものなのか、同じCU数によるものなのかを判断できる。もう一つの重要な材料は、2027年に登場する量産モデルのGeekbench 7測定結果である。Ryzen AI 300や400シリーズについても、同じGeekbench 7で十分な測定データが集まれば、バージョンの違いによる問題を避けながら性能を比較できる。今回のES品で確認されたシングル1500〜1900台という低スコアの結果が、量産モデルでは見られなくなるかどうかも注目点となる。
Medusaの性能を正確に評価するには、AMDによる正式仕様の公表と、LenovoなどのOEMメーカーが投入する量産機での測定結果を待つ必要がある。異なる2機種で繰り返し確認されたシングル3000台というスコアは、Zen 6の潜在的な性能を探る上で有力な手がかりだ。一方、現行製品に対する性能向上率や内蔵GPUのCUあたりの性能については、測定条件と仕様が明確になるまで確定的な評価を避けるべきだろう。
