テクノロジーと科学の最新の話題を毎日配信中!!

米App Store、外部リンク解禁へ:Epic訴訟の判決受けAppleが規約改定、開発者とユーザーへの影響は?

Y Kobayashi

2025年5月3日

Appleが米国App Storeのガイドラインを更新し、アプリ内から外部の支払い方法へユーザーを誘導するリンクやボタンの設置を正式に容認した。これは長年にわたるEpic Gamesとの法廷闘争における重要な節目であり、アプリ開発者やユーザーにとって無視できない変化をもたらすものである。一体何が変わり、この決定は今後のアプリ経済圏にどのような波紋を広げるのだろうか。

スポンサーリンク

Epic Gamesとの法廷闘争と司法の判断がAppleを動かした

今回の規約改定の直接的な引き金となったのは、Epic Games対Apple訴訟における米連邦地方裁判所の判決である。特に、担当するYvonne Gonzalez Rogers判事が下した最新の差止命令は、Appleのこれまでの対応を厳しく断じるものであった。

判事は、Appleが以前の差止命令(開発者がユーザーを外部の支払い方法へ誘導することを許可するよう命じたもの)に「意図的に従わなかった」と認定した。Appleは、外部リンクを許可する代わりに外部での購入に対して27%という高額な手数料を課そうとしたり、ユーザーを不安にさせるような警告画面を表示させたりするなどの策を講じていたが、これらが事実上の障壁となっていると見なされたのである。

Rogers判事は、「Appleはいかなる手数料も課すことなく、開発者が外部リンクやボタンを設置することを妨げてはならない」と明確に命じた。この痛烈な批判と明確な命令を受け、Appleは「裁判所の命令には従うが、決定には強く反対しており、控訴する」との声明を発表しつつも、ガイドラインの改定に踏み切らざるを得なくなったのだ。

何が変わった? App Storeガイドライン改定の核心

Appleは開発者向けの通知で、「米国の裁判所決定に従い、ボタン、外部リンク、その他のアクション喚起に関するApp Reviewガイドラインを更新した」と説明している。この変更は「米国のApp Storeで配布されるアプリに影響する」と明記されており、現時点では米国限定の措置である。

具体的に変更された主なガイドライン項目とその意味合いは以下の通りだ。

  • 3.1.1 In-App Purchase(アプリ内課金):
    • 変更点: 米国ストアフロントのアプリにおいては、ユーザーが所有するNFTコレクションを閲覧できるようにする場合、他の購入メカニズム(アプリ内課金以外)へ誘導するボタン、外部リンク、その他のアクション喚起を含んではいけないという禁止事項が適用されなくなった。従来は、このような誘導は原則禁止されていた。
  • 3.1.1(a) Link to Other Purchase Methods(他の購入方法へのリンク):
    • 変更点: 米国ストアフロントのアプリでは、開発者が外部購入のためのボタン、外部リンク、その他のアクション喚起を含める際に、特別な許可(Entitlement)を取得する必要がなくなった。以前は特定の条件下で許可制となっていた。
  • 3.1.3 Other Purchase Methods(他の購入方法):
    • 変更点: アプリ内でユーザーにアプリ内課金以外の購入方法を使うよう推奨することの禁止が、米国ストアフロントのアプリには適用されなくなった。これにより、開発者はより自由に外部決済オプションを提示できる。
  • 3.1.3(a) “Reader” Apps(リーダーアプリ):
    • 変更点: いわゆる「リーダーアプリ」(コンテンツ閲覧が主目的のアプリ)がアカウント作成・管理のために外部サイトへの情報リンクを提供する場合、従来は特定の許可が必要だったが、米国ストアフロントのアプリでは、ボタンや外部リンク等を含める際にこの許可が不要になった

要するに、米国内においては、開発者は特別な手続きや制限なしに、自社Webサイトなど外部での購入やサブスクリプション登録を促すリンクやボタンをアプリ内に設置できるようになったということだ。これは、長年Appleが維持してきた「アプリ内でのデジタルコンテンツ販売は原則としてAppleの課金システム(IAP)を経由し、最大30%の手数料を支払う」という、いわゆる “Apple税” の壁に風穴を開ける大きな変化と言える。

スポンサーリンク

開発者の反応と残された疑問:手数料と世界標準への波及

この変化を待ち望んでいた開発者は少なくない。音楽ストリーミングサービスのSpotifyは、判決後すぐに外部リンクを含む新しいバージョンのアプリをApp Storeに提出したと報じられている。Patreonのようなクリエイター支援プラットフォームなども、アプリ内で直接料金体系を示し、外部登録を促すことが可能になるため、追随する動きが広がると考えられる。

しかし、依然として不透明な点も残る。最大の焦点は、外部購入に対する手数料である。判決文は明確に手数料の徴収を禁じているが、Appleは控訴する意向を示している。Appleが控訴審でどのような主張を展開し、最終的に手数料の問題がどう決着するのかは、今後の大きな注目点となる。

また、今回の変更は現時点では米国限定だが、その影響が世界に波及する可能性も指摘されている。AppleのApp Storeポリシーは全世界共通の部分も多く、米国での変更が先例となり、他の国や地域でも同様の措置が取られる、あるいは規制当局からの要求が高まる可能性は十分に考えられる。

今回の判決とそれに伴う規約改定は、アプリストアという巨大な経済圏のルールが大きく書き換えられる、歴史的に見ても大きな意味を持つ出来事と言えるだろう。


Source

Follow Me !

\ この記事が気に入ったら是非フォローを! /

フォローする
スポンサーリンク

コメントする