次世代原子炉の開発において、真の制約は資金でも設計でもない。特殊な材料を安定して供給できるサプライチェーンそのものだ。

小型モジュール炉(SMR)開発企業のX-energyは、SGL Carbonと最大800万ドルのマイルストーンベースの投資契約を結んだ。この資金は、SGL CarbonがフランスのCheddeに構える工場の設備更新に充てられる。目的は明確だ。X-energyが開発する高温ガス炉「Xe-100」の中枢を担う核グレードグラファイト「NBG-18」の生産能力を倍増させることである。

NBG-18は、Xe-100のペブルベッド炉心において中性子減速材と構造部材の役割を兼ねる、中粒等方性黒鉛である。ペブルベッド炉は750〜1000℃の高温で稼働し、無数の燃料球(ペブル)が炉心内を循環して物理的な摩擦を生む。グラファイトには、この過酷な環境下での摩耗や中性子照射による寸法変化に耐えうる極めて高い均質性(等方性)が求められる。そのため、ピッチコークスを用いた振動成形など、製造プロセスには高度な品質管理と長い時間を要する。X-energyによれば、同社のパイプラインはすでに11GWを超えているという。しかし、それに見合うだけの特殊材料を作れる企業は世界にほとんどない。今回の投資により、SGL Carbonは年間最大8基のXe-100に必要なグラファイトビレットを製造できるようになる。

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欧州から米国へ繋ぐ分業体制

この取り組みは工場の拡張という枠を超え、国際的な分業によるサプライチェーンの強靭化を狙っている。

2026年1月に両社が結んだ10年間の枠組み合意の一環として、初期の3年間で1億ドルを超える供給契約が成立している。すでにフランスで製造された最初のNBG-18ビレットは、機械加工を行うため米国のSGL Carbon施設へ出荷された。フランスで素材を作り、米国で原子炉用ブロックへと加工する体制が構築されつつある。

これは、単一の製造拠点への依存リスクを分散させる戦略だ。SGL Carbonの米国施設での加工能力も並行して拡大される。この計画が完了する2030年までに、欧州におけるNBG-18の製造能力は現在の2倍に達する。ただし、この分業体制は強みであると同時に、貿易政策や地政学的リスクに対して脆弱になるという弱点も抱えている。

迫る商業化へのタイムライン

サプライチェーンの構築は、X-energyの商業化ロードマップと密接に連動している。

Xe-100の最初の商業展開は、Dow Chemical Companyと共同で推進する米国エネルギー省のプロジェクトにおいて、4基の原子炉を建設する計画である。今回のグラファイト供給能力の拡大は、この初期プロジェクトの足場を固めるためのものだ。同時に、長納期材料の供給ボトルネックを先回りして解消する意図がある。

先進原子力が既存の電力網や産業プロセスに組み込まれるには、技術の完成度だけでなく、こうした部品と素材の安定調達が不可欠だ。特殊材料の製造を少数の限られた企業に依存する現在の構造が、今後どのように分散し、拡大していくのか。Dowとの初期プロジェクトで実証される供給網の強靭さが、その成否を占う最初の観測点となる。