中国の蘇州大学とLONGiの研究チームが、絶縁性のジルコニア粒子を界面に配置し、変換効率34.0%のペロブスカイト・シリコン型タンデム太陽電池を開発した。電荷の損失を抑えるための処理は、ときに必要な電荷の取り出しまで妨げてしまう。今回の研究では、絶縁粒子を界面全体に連続して敷くのではなく点在させ、その間に電荷が通る経路を残した。独立認証では定常状態で33.5%の変換効率と2.014 Vの開放電圧を記録しており、材料間の界面をどのように設計するかが発電性能を左右することを示す研究である。
Huimin Zhang氏、Qingshui Zheng氏らの論文は、査読を経て科学誌『Science Bulletin』に9月3日付でオンライン掲載された。出版社Science China Pressは9月18日の研究発表で、界面の分析や、発電状態で行った耐久試験の結果を紹介している。
光を分担して吸収しても、界面で電荷を失う
ペロブスカイト・シリコン型タンデム太陽電池は、異なる光吸収層を上下に重ねた構造を持つ。上側のペロブスカイトが高エネルギーの光を吸収し、そこを透過した光を下側のシリコンが利用する。米エネルギー省も解説しているように、それぞれの材料が吸収する光の範囲を調整して組み合わせることで、単一の材料では実現しにくい高い変換効率を目指せる。
ただし、光を吸収しただけでは電力にはならない。光によって生じた電子と、正の電荷を運ぶ「正孔」をそれぞれ電極まで取り出す必要がある。その途中で電子と正孔が再び結びつけば、発電に利用できる電荷が失われる。光を放出せずに起こるこの現象を、非放射再結合と呼ぶ。
今回の研究が対象としたのは、ペロブスカイト層の下側にある、正孔を取り出すための埋もれた界面だ。表面に凹凸を設けたシリコン上では、ペロブスカイトを均一に成長させることも難しい。膜に隙間ができたり接触が不均一になったりすると、電荷が失われやすい箇所が生じる。
そこで、界面を不活性化して再結合を抑える処理が用いられる。しかし、損失を減らそうとして絶縁性の層で界面を覆いすぎると、今度は取り出すべき電荷まで通りにくくなる。再結合を抑える領域と、電荷を取り出す経路を両立させる必要がある。
絶縁粒子の間に電荷の通り道を残す
研究チームは、透明導電性酸化物と、その上に形成する自己組織化単分子膜の間に、単斜晶ジルコニア(ZrO2)のナノ粒子を導入した。自己組織化単分子膜とは、分子が表面に規則的に並んで形成する極薄の膜で、この素子では正孔を取り出す役割を担う。ジルコニアを連続した膜として形成せず、粒子として点在させたところに設計上の工夫がある。
出版社の説明によると、粒子を加える効果はペロブスカイト膜を形成する段階から現れる。表面エネルギーが変化することで、ペロブスカイトの前駆体溶液が均一に広がりやすくなる。その結果、結晶粒が大きく、隙間の少ない緻密な膜を形成できるという。完成したセルの電気特性だけを改善するのではなく、まず光吸収層が成長する土台そのものを整えるわけだ。
発電時には、ジルコニア粒子が存在する領域で電界効果による不活性化が働き、非放射再結合を抑える。一方、粒子の間に残された自己組織化単分子膜を通じて正孔を取り出せる。ジルコニアそのものを導電性材料として利用するのではなく、電荷を失いにくくする領域と、電荷を流す経路を微細な界面上に共存させている。
ジルコニアの高い誘電率も、局所的な電場の変動や電荷の蓄積を抑える方向に作用すると研究チームは説明している。さらにX線光電子分光の結果は、ジルコニアと自己組織化単分子膜の分子との間にZr–O–P結合が形成されたことを支持した。単分子膜は下地の導電性酸化物にも結合するため、複数の結合点によって膜の密着性が高まり、より均一な被覆につながると研究チームは解釈している。
このように、粒子の配置と化学結合の両方を調整している点が今回の研究の特徴だ。単に絶縁物を増やせば性能が向上し続けるというものではない。電荷の損失を抑えながら、電流を取り出せる領域を残す配置が重要になる。
測定から見えた界面の変化
時間分解発光の測定では、界面を複合的に改良した試料の平均キャリア寿命が、1.46マイクロ秒から2.81マイクロ秒へ延びた。これは、励起された電荷が失われる過程にどのような変化が生じたかを調べる手掛かりとなる。ただし、キャリア寿命が延びたことだけから、電極への電荷の取り出しが速くなったと結論付けることはできない。電荷を失いにくくすることと、外部へ効率よく取り出すことは、それぞれ別に確かめる必要がある。
研究発表では、ほかの測定結果も組み合わせて今回の機構を説明している。導電性原子間力顕微鏡で電流分布を、ケルビンプローブ測定で表面電位の分布を調べたところ、界面改良後にはいずれも均一性が高まったと報告している。界面上の場所ごとのばらつきが減ったことを示す結果であり、平均的な変換効率だけでは見えない変化を捉えている。
また、紫外光電子分光では、正孔を取り出すのに適したエネルギー準位の整合が確認され、インピーダンス測定からは界面での再結合が減少したことが示されたという。化学結合の分析から電気的な応答まで、異なる測定結果が研究チームの提案する機構をそれぞれ支えている。ただし、各作用が効率向上にどの程度寄与したのかを、公開されている説明だけから個別に切り分けることはできない。
34%と33.5%は何を測った数字か
出版社が示した性能値には、実験室で最高効率を記録したセルと、独立認証を受けたセルの結果が含まれている。それぞれの測定結果を整理すると、次のようになる。
| 評価 | 変換効率 | 開放電圧 | 併記された電気特性 |
|---|---|---|---|
| 実験室で最高効率を記録したセル | 34.0% | 1.997 V | 短絡電流密度20.36 mA/cm²、曲線因子83.62% |
| 独立認証を受けたセル | 定常効率33.5% | 2.014 V | 出版社の研究発表には認証機関名と試料面積の記載なし |
出典:Science China Pressの研究発表。実験室で最高効率を記録したセルは34.0%・1.997 V、独立認証を受けたセルは定常効率33.5%・2.014 Vであり、別々のセルで得られた数値を組み合わせて一つの性能値として扱うことはできない。
開放電圧は、外部へ電流を流していない状態で得られる電圧を表す。これに対し短絡電流は、端子間の電圧がゼロのときに流れる電流である。実際に電力を取り出す際には、その中間にある動作点を利用する。曲線因子は、開放電圧と短絡電流の積に対して、実際の最大出力がどの程度得られるかを示す指標だ。開放電圧が高くても、電流の取り出しが妨げられれば、高い変換効率にはつながらない。
また、今回の34.0%をペロブスカイト・シリコン型タンデム太陽電池の世界最高効率と受け取るのは誤りだ。LONGiは7月、別のペロブスカイト・シリコン型セルで35.5%を達成し、欧州のESTIによる認証を受けたと発表している。今回の研究の意義は、界面で生じる電荷損失と電荷輸送のトレードオフに対し、材料と構造の両面から解決を試みた点にある。
独立認証は、研究チームとは別の第三者がセルの性能を測定したことを意味する。一方で、界面で起きている機構や量産時の再現性まで第三者が検証したことを意味するわけではない。出版社の研究発表には、試料数や測定誤差、セル面積の詳細も示されていない。そのため、公表資料だけでは性能のばらつきや、どの程度の面積を持つセルでこの性能を得たのかまでは判断できない。
2,000時間の試験から分かること
耐久試験では、封止したジルコニア改良セルが2,000時間後も初期効率の84%を維持した。これは変換効率そのものが84%になったという意味ではなく、試験開始時の性能を100%としたときに84%が残っていたという意味である。試験条件は次の通りだ。
| 項目 | 出版社が示した条件 |
|---|---|
| 試料 | 封止したセル |
| 光 | 太陽光相当の強度で連続照射(1 sun) |
| 温度 | 室温 |
| 動作 | 最大電力点で連続運転 |
| 結果 | 2,000時間後に初期効率の84%を維持 |
出典:Science China Pressの研究発表。2,000時間後に84%を維持したという結果が示すのは、封止したセルを室温で連続照射し、最大電力点で運転した条件下での安定性である。
実際に電力を取り出しながら光を当て続ける試験は、暗所で保管した後に性能を測定する試験とは異なる。発電中に生じる劣化を調べている点には意味がある。ただし、室温での連続照射2,000時間という結果を、屋外での使用年数へそのまま換算することはできない。
ペロブスカイト太陽電池の安定性評価について、2020年に『Nature Energy』が掲載したISOS手順に基づく研究者の合意文書では、連続光照射、屋外試験、温度サイクルなどを区別して評価することが提案されている。温度や湿度が変われば、材料や界面に加わる負荷も変化する。昼夜のように明暗が繰り返される環境では、暗所に置くことで性能が一部回復する現象についても考慮する必要がある。単純に「何時間光を当てたか」だけでは、異なる実験間の耐久性を比較することはできない。
実用化に向けては、高温多湿や温度変化に耐えられるかに加え、大面積化した場合でもジルコニア粒子の配置と自己組織化単分子膜の被覆を均一に保てるかが課題となる。こうした製造上の再現性を示し、発電状態での長期安定性をさまざまな条件下で確認できれば、今回の界面設計は、光によって生じた電荷を損失を抑えながら取り出す技術として、実用的なタンデム太陽電池への応用に近づく。
