AMDが2025年第4四半期(Q4)にZen 5アーキテクチャを採用したRyzen 9000G APUシリーズをAM5プラットフォーム向けに発売する計画との噂が浮上した。新シリーズはモバイル向けStrix Pointを基にした最大12コアのハイブリッド設計とRDNA 3.5グラフィックスを搭載し、現行の8000Gシリーズから大幅な性能向上が期待されるという。
Ryzen 9000G APUの概要と発売時期
著名なハードウェアリーカーであるHXL(@9550pro)氏からの情報によれば、AMDはAM5ソケット向けの新しいAPUシリーズを2025年第4四半期に投入する準備を進めているとされる。これは2024年後半に発売されたモバイル向けStrix PointをデスクトップPC向けに移植したものになる見込みだ。
AMDは従来、モバイル向けAPUをデスクトップ向けに展開する戦略を取ってきた。Ryzen 2000G、3000G、5000G、そして現行の8000Gシリーズと続いてきたこの流れを汲み、次世代APUはRyzen 9000Gシリーズとして発売される可能性が高い。ただし、正式な命名規則はまだ発表されていない。
現行のRyzen 8000G APUが2024年初頭に発売されたことを考えると、9000Gシリーズの発売は約1年半後となる。これはデスクトップ向けRyzen 9000シリーズCPUの発売からも相当の期間が経過することになる。
予想される仕様とアーキテクチャ
Ryzen 9000G APUは、AMDのモバイル向けStrix Pointアーキテクチャを基盤としていると見られている。このシリコンは、高性能なZen 5コアと効率重視のZen 5cコアを組み合わせたハイブリッド設計を特徴としている。
最上位モデルでは、4つのZen 5コアと8つのZen 5cコアを組み合わせた合計12コア24スレッド構成が採用される可能性がある。これは現行のAPUで最高だった8コア16スレッドから大幅な増強となる。Strix Pointのデュアルコンプレックス(CCX)レイアウトも維持される見込みだ。
グラフィックス面では、RDNA 3.5アーキテクチャに基づく強力な内蔵GPU「Radeon 890M」を搭載すると予想される。このGPUは16コンピュートユニット(CU)を持ち、約2.9GHz(デスクトップ版では最大3.0GHzに引き上げられる可能性もある)で動作する。これは現行Ryzen 8000GシリーズのRDNA 3ベースの12 CU GPUを上回る性能を提供するだろう。
さらに注目すべき点は、Ryzen 9000G APUがXDNA 2ニューラルプロセッシングユニット(NPU)を搭載する見込みであることだ。このNPUは最大50 TOPSのAI処理性能を提供し、Microsoft Copilot+対応PC向けのデスクトップ製品としては初めての選択肢となる可能性がある。
中級モデルでは、「Krackan Point」と呼ばれるシリコンが使用され、4つのZen 5コアと4つのZen 5cコアを組み合わせた8コア構成と、8CUのRadeon 860M GPUを搭載すると見られている。
市場への影響と今後の展開
Ryzen 9000G APUは、AMDのデスクトップ向けZen 5世代製品の最後を飾る製品群となる可能性が高い。AMDは2026年にはZen 6アーキテクチャへと移行する計画だとされており、9000Gシリーズはその橋渡し的な位置づけとなるだろう。
興味深いのは、AMDが2026年に「Gorgon Point」(おそらくRyzen AI 400シリーズとして)でStrix Pointのリフレッシュを計画していると報じられている点だ。このタイミングに合わせ、余剰となるRyzen AI 300シリコンをRyzen 9000G APUに振り向ける戦略とも考えられる。
また、Ryzen 9000G APUと並行して、統合グラフィックスを持たない予算志向の「Ryzen 9000F」シリーズも発売される可能性があるとHXL氏は示唆している。これらは価格重視のPCビルダーやプリビルドシステムベンダーから需要が見込まれる。
これらのデスクトップ向けAPUは、単体GPUを必要としない一体型システムや、予算を抑えながらも基本的なゲーミング性能を求めるユーザーにとって魅力的な選択肢となるだろう。特に、AI処理能力の強化は、Windows環境でのCopilot機能の活用など、新たなユースケースを開拓することが期待される。
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