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AI開発の遅れを隠すためApple WWDC2025はOSのデザイン変更がメインに

Y Kobayashi

2025年6月2日5:31AM

Appleの年次開発者会議WWDC2025が目前に迫る中、テクノロジー業界の注目は同社のAI戦略とその進捗に集まっている。しかし、新たにもたらされた情報からは、今年のWWDCがAIの分野においては「期待外れ」に終わる可能性が示唆されており、Apple社内からも懸念の声が上がっているという。AI関連の大型発表は2026年に持ち越される一方、今年はiOS 26をはじめとするOSのUI刷新が最大の目玉となるかもしれない。

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AI戦略、苦渋の「1年先送り」か ― 内部から漏れる”AIの欠点露呈”への懸念

Bloombergの名物記者Mark Gurman氏の最新レポートによると、Apple内部ではWWDC2025がAIの観点から「失望を招くかもしれない」との見方が広がっている。特に、OpenAIやGoogleといった競合他社がAI分野で急速な進化を見せつける中、Appleの発表内容次第では、その「AIにおける弱点がより一層露呈してしまうのではないか」という危機感が存在するという。

Appleが長年約束してきた「Apple Intelligence」は、現状では基本的なAI機能に留まっており、特に注目されていたAI搭載Siriの本格的なアップデートは2026年まで遅れる見通しだと報じられている。

この状況を受け、AppleはAI関連の主要な発表をWWDC2026まで延期し、そこで「AIイノベーターとしてのApple」を消費者に改めて印象づけるという、ある種の「危険な賭け」に出る可能性が指摘されている。しかし、AI技術の進化スピードは凄まじく、この1年間の遅れが競合との技術格差をさらに広げるリスクも否定できない。AppleのAI技術群は、すでに多くの面で競合に後れを取っているとの見方も強い。

WWDC2025で発表されるAI機能は「小粒」か? 期待されるアップデート内容

今年のWWDC2025がAIに関して完全に沈黙するというわけではないようだ。いくつかの「段階的」ではあるが重要なアップデートが予定されていると報じられている。

その中でも最も注目されるのは、Appleが自社のオンデバイス基盤モデル(Foundation Models)をサードパーティ開発者に向けて開放する計画だ。これらのモデルは、現在Appleがテキスト要約や自動修正といった機能に使用しているもので、約30億パラメータ規模とされている。開発者はこれらのモデルを利用して、アプリに独自のAI機能を組み込めるようになり、オンデバイスでの処理が可能になるため、プライバシー保護の観点からも利点があると考えられる。ただし、これらのオンデバイスモデルは、OpenAIやGoogleが提供するクラウドベースの大規模言語モデル(LLM)と比較すると性能面では劣るため、「世界を揺るがすような機能」は期待薄かもしれない。

その他に噂されているAI関連の発表としては、以下のものが挙げられる。

  • AIを活用した新しいバッテリー寿命延長モード: iPhoneのバッテリー管理をよりインテリジェントに行う機能。
  • 翻訳アプリの刷新: AirPodsやSiriとの連携を強化した新しい翻訳体験。
  • 既存アプリへの「AI搭載」タグ付け: Safariや写真アプリ内の一部の既存機能に「AI搭載」という名称が付与される可能性。

これらのアップデートは着実な進歩ではあるものの、AI分野で業界をリードするような革新性を示すには力不足との見方が大勢を占めている。

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AIの遅れを補う? 「ガラス風UI」への刷新がWWDC2025最大の目玉か

AI分野での大きな進展が見込めない一方で、WWDC2025ではソフトウェアプラットフォームの大幅なデザイン刷新が期待されている。iOS 26、iPadOS 26、macOS 26(コードネーム「Tahoe」との噂も)、tvOS 26、watchOS 26といった主要OSが、Apple Vision Proで採用されたvisionOSに触発された、より半透明なガラスのような質感を持つユーザーインターフェース(UI)へと生まれ変わると報じられている。

このUI刷新は、多くのAppleファンにとって刺激的な変化となる可能性があり、WWDC2025における「際立った発表」となるかもしれない。メニュー、ボタン、アイコンなどが、より奥行きを感じさせるデザインになることが予想される。

しかし、このUI刷新が「Appleは過去のデザインに囚われている」というメッセージを発信するリスクも指摘されており、AI分野でのリーダーシップを期待する層にとっては、根本的な解決策とは映らないかもしれない。

開発者向けツールも進化:SwiftUIにリッチテキストエディタ、Swift Assistに進捗は?

開発者にとっては、AI関連以外のアップデートも重要だ。WWDC2025では、AppleのUI開発フレームワークであるSwiftUIに、待望の組み込みリッチテキストエディタが搭載される見込みである。これにより、開発者はアプリ内で高度なテキスト編集機能をより容易に実装できるようになる。

また、昨年発表されたAIを活用したコード補完ツール「Swift Assist」に関しても、何らかの進捗アップデートが期待されている。Apple社内でテストされているAnthropic社製AIモデルを活用したバージョンがリリースされるかどうかが注目されるが、詳細はまだ不明だ。

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なぜAppleはAIで出遅れたのか?

AppleがAI開発において、競合他社に比べて慎重な姿勢を崩さず、結果として「出遅れ感」が否めない状況にある背景には、いくつかの要因が考えられる。

まず、Appleの根幹にあるプライバシー重視の哲学が挙げられる。同社はユーザーデータの取り扱いに極めて慎重であり、AI機能の多くをオンデバイスで処理しようと試みてきた。これはプライバシー保護の観点からは称賛されるべきだが、クラウドベースで膨大なデータを学習させる競合のLLMに比べて、モデルの性能向上に時間がかかるという側面がある。

次に、巨大企業ゆえの意思決定の遅さと、完璧主義の文化も影響している可能性がある。Appleは新技術を導入する際、完成度を極めて重視する傾向がある。これは高品質な製品体験に繋がる一方で、急速に進化するAIのような分野では、市場投入のタイミングを逸するリスクを伴う。

さらに、Siriの既存アーキテクチャの課題も指摘されている。Siriは登場から長い年月が経過しており、最新の生成AI技術をスムーズに統合するには、根本的な刷新が必要である可能性が高い。この刷新作業が想定以上に難航しているのかもしれない。

これらの要因が複合的に絡み合い、現在のAppleのAI戦略に影響を与えているのではないだろうか。

WWDC2025は「移行期」のイベントか ― 2026年への期待と不安

過去2年間のWWDCでは、2023年にApple Vision ProとそのvisionOS、2024年にはApple Intelligence(の初期構想)が発表されるなど、大きな注目を集める発表があった。それに比べると、今年のWWDC2025は「小規模」なものになる可能性が高そうだ。

AI分野での大きな飛躍が見込めない中、OSのUI刷新が話題の中心となりそうだが、これがAppleの「革新性のジレンマ」を象徴しているようにも見える。

Appleにとって、WWDC2025はAI戦略における「嵐の前の静けさ」なのか、それとも本格的に「取り残される予兆」なのか。2026年に「AIイノベーター」として真の復活を遂げることができるのか、世界中のユーザー、開発者、そして投資家とって、色々な意味で注目のイベントとなりそうだ。


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