南亞科技(Nanya Technology)が2026年の世界メモリ市場を8000億ドル超とみていると、Economic Dailyが7月21日の同社幹部の講演を基に報じた。世界半導体市場統計(WSTS)の2026年春季予測も、メモリを8000億ドル超、半導体全体を1兆5100億ドルと予測している。メモリだけで総額の約53%、すなわち過半に達する計算だ。AIの用途がモデルの訓練から推論へ広がり、サーバーから端末まで搭載量を押し上げる一方、市場金額の急増には供給不足と価格上昇も強く効いている。

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8000億ドルは前年の世界半導体市場を上回る

WSTSは2026年のメモリ売上高が前年比約250%増え、8000億ドルを超えるとみる。半導体市場全体の予測は前年比90%増の1兆5100億ドルで、メモリの伸びが最大の押し上げ役だ。ロジックの予想成長率は37%、マイクロプロセッサは20%、アナログは10%にとどまる。製品群の間で伸び方に大きな差が開いた。

規模をつかむには前年との比較が分かりやすい。米半導体工業会(SIA)が2026年2月に公表した2025年の世界半導体売上高は7917億ドル、うちメモリは2231億ドルだった。WSTSの2026年予測では、メモリという一製品群が前年の半導体市場全体を上回る。メモリの比率が過半へ上がるという南亞科技の説明は、WSTSの数字とも整合する。

もっとも、8000億ドルは出荷ビット数を示す数字ではなく、販売金額である。高価格の高帯域幅メモリ(HBM)が増え、DRAMやNANDの価格も上がれば、数量の伸びを超えて市場規模は膨らむ。WSTSは成長の主因にAIインフラ、HBM、アクセラレーテッド・コンピューティングを挙げている。2027年も半導体全体は27%増の約1兆9000億ドル、メモリは32%増えるとの予測だが、いずれも需要と価格を含む売上高の見通しである。

推論でメモリはどこまで増えるのか

南亞科技で戦略企画・管理を担当する吳志祥上級副社長は7月21日、工業技術研究院(ITRI)が台北で開いたフォーラムで、AI推論がメモリ需要を広げる仕組みを説明した。Economic Dailyによると、2026年のDRAMビット需要はHBMが約1割、従来型のサーバーDRAMが4割超を占めるという。両者の合計はすでに5割を超え、今後は6割超へ上がる可能性があるとの見方だ。

訓練では、多数の演算器へデータを送り続けるHBMの帯域が性能を左右する。推論でもデータセンター向けGPUのHBM需要は残るが、同時にCPU側の大容量DRAMや、対話履歴を保持するKVキャッシュが膨らむ。吳志祥は構成例として、12層のHBMを8スタック搭載するGPUでは高密度DRAMダイが96個、推論向けCPUプラットフォームでは200個超に達し得ると説明した。AI PCについても、従来の16GBまたは24GBから128GBへ増える可能性を挙げた。

ここで「推論の普及」を「HBMの後退」と捉えると実態を外す。南亞科技自身の2026年第3四半期向け市場見通しは、AI向けGPU、CPU、ASICの開発がHBM、LPDDR5、DDR5の需要をそろって押し上げるとしている。クラウド推論ではHBMとサーバーDRAMが増え、端末側では低消費電力と短い応答時間に適した別の構成が必要になる。推論はメモリ需要の行き先を一種類へ絞るのではなく、用途ごとに分岐させる。

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出荷量より先に、価格と製品構成が跳ねた

南亞科技の2026年第2四半期決算は、市場金額が増える仕組みを端的に表している。DRAMのビット出荷量は前四半期比で横ばいだったが、平均販売価格は60%台上昇した。その結果、売上高は68.2%増の825億4900万台湾ドル、粗利益率は79.5%まで上がった。少なくとも同社の四半期成長は、物量より価格の寄与が大きい。

価格を支えているのは、AI向け製品への需要集中と供給の振り替えである。南亞科技は、クラウドデータセンターのAIサーバーと一般サーバーがHBMやRDIMMを吸収し、スマートフォンやPC、車載・家電向けメモリの供給を圧迫していると説明する。同社の上半期売上高でも、AIインフラ・サーバー向け製品が20%超を占めた。メモリの単価上昇はAIサーバーの内側に収まらず、消費者向け機器の部品コストにも波及する。

供給側はすぐには追いつかない。南亞科技は不足が数四半期以上続くと予想し、顧客の複数年契約に基づく需要を見ながら2028年から生産能力を段階的に増やす方針だ。2026年の設備投資上限は520億台湾ドルだが、生産設備はその約3割を占める。2026年の高い市場成長率には、新しい製造能力が量産へ入る前の価格上昇も織り込まれている。

UWIOと2028年の供給能力

南亞科技が推論向けに狙うのは、HBMと同じ製品を追う道ではない。Mirror Dailyによると、同社はDRAMとCPUまたはASICをWafer-on-Wafer(WoW)などの3D IC技術で直結する、カスタムUWIO DRAMを開発している。吳志祥は、HBMに比べて帯域を5~10倍に高め、転送1ビット当たりの消費エネルギーを3分の1から10分の1へ下げられるとの目標を示した。電力と遅延の制約が厳しいエッジAIや端末内推論を想定した主張である。

UWIOはすでに初期売上を生んでいると南亞科技は2026年第1四半期に公表した。ただし、5~10倍の帯域と消費電力の値について、構成条件をそろえた独立ベンチマークや量産時期は公開されていない。HBMを一律に置き換える製品というより、顧客のCPUやASICと組み合わせて設計する製品として成否を測る必要がある。

製造能力の時系列にも注意が要る。南亞科技の公式資料では、新工場への装置搬入は2027年第1四半期に始まるが、第1段階の月産3万枚は2028年の計画だ。フル稼働時は月産4万5000枚、総設備投資は4800億台湾ドルを見込む。2026年の8000億ドル超という市場予測を支えるのは既存能力と価格であり、新工場が供給を変え始めるのはその後になる。

WSTSは2027年にもメモリ売上高が32%増えるとみている。予測の持続性を確かめる材料は、南亞科技を含む各社の出荷ビット数が価格と並んで増え始めるか、そして2028年の新設能力が計画通り量産へ移るかである。UWIOが顧客製品に採用されれば、推論需要はHBM中心のデータセンターから端末の3D積層へ広がる。その条件が揃うまで、8000億ドルはAI需要と供給制約が同時に作る市場規模として読むべきだ。