カリフォルニア州議会は2026年8月27日、オープンソースOSの配布者を端末レベルの年齢シグナル義務から外すAB 1856の審議を終えた。州上院は前日の26日に39対0で可決し、州下院も上院修正へ69対0で同意した。ただし、公式ステータスは可決済みの法案であり、Gavin Newsom知事が署名した州法ではない。現時点で効力を持つのは、2027年1月1日に主要義務が始まるAB 1043の方だ。
この差は小さくない。AB 1856は「Linux」や特定のライセンスを名指しせず、誰が何を配るかという条件でOS提供者の範囲を狭める。一方、アプリストアと開発者の義務は残る。オープンソースソフトウェア全般が年齢確認制度から消えるわけではない。
免除は「Linux」ではなくライセンス条件で決まる
AB 1856が追加する一文は明快だ。OSまたはアプリを、受領者がコピーし、再配布し、改変できるライセンス条件で配る者・団体を「OS提供者」に含めない。LinuxカーネルやDebianといった製品名も、GPLやMITなどのライセンス名も条文にはない。
免除の基準を製品一覧ではなく、利用者が持つ三つの権利へ置いたわけだ。その条件に合うコミュニティOSの配布主体は、OS提供者の定義から外れる。利用者がISOイメージを入手し、自分で改変版を作って再配布できる仕組みを、一社が端末設定とアカウントを管理する商用OSと同じ「提供者」へ押し込む無理を解く。
ただし、Linuxを使っているという技術的事実だけで免除は決まらない。OSイメージに専有ソフトを組み込み、企業が端末アカウントやアプリストアを管理する製品では、企業がどの役割を担うかを別に判断する必要がある。SteamOSやAndroidが自動的に免除される、または対象に残ると、法案の文面だけから言い切ることはできない。
4区分の年齢シグナルはどう流れるのか
2025年10月13日に成立したAB 1043は、カリフォルニア州民法へデジタル年齢保証法(Digital Age Assurance Act)を設けた。OS提供者は端末のアカウント設定時に、アカウント保有者へ主利用者の生年月日、年齢、または両方を入力させる。年齢シグナルは最低4区分である。13歳未満と13歳以上16歳未満を分け、さらに16歳以上18歳未満と18歳以上を区別する。
対象アプリストアはOSからシグナルを求め、アプリ開発者の要請に応じて渡す。開発者も、アプリが端末へダウンロードされ、起動された時点でシグナルを要求しなければならない。受け取った開発者は、所定の範囲で利用者の年齢区分を実際に知っているものとみなされ、適用法への対応に使う。ただし、異なる年齢を示す明白で説得力ある内部情報があれば、そちらを主な判断材料にする。
ここでいう年齢確認は、州が政府発行IDや顔認証を義務づける仕組みではない。法文の入口は、アカウント保有者による年齢または生年月日の入力である。アプリへ送るのも生年月日そのものではなく、法文上は個人を識別しない年齢区分データだ。AB 1856は、制度順守に必要な最小限の情報だけを送り、他の法律を含めて要求されない場面ではシグナルを求めないよう明記した。
期限と責任は重い。2027年1月1日より前に設定済みの端末には、同年7月1日までに年齢情報を入力できる画面を設ける。2026年1月1日以降に更新され、2027年1月1日より前に入ったアプリも、未要求なら2027年7月1日までにシグナルを求める。違反への民事制裁金は、影響を受けた子ども1人・違反1件当たり、過失なら最大2,500ドル、故意なら最大7,500ドルである。
オープンソースアプリ全般の免罪符ではない
AB 1856の免除を「オープンソースソフトウェアは対象外」と要約すると、役割ごとの境界が消える。新旧法文を比べると、変更は次のように分かれる。
| 役割 | AB 1856で変わること | 残る義務・境界 |
|---|---|---|
| OS提供者 | コピー・再配布・改変を許す条件でOSやアプリを配る主体を定義から外す | 免除されないOS提供者は、年齢入力画面とリアルタイムAPIを用意する |
| 対象アプリストア | OSからシグナルを要求し、開発者へ渡す役割を明文化する | オープンソースであることを理由とする一般免除は書かれていない |
| アプリ開発者 | 対象ストア内でアプリを所有するか、ホスティングを維持・管理する者へ定義を絞る | ダウンロードと起動時にシグナルを要求し、適用法への対応に使う |
| ソフトウェア部品 | 対象ストアで消費者向けの独立実行アプリとして提供されない部品をアプリ定義から外す | 独立したアプリとして提供されれば、部品という理由では外れない |
したがって、コードを公開すれば制度全体を回避できるという条文ではない。AB 1856のオープンソース向け条文はOS提供者の定義を狭めるが、対象アプリストアと対象ストアでアプリを提供する開発者の役割別義務を一括免除しない。OS提供者から外れても、同じ企業や団体が対象アプリストアを運営すれば、その役割は別に評価される。
AB 1856は誤ったシグナルへの責任も調整した。利用可能な技術や合理的な技術制約、障害を踏まえて誠実に順守しようとしたOS、ストア、開発者は、誤信号について免責される。これは年齢シグナルの正確性を保証する規定ではなく、合理的な実装を試みた主体の責任を限定する規定である。
なぜ分散型のOSを別に扱うのか
System76は2026年5月、Coloradoで作ったオープンソース免除の例をCaliforniaへ波及させるため、コミュニティや州内の関係者と文言を調整したと説明した。同社はPop!_OSとCOSMIC Desktop Environmentへ年齢確認や年齢申告機能を入れないとも表明している。
反発の中心は、年齢入力欄を作るコストだけではなかった。オープンソースOSには、単一の配布元、全利用者を束ねるアカウント、改変を止める管理権限がそろわない場合がある。誰でも複製し、機能を外した版を再配布できるのに、特定の主体へリアルタイムの年齢APIを維持させると、法的責任と実際の管理能力が離れてしまう。
Apereo FoundationやOpen Source Initiativeなど4団体も2026年5月27日の共同声明で、年齢情報機能をOSレベルへ課す案は、小規模またはボランティア中心のプロジェクトを圧迫し、資源の多い専有ベンダーしか参加できない環境を作りかねないと訴えた。AB 1856のライセンス基準は、この分散した開発・配布モデルを法文へ落とし込む試みである。
署名後にも残る三つの境界
最初に確認すべきなのは知事の判断だ。AB 1856が州議会を通過しても、署名されるまではAB 1043を改正しない。Newsom知事はAB 1043へ署名した際、家族が共有するアカウントや複数端末で使うプロフィールを持つ動画配信・ゲーム事業者の懸念を挙げ、2026年中の修正を議会へ求めていた。ただし、その署名文はオープンソース免除への賛否を示していない。
次は、複数の層を持つ製品の扱いである。LinuxカーネルやOS部分の配布条件が免除に合っても、専有アカウント、商用ストア、アプリ配布を管理する主体には別の役割が生じる。州司法長官や裁判所が個別製品へ定義をどう当てはめるかは、まだ公表されていない。
そして、免除されたOSから年齢シグナルが来ないとき、対象アプリストアと開発者が残る義務をどう果たすかという実装問題がある。AB 1856が成立すれば、Linuxコミュニティは中央集権的な年齢APIの提供責任を避けやすくなる。制度が実際に動くかは、免除された層の外側でストアと開発者が信号の欠落をどう扱うかにかかっている。
