AI半導体のインターコネクトを開発するEliyanが、1億4,500万ドルのSeries Cを完了した。評価額は10億ドルに達し、同社はユニコーンとなった。資金は、チップレット同士を結ぶパッケージ内配線の改良からラック間光接続への拡張までに回る。Eliyanは、AIチップから光モジュール、さらにラックをまたぐ接続までを一つの製品群で覆おうとしている。演算器の数を増やすほどデータ移動に電力を奪われるAI基盤で、接続距離ごとに別々だったPHYをどう束ねるのかが今回の調達を読み解く軸になる。
1億4,500万ドルで進める接続範囲の拡張
7月29日に完了したSeries CはSeligman Venturesが主導し、Cisco Investmentsと光通信部品を手がけるLumentumが新たな戦略投資家として加わった。Eliyanは調達資金を次世代インターコネクトの開発と提携先の拡大に振り向け、製造規模も引き上げる。Seligman VenturesのManaging PartnerであるUmesh Padvalは、Eliyanの取締役会にも加わる。
今回の投資家構成は、Eliyanが進もうとする方向を映している。Ciscoはネットワーク機器、Lumentumは光部品を主力とし、Eliyanが従来得意としてきた半導体パッケージの外側にいる企業だ。ただし、出資は製品採用や購買契約を意味しない。発表されたのは資本参加であり、両社との共同製品や供給契約は明らかにされていない。
Eliyanは2026年1月にも、AMDとArm、Coherent、Metaなどから5,000万ドルの戦略投資を受けたと発表していた。7月の資料はSeries Cを「総額1億4,500万ドルで完了」と記す一方、1月分がその内数かどうかには触れていない。したがって、二つの数字を足して2026年の調達総額とすることはできない。
資金調達と製品の進展は以前から対になっている。2022年の4,000万ドルSeries Aでは5nm版NuLinkのテープアウトを発表し、2024年の6,000万ドルSeries Bでは3nm版をリンク当たり最大64Gbpsへ引き上げる目標を示した。今回は評価額が動くと同時に、事業の重心を電気信号で完結するパッケージ内から、光部品と協調するシステム側へ移す局面に重なる。
光を出す部品ではなく、光エンジンまでの電気区間
資金調達の5日前、Eliyanは「NuLink-XD」を発表した。TSMCの3nmプロセスを前提とする224G PAM4 SerDesで、AIチップ同士、またはチップと光モジュールを結ぶ電気インターフェースである。Near-Package Optics(NPO)やOSFP、XPOといった構成を想定し、光通信へ信号を渡す直前の区間を担う。
ここでNuLink-XDを光トランシーバーと捉えると、製品の役割を見誤る。SerDesはチップ内部のデータを高速な直列電気信号へ変換し、光エンジンまで運ぶ。そこから先で電気信号を光へ変えるのは別の部品だ。Eliyanが掲げる「electro-optical interconnect」は、電気と光の境界を低い電力でつなぐ設計を指しており、同社がレーザーや光変調器まで自社製品として完成させたという発表ではない。
NuLink-XDは、届く距離に応じて消費電力を調整できる構成を採る。長い基板配線を駆動できるよう余裕を持たせた汎用SerDesに対し、チップから近くの光モジュールまでという短い電気区間へ狙いを絞り、不要な電力を削る考え方だ。Eliyanは代替方式より最大40%低い消費電力をうたう。しかし比較対象と配線距離は示されず、測定条件や実測シリコンの有無も発表文からは分からない。この数字は現時点で同社の設計目標または評価であり、独立した性能比較ではない。
しかも最大40%はSerDesについての主張である。レーザー、光変調器、光ファイバーを含むリンク全体の電力が同じ割合で下がるわけではない。それでも、数百基のアクセラレーターへ多数のリンクを引く構成では、チップごとのI/O電力を削る効果が積み上がる。空いた電力枠を演算へ回すか、同じ枠内により多くの高速リンクを置くのがEliyanの狙いだ。
D2Dからラック間へ延びる製品ロードマップ
Eliyanの出発点は、同じパッケージ基板に載るダイ同士を結ぶNuLink D2Dである。標準的な有機基板でも使えるPHYを提供し、高価なシリコンインターポーザーへの依存を減らす構想を進めてきた。NuLink-XSは接続先を別パッケージのチップへ広げ、同じ基板上で最大100mmの到達距離を掲げる。そしてNuLink-XDは、光モジュールに信号を渡して複数ラックへ届く経路を作る。
NuGearは、メモリー接続とI/O接続を担うチップレット製品群である。Eliyanは1月時点で、光エンジンと組み合わせるスケールアップ接続について1.6Tbpsから12.8Tbpsのリンク帯域を目標に掲げていた。PHYのIP提供に加えて、パッケージ外へデータを運ぶチップレットを製品にする構想だ。ただし、各製品の出荷仕様やD2D、C2Cとの統合方法はまだ示されていない。
ラック間では距離に加え、電力が問題になる。AIクラスターでは、アクセラレーターを追加すると接続本数も増え、SerDesと光モジュールが消費する電力が積み上がる。NuLink-XDが狙うのは、光へ変換する前の電気区間を用途に合わせて短く設計し、同じ電力枠により多くのリンクを収めることだ。演算能力を増やしても、データが届かなければアクセラレーターは待たされる。EliyanはこのI/O制約を、パッケージからラックまで連続した設計問題として扱う。
同社の説明では、多数のアクセラレーターを一つの計算系として密に結ぶスケールアップと、サーバーやクラスターの単位を横へ増やすスケールアウトの両方が対象になる。前者は低遅延で演算器を束ねる接続、後者は計算系そのものを増やす接続だ。Eliyanは電気PHYとチップレットの供給範囲を二つのネットワークへ広げる方針を掲げる。ただし、どちらも同社製品で完成するわけではなく、光エンジンやネットワークスイッチを持つ提携先との統合が前提である。
評価・導入と量産採用の間
Eliyanは、ハイパースケーラーとAIアクセラレーター企業に加え、メモリー企業やインフラ企業が同社技術を「評価または導入」していると説明する。ただし顧客名と対象製品は示していない。台数や地域も不明だ。この説明は同社の技術群全体にかかるため、発表から5日しかたっていないNuLink-XDがすでに導入されたと読むこともできない。
NuLink-XDについて公式に確認できるのは、アーキテクチャを発表し、主要顧客や提携先と次世代システムへの組み込みを進めているという段階までだ。テープアウト、サンプル出荷、量産開始の日程はない。1億4,500万ドルは製造規模の拡大にも使われるが、資金の大きさと製品の完成度は別の指標である。
Eliyanがチップレット接続のIP企業から、ラック規模の電気・光接続を束ねる供給者へ移れるかは、NuLink-XDの実測電力と最初の顧客シリコンで決まる。最大40%という主張がどの配線条件で再現され、NuGearの1.6Tbpsから12.8Tbpsという目標がどの製品で出荷されるのか。製造拡大の成果は、評価中という表現が社名付きの量産採用へ変わった時に初めて測れる。



