Energy Fuelsは8月19日、米ユタ州White Mesa Millで生産したテルビウム酸化物について、日本の大手永久磁石メーカーから商用生産向けの認定を得たと発表した。3月には、米国産モナザイトから作った純度99.9%の試作品が世界の磁石メーカーの仕様を満たすと説明していた。今回は顧客側が、永久磁石の商用生産に使えると認め、追加の認定・検証は不要だと通知した点が違う。
認定は、材料が顧客の工程へ入るための関門を一つ越えたことを意味する。ただし、これは持続的な量産や販売契約の発表ではない。米国内での供給能力が実際に立ち上がるまでには、試作での仕様適合と商用設備の稼働の間に、なお大きな距離がある。
顧客工程で使えるという認定
Energy Fuelsが明らかにしたのは、中国外で最大級の永久磁石メーカーの一社から得た認定である。メーカーは同社のテルビウム酸化物が仕様に適合すると判断し、商用の希土類永久磁石(REPM)生産への使用を承認した。追加の認定や検証は不要とされた。
3月25日の発表で同社が示したのは、既存のパイロット回路で製造した1kgの試料だった。純度99.9%で、世界の磁石メーカーの仕様を満たすという説明である。自社が仕様適合を説明することと、特定の顧客が商用工程で受け入れることには隔たりがある。今回、その隔たりを一つ埋めた。
一方で、認定した日本メーカーの社名は公表されていない。試験項目、試験したロット数、磁石としての性能測定値も非開示である。購入量、価格、供給契約の期間も明らかにされておらず、認定を受注や商用出荷の開始と言い換えることはできない。
高温で使うNdFeB磁石に加える元素
テルビウムは、ネオジム・鉄・ホウ素(NdFeB)永久磁石の耐熱性と性能を高めるために使われる材料だとEnergy Fuelsは説明する。用途としては自動車、高度電子機器、ロボティクスを挙げる。航空宇宙と防衛も例示する。材料認定の対象は酸化物であり、磁石メーカーがそれを自社の製造工程で使えると判断したことになる。
供給源の偏りを考えると、認定は性能評価に加え、調達先を増やすための工程でもある。USGSによると、米国では2025年、重希土類の化合物・金属を持続的な商業規模で生産した企業はなかった。見かけ消費に対する純輸入依存度は100%であり、2021年から2024年にかけてのテルビウム化合物・金属の輸入元は、出荷記録上、中国が100%だった。
中国は2025年4月、テルビウムやジスプロシウムを含む金属への輸出管理を強化した。同じ措置の対象は酸化物、合金、化合物にも及ぶ。10月に追加された措置は同年11月に1年間停止したが、USGSが扱う2025年12月時点では4月の措置が残っていた。米国産材料が顧客の認定を通ったことは、供給の選択肢を増やすための必要条件になる。しかし、供給量を増やせることまではまだ証明していない。
1kg/週の試作から最大20トン設計へ
Energy Fuelsは3月時点で、既存のパイロット回路から約1kg/週のテルビウム酸化物を生産できる見込みだとしていた。単純に年換算すれば約52kgである。7月29日に着工を発表した重希土類の増設では、テルビウム酸化物の最大年産能力を約20トン、ジスプロシウム酸化物を120トンと設計した。
20トンは20,000kgであり、パイロットの週産見込みを単純年換算した値の約385倍に当たる。ただし、これはパイロットの稼働率と商用設備の最大設計能力を比べた数字で、実際の年産量の予測ではない。原料の組成と回収率が生産量を左右する。市況や許認可、設備の立ち上がりにも影響を受ける。
Tb/Dy回路の完成予定は2027年末で、試運転は市場需要などを条件として2027年第4四半期に予定する。認定はこの設備計画に先行して得られた。顧客側で材料を使えるという判断があっても、設備が設計能力どおりの量と品質を繰り返し出せるかは、別に確認が要る。
価格の高さは売上を保証しない
8月19日の発表でEnergy Fuelsは、Benchmark Mineral IntelligenceのCIF Europe指標として、テルビウム酸化物を約5,500,000ドル/トンと記載した。これは同社の発表を通じて示された市況指標であり、独立して取得したスポット価格ではない。商用生産の採算をこの数字だけで測ることは難しい。
USGSが示す2025年の99.99%以上のテルビウム酸化物の平均価格は1kg当たり1,010ドル、トン当たりでは1,010,000ドルである。二つの数値は時点、地域、取引条件が異なる。このため、5,500,000ドルという指標を2025年平均と単純に倍率比較して、価格上昇や将来の売上を算定する根拠にはできない。
それでも、価格指標が高い材料であることは、商用規模への移行で品質の再現性が重要になる理由を補強する。磁石メーカーが求める仕様を一度満たすだけでは、継続供給の判断には足りない。Energy Fuelsが開示していない歩留まりや実生産量は、認定後の事業性を判断するうえで残る空白である。
認定の後に積むべき実績
今回の認定で確認できたのは、White Mesa Mill由来のテルビウム酸化物が、少なくとも認定した顧客の商用REPM生産に使えると判断されたことだ。次は、建設中のTb/Dy回路が2027年末の完成予定に沿って動くかどうかに移る。市場需要などを条件に予定される2027年第4四半期の試運転を経て、実生産量がどこまで伸びるかを確かめる必要がある。
原料を確保し、回収率を保ち、同じ品質を繰り返し出すことも必要になる。そのうえで、認定を出したメーカーを含む顧客がどれだけ発注し、いつ商用出荷が始まるかを確かめなければならない。現時点で公表されていない販売契約や出荷実績が続報に現れるかどうかが、米国の重希土類供給を実際に補えるかを判断する材料になる。
