毎日経済は8月18日、Samsung Electronicsに28年間勤め、2016年にCXMTの創業メンバーとなった元研究員が、同月11日のソウル中央地裁で証言した内容を報じた。証言によれば、CXMTのCEOやCTOらは設立当初からSamsungのPRP(Process Recipe Plan)を取得してDRAMを開発しようとしていたという。
個人による18nm DRAM工程情報の取得・利用を扱ったこれまでの捜査と一審判決に対し、今回の供述は、CXMT経営層の設立時の意図へ踏み込んだ点に新しさがある。ただし、これは毎日経済が伝えた証言要旨であり、裁判所が信用して認定した事実ではない。CXMT法人の指示や責任も、現時点で確定していない。
争点は、工程情報を取得した個人の行為から、誰がどの目的でその情報を求めたのかへ広がる。法廷証言と判決が認定した範囲を分けて読む必要がある。
一審判決と8月の証言は別の証拠段階にある
ソウル中央地裁は2026年4月22日、2025年5月に起訴された元研究員へ、産業技術保護法違反などで懲役7年の一審判決を言い渡した。聯合ニュースによると、裁判所は流出した技術を国家核心技術と認め、被告が共謀して重要情報を取得し、外国企業に使用させた行為を認定した。一審判決であり、確定判決とはいえない。
一方、毎日経済が報じた8月11日の供述は、CXMTに研究所も設備もなかった当時、自主研究で技術を開発する考えはなかったという証人の説明を含む。経営陣がSamsungのPRP取得を前提にしていたという部分も同じく供述であって、今回の一審判決が採用した認定事実ではない。証人が有罪判決を受けた事実は供述の背景になるが、内容全体の真実性を自動的に裏付けるものでもない。
同じ人物が関わっていても、4月の一審判決は本人が被告として問われた行為についての認定であり、8月の証言は関連事件で証人として述べた内容である。4月の判決が認定した範囲と8月の供述を同じ事実認定として読むと、経営陣の指示まで一審で認定されたように見えてしまう。
証人はCXMTから契約金3億ウォンやストックオプションを含め、6年間で計29億ウォンを受け取ったと聯合ニュースは伝えている。これはSamsungを離れてCXMTの開発へ加わった経緯を示す。一方で、報酬の存在だけから経営陣の指示内容や供述の信用性までは決められない。裁判所は、本人が直接見聞きした範囲と他の証拠との整合性を別に評価することになる。
検察は2024年1月に捜査を始め、2025年12月までにCXMTの開発人材など10人を起訴したと毎日経済は伝えた。Reutersによれば、このうち5人は拘束起訴、5人は在宅起訴だった。起訴内容や個人の有罪判断を、そのままCXMTの組織的な窃取認定へ置き換えることはできない。
約600段階のPRPが持つ製造上の意味
毎日経済はPRPを、約600段階に及ぶDRAM製造工程と、使用装置、条件値を含む情報だと説明する。チップの設計図そのものというより、どの装置をどの順序と条件で動かし、歩留まりを詰めるかに関わる工程上の実行知識である。工程を立ち上げる側にとっては、試行錯誤の範囲を狭め得る。
もっとも、PRPを入手すれば別会社の工場でDRAMをそのまま量産できるわけではない。製造装置や材料が変われば、同じ順序や条件値を当てはめても同じ結果になるとは限らないためだ。
それでも、検察の説明では、CXMTは得た工程情報を自社設備に合わせて修正・検証したとされる。これは情報がそのまま量産条件になったことを示すものではない一方、検察側は、秘密情報が開発の探索範囲を狭める材料として使われたと説明している。実際にどの情報がどの工程に使われ、2023年の生産にどう結び付いたかは、裁判所が証拠をどう評価するかを待つ必要がある。
Samsungの18nm工程情報と、2023年の10nm級DRAM生産を別世代の飛躍として扱うのも正確ではない。18nmは10nm台に含まれる。製品世代の前進を工程情報だけで説明するには、量産時期、歩留まり、使用装置を結ぶ証拠が要る。
検察は、Samsungが18nm DRAM工程の開発に5年間で1兆6000億ウォンを投じたと主張している。この金額は検察側の算定であり、裁判所が損害額として確定した数字ではない。2023年の生産につながったという因果関係も検察の説明にとどまる。
CXMTの公式説明と内部者供述は食い違う
CXMTは2023年12月、第三者の機密情報が新規・現職社員から流入するのを防ぐ仕組みを持ち、知的財産を尊重するとReutersに声明を出していた。今回の証言が伝える「SamsungのPRPを取得して開発する」という経緯は、この説明と食い違う。ただし、同社の声明は今回の証言より2年8カ月前に出たもので、現在の法廷供述へ答えたものではない。
同社が2026年7月に上海証券取引所へ提出したIPO目論見書も、DRAMの設計から製造、パッケージ・テスト、モジュールまでの中核技術を長年の蓄積で保有していると説明する。機密保持制度を整備したとも記す一方、競合との技術・知財紛争や訴訟はリスクとして挙げた。目論見書の説明は、CXMTが現在持つ技術の由来を工程ごとに証明する資料ではない。逆に、一人の証言だけで同社の全製品と全研究開発をSamsung由来とみなすこともできない。
2025年12月のReuters取材では、CXMT、Samsung、SK hynixはいずれもコメントを控えた。毎日経済の記事には、8月の証言に対するCXMTのコメントは掲載されていない。判決での証拠評価に加え、同社が供述と公式説明の食い違いにどう答えるかが次の論点になる。
米国ITCへの道筋はあるが、提訴とは別だ
毎日経済は法曹界の見方として、証言が判決で採用されれば、Samsungが米国で営業秘密侵害を主張する際の資料になり得ると報じた。候補の一つは米国国際貿易委員会(USITC)のSection 337調査である。USITCの説明によると、輸入品に関する営業秘密の不正利用は同制度の対象になり得る。
Section 337で主に問題となる救済は、米税関を通じた輸入を止める排除命令であり、停止命令が出る場合もある。ただし、制度の対象になり得ることと、SamsungがCXMTを提訴済みであることは別の話だ。申立て、証拠、対象製品の輸入との結び付きなどを審理する必要があり、現時点で排除命令が近いとはいえない。
韓国の刑事裁判で証言が採用されても、米国で同じ結論が自動的に出るわけではない。Samsungが手続きを選ぶなら、秘密として管理していた情報の内容、CXMT側による取得・使用、対象DRAMや搭載製品と米国輸入の関係を示す必要がある。今回の証言が持ち得る価値は、こうした証拠の一部として経営判断と開発工程を結ぶことにある。
今回の供述は、個人の技術流出事件に経営層の意図という新しい問いを加えた。今後は、裁判所が証言をどこまで信用して経営陣の指示を事実認定するか、CXMTが公式説明との食い違いにどう答えるかを分けて確認する必要がある。毎日経済が伝えた米国ITCへの可能性も、証言の採否だけで提訴や輸入排除に進むことを意味せず、申立て、証拠、対象製品の輸入との結び付きを別途示す段階を要する。



