中国のNANDメーカーYMTCが、ビット出荷量では世界3位に上がった。Counterpoint Researchが8月12日に公開した2026年第2四半期の集計では、YMTCのシェアは14%で、SamsungSK hynixグループに続く。ただし、売上高ではYMTCは5位であり、出荷量の順位上昇が高価格帯のデータセンター向け製品まで追いついたことを意味するわけではない。

一方、工場増設計画は現在の出荷順位を支える既存能力ではない。Reutersが伝えた計画には、稼働中の工場、立ち上げ中の工場、時期未定の2工場、フル稼働時の設計値が混在する。月間ウェハー枚数はNANDのビット出力や完成SSDの台数そのものでもない。

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丸め後14%の3位、キオクシアとの差は公開値から決められない

Counterpointの公開図では、2026年第2四半期のNANDビット出荷量シェアはSamsungが25%、SK hynixが13%Solidigm9%である。SK hynixグループとしては22%となる。YMTCとキオクシアはいずれも14%と表示され、Micron13%SanDisk11%だった。

企業・グループ ビット出荷量シェア 読み方
Samsung 25% 首位
SK hynixグループ 22% SK hynix 13%とSolidigm 9%の合算
YMTC 14% Counterpointは3位と順位付けた
キオクシア 14% 公開図では丸め後の値
Micron 13% 公開図で両社に続く
SanDisk 11% 公開図で最下位

表示値が同じでも、Counterpointは両社を同順位にはしていない。YMTCがキオクシアを僅差で上回ったとして3位に置く一方、図の値は丸められている。したがって、公開値から両社の差を小数点以下まで計算したり、1ポイント未満の具体値を推定したりはできない。

首位Samsungの出荷量シェアは、同社が高利益のDRAMを優先してNANDの出力を抑えたこともあり、2024年第2四半期の32%から25%へ下がった。Solidigmのビット出荷量は前四半期比40%増で、SK hynixグループの22%を押し上げた。YMTCのビット出荷量も前年同期比22%、前四半期比5%増と、順位を押し上げる伸びを示した。

Counterpointは、YMTCが中国国内のOEMへの供給を広げ、267層3D NANDを量産していると記す。さらに、Xtackingを基盤にした300層超の技術を開発中だという。これは同社の調査に基づく製造・開発の記述であり、公式製品ページから層数や量産規模を確認できるわけではない。

なぜ出荷3位でも売上高は5位なのか

今回の3位は、NANDの「ビット出荷量」の順位である。売上高や利益の順位ではない。ウェハー投入能力や完成SSDの台数とも別の指標である。Counterpointによると、サーバー向けエンタープライズSSD(eSSD)は第2四半期にNANDビット出荷量の48%を占め、前年同期の26%から大きく伸びた。年末には50%を超えるとの見通しも示した。

AI推論では、KVキャッシュやデータセットを高速かつ大容量のストレージに保持する需要があり、eSSDがNAND需要の中心へ近づいている。Counterpointがいう48%は売上高ではなく、出荷されたビット数に占める比率である。同社はNAND市場全体の売上高が前年同期の5倍になったとも述べるが、これはYMTC単体の第2四半期売上成長率ではない。

YMTCは比較的単価の低い消費者向け製品が中心で、高価格のデータセンター向けeSSDの比率が低い。そのため、売上高ではMicron、キオクシアに続く5位となった。供給逼迫で消費者向けの平均販売価格も過去最高水準へ上がったとCounterpointはみるが、価格上昇だけでは製品構成の違いを埋められない。Counterpointが示した2026年第1四半期の売上高シェアでは、YMTCは13%だったが、これは第2四半期の14%というビット出荷量シェアと直接比べられない。分母も測っているものも違うためである。

キオクシアは出荷量の30%超をサーバー向けに振り向けているが、サーバー向け価格の上昇で顧客の購入が鈍り、出荷量の伸びはYMTCを下回ったとCounterpointは説明する。キオクシアとYMTCが公開図で同じ14%に見える背景には、シェアの接近に加え、供給先と製品構成の違いもある。だからこそ、丸め後のシェアだけを売上やデータセンターでの存在感へ置き換えることはできない。

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eSSD製品は揃ったが、出荷構成と顧客認証は見えない

YMTCはeSSDを持っていないわけではない。公式サイトでは、PE501を同社初の超大容量PCIe 5.0 QLCエンタープライズSSDとして掲載する。Xtacking 4.0のX4-6080を用い、15.36TB30.72TB61.44TB122.88TBの容量を掲げる製品だ。

PE522も、Xtacking 4.0の3D NANDを使うPCIe 5.0 TLCエンタープライズSSDである。容量は3.84TBから30.72TBまで、別の構成で3.2TBから25.6TBまでを示す。これらの製品ページは、YMTCがデータセンター向けの品ぞろえを用意していることを確認できる材料になる。

ただし、製品ページには顧客名、出荷量、認証済み顧客数がない。122.88TBという最大容量だけから、量産規模や採用数量は分からない。CounterpointはYMTCが2026年下期にeSSD比率を高め、出荷量3位を固める計画だとするが、計画は達成済みの実績ではない。

TrendForceも、AIサーバーとHDDの構造的な不足を背景にQLC eSSD需要が伸び、2026年第1四半期の主要5ブランド合計売上高が前四半期比83.7%増の389億ドル超になったと報告した。同社は主要NANDメーカーで新規能力の追加がほぼないとして、2026年を通じた供給不足を予測する。ただし、TrendForceとCounterpointでは対象企業と集計が異なるため、この市場規模をCounterpointのシェアと混ぜて比較することはできない。

月50万枚というフル稼働時の設計上限と現在のNAND出力

Reutersは4月、YMTCの既存2工場の能力が合計で月20万枚だと伝えた。同社は建設中の1工場に加え、さらに2工場を計画しており、関係者3人は3つの新工場がフル稼働時にそれぞれ月10万枚の設計能力を持つと説明した。既存分と足せば、全体の設計上限は月50万枚になる。

ただし、この月50万枚には現在稼働していない設備まで含まれる。Reutersによると、武漢の第3工場は建物が完成して設備を導入中で、2026年末に稼働を始め、2027年に月5万枚へ達する見通しである。設備の50%超を中国企業から調達したとも、関係者は説明した。

残る2工場は、場所も稼働時期も確認されていない。3つの新工場はいずれも能力の一部をDRAMへ配分する可能性があり、その比率はDRAM開発の進捗次第だという。層数、ビット/セル、ダイ面積、歩留まりも実際のNANDビット出力を変えるため、月50万枚を現在のNAND能力やSamsungと同水準の出力とは書けない。

この増設計画はYMTCが発表したものではない。Reutersが関係者から得た情報であり、第3工場の立ち上げ見通しと、時期が未確認の2工場を同じ進捗として扱うことはできない。設計能力は投資規模を見積もる手掛かりにはなるが、出荷量シェアの裏付けや将来のNAND生産量を保証する数字ではない。

設備調達には米国の輸出規制がかかる。米商務省産業安全保障局(BIS)は2022年10月、中国にある中国企業所有の工場で128層以上のNANDを開発・生産するための対象品目にライセンス要件を課し、審査は原則不許可とした。同年12月にはYMTCをEntity Listに追加し、EAR対象の物品、ソフトウェア、技術へのアクセスを厳しく制限している。

YMTCの3位は、まずビット出荷量に限った到達点である。売上高の順位を動かすには、2026年下期に計画するeSSD比率の上昇が実績へ移り、顧客認証と出荷構成に表れる必要がある。第3工場が2027年に月5万枚へ立ち上がるか、さらにその能力をどれだけNANDへ配分し、量産を安定させられるかが、次の数字を左右する。