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Fortnite iOS版、全世界で再びプレイ不可か?AppleとEpic、泥沼の対立再燃

Y Kobayashi

2025年5月17日

人気バトルロイヤルゲーム『Fortnite』が、再びiPhoneやiPadといったiOSデバイスから姿を消す可能性が浮上している。開発元のEpic Gamesは2025年5月16日、Appleが「Fortnite」のApp Storeへの再提出をブロックしたと発表。これにより、米国だけでなく、欧州連合(EU)域内で提供されていたiOS版も利用できなくなり、「全世界でオフライン」状態に陥ったと主張している。これに対しAppleは、Epic側の説明を否定しており、両社の主張は真っ向から対立。長年にわたる両社の法廷闘争とビジネスモデルを巡る根深い対立が、新たな局面を迎えている。

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Epic Gamesの衝撃発表:「Fortnite、iOSで全世界オフライン」

「Appleが我々のFortniteの提出をブロックしたため、米国のApp Storeにも、EUのiOS向けEpic Games Storeにもリリースできません。悲しいことに、Appleがブロックを解除するまで、iOS版『Fortnite』は全世界でオフラインとなるでしょう」と、『Fortnite』の公式Xアカウントは声明を発信している

Epic Gamesは、最近の米国における裁判所の判決を受け、『Fortnite』を米国のApp Storeに再提出していた。この判決は、Appleが開発者に対して、自社のアプリ内課金システム以外の支払い方法へユーザーを誘導する外部リンクを設置することを不当に制限していたとし、これを禁じるものだった。Epic Gamesにとって、これは長年の悲願であったAppleの課金システム(通称「Apple税」とも呼ばれる30%の手数料)を回避できる道が開かれたかに見えた。

しかし、AppleはEpicの最新の提出を承認しなかった。さらにEpicの主張によれば、この影響はEU市場にも波及。EUでは昨年、デジタル市場法(DMA)が施行され、Appleはサードパーティのアプリストアやアプリのサイドローディングを容認せざるを得なくなった。これにより、Epic Gamesは自身の「Epic Games Store」を通じてEUのiOSユーザーに『Fortnite』を提供していたのだが、今回のAppleの措置により、それも不可能になったというのだ。

Epic GamesのCEOであるTim Sweeney氏は、『Fortnite』は週次のコンテンツアップデートが必要であり、全てのプラットフォームで同時にアップデートを配信する必要があると説明している。 もし米国のApp Storeでのアップデートがブロックされれば、EUを含む他の地域でのiOS版の提供にも支障が出る、というのがEpic側のロジックのようだ。

Appleの反論:「我々はブロックしていない。問題は米国のストアフロントだ」

一方のAppleは、Epic Gamesの主張を明確に否定している。Appleの広報担当者は複数のメディアに対し、「我々は、Epic Swedenに対し、他の地域における『Fortnite』に影響が及ばないよう、米国のApp Storeのストアフロントを含めずにアプリのアップデートを再提出するよう要請した。我々は、EUの代替配信マーケットプレイスで提供されている『Fortnite』の現行バージョンを削除するような措置は一切講じていない」とコメントした。

つまりAppleの言い分はこうだ。EUでの配信停止はAppleのせいではなく、Epicが欧州のApp Store向けの提出物の中に、Appleが問題視する何か(おそらくは米国内での外部リンクや代替決済に関する記述や機能)を含めたままアップデートしようとしたため、その「米国向け」の部分を修正するよう求めたに過ぎない、ということらしい。そして、Epicがその修正に応じない限り、あるいはその修正を行っている間は、結果的にEU版を含めたiOS版全体のアップデートや提供が滞っている、という構図が浮かび上がってくる。

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なぜここまでこじれる?根深い対立の歴史

この問題の根は深い。両社の対立が表面化したのは2020年。Epic Gamesが『Fortnite』のiOSアプリ内で、Appleのアプリ内課金システムを迂回し、ユーザーがEpicに直接支払いできる独自の決済オプションを導入したことが発端だった。 AppleはこれをApp Storeの規約違反として、『Fortnite』をApp Storeから削除。Epicは即座にAppleを反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴し、法廷闘争が始まった。

2021年の地裁判決では、主要な争点のほとんどでAppleが勝訴したものの、Appleが開発者に対してユーザーを外部の支払い方法に誘導することを禁じる「反ステアリング条項」については、カリフォルニア州法違反であると認定された。 そして2025年4月、担当のYvonne Gonzalez Rogers判事は、Appleがこの差止命令の意図を骨抜きにし、依然として反競争的な行為を続けていると厳しく指摘。Appleに対し、開発者がアプリ内から手数料なしで外部の購入オプションへリンクできるようにすることを明確に命じた。 Appleはこの最新の判断に対しても控訴している。

Epic Gamesはこの判事の判断を追い風と捉え、 『Fortnite』の米国App Storeへの復帰を試みた。Tim Sweeney氏は、Appleがこの裁判所の枠組みを全世界で適用するならば、現在および将来の訴訟を取り下げるという和解案まで提示していたとされる。 しかし、Appleの今回の対応は、その和解案に対する厳しい返答とも受け取れる。

EUにおいては、デジタル市場法(DMA)という強力な規制がAppleに風穴を開けた。これにより、Epic Gamesは2024年からEU域内で自身のゲームストアを通じて『Fortnite』をiOSユーザーに提供し始めていた。 しかし、今回の騒動で、DMAをもってしても巨大プラットフォーマーの壁は厚いという現実が改めて露呈した形だ。

開発者コミュニティへの影響と今後の展望

この一件は、単に人気ゲームがプレイできなくなるかもしれないという話に留まらない。決済インフラストラクチャーのスタートアップPrimerのCEO、Gabriel Le Roux氏はCNBCに対し、「開発者は、収益化、ユーザーエンゲージメント、そしてスケーリングの方法を制限する厳格なエコシステムに閉じ込められている」と指摘。「特にゲーム会社にとっては、経済状況は過酷だ。彼らはしばしば薄い利益率で運営しており、高い顧客獲得コストとユーザーを再エンゲージする必要性に常に迫られている。アプリ内取引ごとに15~30%を失うことは、収益性を完全に損なう可能性がある」と語っている。

AppleとEpic Gamesの対立は、アプリ市場の公正性、プラットフォーマーの市場支配力、そしてイノベーションのあり方といった、より大きなテーマを内包している。Appleが主張するように、App Storeのセキュリティや品質管理、そしてエコシステム全体への投資に対する対価として手数料が必要だという理屈も理解できる。しかし、その手数料率や運用方法が、開発者の自由な経済活動やユーザーの選択肢を不当に狭めているのではないかというEpic側の問題提起も、多くの開発者や規制当局の共感を呼んでいる。

Tim Sweeney氏は、Appleのアプリ審査プロセスが経営陣によって「武器化」されているとまで非難しており、両社の溝は深まるばかりだ。

今回の『Fortnite』配信停止騒動がどのような形で収束するのか、現時点では見通せない。AppleがEpicの要求(あるいは裁判所の命令)を受け入れるのか、EpicがAppleの要求する修正に応じるのか、あるいは再び法廷での争いに発展するのか。確かなことは、この一件が、今後のアプリ市場のルール形成や、巨大IT企業とコンテンツプロバイダーの関係性に大きな影響を与えるであろうということだ。ユーザーとしては、一日も早く、公正な競争環境のもとで多様なコンテンツを楽しめる日が来ることを願うばかりである。


Sources

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