GMとSamsung SDIが2024年に共同で計画した米インディアナ州ニューカーライルの電池工場は、EV向けセルを共同生産する計画から、まずESS用電池を生産する計画へ変わった。Samsung SDIは8月11日、合弁会社SynergyCellsでGMが持っていた49.99%の持分を取得し、同工場を北米で初めて独自運営する生産拠点にすると発表した。

工場はなお建設中である。完成後の初期用途はGM向けEV電池ではなく、エネルギー貯蔵システム(ESS)用電池となる。Samsung SDIは市場環境の変化と、想定より伸び悩むEV需要を理由に挙げた。

一方、GMとSamsung SDIの関係そのものが終わるわけではない。両社は次世代角形電池の開発で協力を続け、その電池を将来、ニューカーライルで生産する可能性も検討するという。所有権の移転と、EV電池の開発協力は切り分けて見る必要がある。

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49.99%の売却で、工場の初期用途が変わる

今回の発表で確定したのは、Samsung SDIがSynergyCellsを単独で運営することと、完成後の工場をまずESS電池に充てる方針だ。GMと共同でEVセルを生産する計画から、Samsung SDIが単独所有する工場で定置用電池を先に生産する計画へ移る。

EVとESSは、同じリチウムイオン電池でも設備に求める条件が同じではない。車載電池では航続距離や重量が製品価値を左右するのに対し、定置用ではサイクル寿命、安全性、コスト、据え置きでの運用条件が製品設計に強く影響する。Samsung SDIはニューカーライルで使う化学系や生産ラインの構成を公表していないため、既存のEV計画をそのままESS生産へ読み替えることはできない。

また、将来の共同開発セルについても、生産先は確定していない。Samsung SDIの発表は、共同開発した角形電池をニューカーライルに含める可能性に言及したものであり、同工場でのEVセル生産を約束したものではない。

持ち分を手放したGMにとっても、これは電池事業からの撤退を意味しない。今回動いたのは、特定の共同工場の所有と、完成前の設備をどの需要に先に割り当てるかという判断である。

27GWhを前提にした2024年計画は、そのままではない

2024年8月に確定した合弁計画では、投資額は約35億ドル、初期の年間生産能力は27GWh、拡張後は36GWhを見込んでいた。680エーカーの敷地に工場を建設し、2027年の量産開始と1,600人超の雇用を掲げた計画である。

当時の製品は、GMの今後のEV向けに供給する高ニッケルNCA系の角形セルだった。したがって、27GWhという数字も、36GWhへの拡張も、車載需要を起点にした当初計画の能力である。2026年8月の発表は初期用途をESSへ変えたが、改定後の生産能力を示していない。

完成時期も同様だ。Samsung SDIは工場が建設中だと述べた一方、2027年という従来の量産目標を維持するのか、ESS向けの設備立ち上げにどの程度の変更が要るのかを明らかにしていない。取得価格、雇用の開始時期、ESSの契約先も開示されていない。初期用途の変更は、完成時の能力を確定したことを意味しない。

この未開示部分は、事業の採算や稼働率を判断するうえで大きい。約35億ドルの当初投資額と27GWhの能力計画は背景を示すが、新しいESS計画の完成時の規模を表す数字ではない。

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AIデータセンター需要にESSでつなぐ

Samsung SDIがESSを初期用途に選ぶ背景には、同社が2026年第2四半期に示した米国市場の需給がある。同社は米国のEV市場が軟調な一方、電力系統向けESS、無停電電源装置(UPS)、バッテリー・バックアップ・ユニット(BBU)では、AIデータセンターに結び付く需要が上期の回復を支えたと説明した。

再生可能エネルギーの導入が広がるほど、発電量の変動を受け止める蓄電設備の役割は増す。AIデータセンターでは電力供給の安定性も課題となり、UPSやBBUの需要が生まれる。Samsung SDIにとっては、EV向けを前提に建設していた物理的な資産を、定置用の需要へ振り向ける選択肢ができる。

同社は米国で角形リン酸鉄リチウム(LFP)電池の量産準備と、現地サプライチェーンの強化も進める方針を示している。ただし、この方針だけからニューカーライルのESS電池をLFPと断定することはできない。工場向けの化学系、ライン数、顧客は今回の発表に含まれていない。

米国ではEV購入者向けの新車クリーン車両税額控除(30D)が、2025年9月30日以降に取得した車両には認められない。これは消費者側の制度変更だが、Samsung SDIは取引の理由として、より広い市場環境の変化とEV需要の鈍化を挙げている。30Dの終了だけを今回の持ち分売却の原因とみなすのは早計である。

GMが残すLG Energy Solution・ESSの選択肢

GMは別の経路で車載電池と定置用電池の開発を進めている。GMとLG Energy Solutionは、リチウム・マンガン・リッチ(LMR)角形セルを米国で2028年に商用生産する計画を発表済みだ。GMはLMRについて、LFPと同等のコストで33%高いエネルギー密度を見込むとしているが、これはGMの見積もりであり、Samsung SDIのニューカーライル工場の仕様ではない。

定置用でも、GMの選択肢は一つではない。GMは2026年6月、Ultium CellsがLG Energy Solutionの商用蓄電事業向けにLFP電池を生産すると説明し、Peak Energyと定置用のナトリウムイオン電池も開発しているとした。車載向けのLMR、蓄電向けのLFPとナトリウムイオン、Samsung SDIとの次世代角形セル開発は、それぞれ時期と用途が異なる。

このため、SynergyCellsの持ち分売却をGMが電池技術やESSから離れる動きとまとめるのは正確ではない。GMは建設中の共同工場の所有権をSamsung SDIへ譲る一方、複数の電池化学系と用途で開発・生産の道筋を残している。

Samsung SDIとの共同開発がどの化学系を対象にするか、いつ実用化へ進むかは示されていない。ニューカーライルでの生産に結び付くかどうかも、今後の協議と設備計画にかかる。

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稼働時に確認するニューカーライルの条件

ニューカーライルの価値は、持ち分の移転が完了した時点では測れない。Samsung SDIが提示したのは、単独運営とESSを初期用途にする方向であって、工場がすでに稼働しているという発表ではない。取得の法的な完了日や条件も公表されていない。

米国生産には、対象となる電池部品を国内で生産・販売する場合に先進製造生産税額控除(45X)が関係し得る。もっとも、米国内生産であれば一律に受けられる支援ではなく、対象部品や要件、48Cとの関係を満たす必要がある。税制上の効果を、現時点で工場の収益性へそのまま重ねることはできない。

計画の進み具合を判断できるのは、完成日、改定後のGWh能力、ESSセルの化学系とライン構成、顧客契約が示されたときだ。共同開発する次世代角形セルが量産計画へ進むのかも、持分の移転後にGMとSamsung SDIの協力が実装へ進むかを測る条件になる。