Googleは2026年11月4日、マレーシアにおけるデータセンターの拡張や電力・水資源の確保、人材育成などに、2027〜2028年の2年間で150億ドルを投資すると発表した。2024年に公表した投資計画を拡大するもので、すでに稼働している施設に加え、新たなデータセンターキャンパスの建設も計画している。

今回の計画では、データセンターの拡張と並行して、電力と水の供給設備を増強することも打ち出された。国の送電網に加える1GW超のクリーンエネルギー発電能力と、日量6500万リットルの水道供給能力がその柱となる。ただし、どちらも地域向けの供給能力を表した数字であり、Googleのデータセンター自体が消費する電力や水の量ではない。投資による地域への影響を評価するには、設備の供給能力と実際の消費量を区別する必要がある。

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150億ドルの投資でデータセンターを拡張、雇用と人材育成も推進

Googleによると、セランゴール州のElmina Business Parkにある同社初のデータセンターはすでに稼働している。一方、セランゴール州とヌグリ・スンビラン州に設ける新たなキャンパスは、現在も計画段階にある。また、マレーシア国内のGoogle Cloudリージョンは今後開設する予定であり、既存データセンターの稼働とクラウドサービスの提供開始は区別して考える必要がある。

今回発表された150億ドルは2027〜2028年に予定する投資額であり、新キャンパスの完成期限を示したものではない。投資対象にはデータセンターだけでなく、電力・水資源の確保や人材育成なども含まれるが、分野ごとの内訳は公表されていない。中国メディアのIT之家も、投資額と実施期間について報じている。

経済効果について、Googleは建設期間に当たる2027〜2028年に、マレーシアの国内総生産(GDP)へ年平均11億ドルの寄与があると試算している。また、建設期間中には年間3万7000人超の現地雇用を支え、そのうち約6000人が建設分野になると見込む。年間の労働所得は平均3億7800万ドルに上る見通しだ。

施設の運用段階では、年間9000人超の現地雇用を支え、その平均賃金は全国中央値を45%上回ると予測している。ただし、これらの雇用数には取引先企業や周辺の小売店、飲食店などで生まれる仕事も含まれる。Googleが直接雇用する人数を示したものではなく、いずれも同社による経済効果の推計である。

人材育成では、新たに4つのプログラムを展開し、2027〜2031年の5年間で約80万人の技能向上を目指す。対象には教育関係者、若者、零細企業、公務員、職業訓練を受ける求職者などが含まれており、全員がデータセンターへの就業を目指すわけではない。さらに、セランゴール州とヌグリ・スンビラン州の一部の高等職業教育機関では、10週間のカリキュラムと実機を模したシミュレーターを活用する研修を2027年から始める計画だ。

1GW超の発電能力と日量6500万リットルの水道設備を整備

AlphabetとGoogleの社長兼最高投資責任者を務めるRuth Poratは、今回の発表で、事業拡大に合わせて地域の電力と水資源も増やす方針を強調した。電力分野では、マレーシアの送電網に1GW超の新たなクリーンエネルギー発電能力を追加する計画を示している。

Googleはマレーシアの電力会社Tenaga Nasional Berhad(TNB)と協力し、企業向け再生可能エネルギー供給制度を通じて新たな発電設備の整備を支援する。また、電力料金と送電網への接続に必要な直接インフラ費用を全額負担すると説明している。ただし、これは電力供給に伴う費用負担についての方針であり、データセンターの使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを意味しない。太陽光発電などの出力変動に対応するため、24時間を通じてクリーン電力を確保する取り組みについても検討を進めている。

水資源については、Googleが11月2日、ヌグリ・スンビラン州の共用水道設備に1億6000万ドルを拠出すると発表した。この投資額はIT之家も報じている。計画では、州政府および州水道事業者SAINSと協力し、建設大手Gamudaが河道外の貯水池と浄水場を整備する。完成後の設備は州政府傘下のMBINSが所有する予定だ。

新設備は、ポートディクソンのSpringhill Industrial Parkに計画するGoogleのデータセンターキャンパスだけでなく、州の公共用水にも水を供給する。Linggi川の水量が豊富な時期に余剰河川水や雨水を貯水池に蓄え、浄水場で処理する仕組みだ。少雨期には蓄えた水を利用することで、河川の自然な流れへの影響を抑えることを目指している。ただし、こうした環境面の効果は計画上の目標であり、設備の完成後に実証されたものではない。

今回公表された電力・水資源に関する主要な数値を整理すると、次のようになる。

項目 計画されている設備・能力 供給先・所有者 現在の状況 公表値だけでは分からないこと
1GW超の追加発電能力 新たなクリーンエネルギー発電設備 マレーシアの送電網に追加。設備の所有者は未公表 11月4日に発表された計画 Google各施設の電力消費量、時間帯ごとの需要と供給の一致
日量6500万リットルの水道供給能力 貯水池と浄水場による飲用可能な水の供給設備 州の公共用水とGoogleの計画キャンパスで共用。完成後はMBINSが所有 11月2日に発表された計画。供給開始日は未公表 Google向けの供給量、実際の冷却用水の消費量

重要なのは、1GW超という数字が発電設備の追加能力を表し、日量6500万リットルが共用水道設備の供給能力を表している点だ。いずれもGoogleのデータセンター専用の供給量や消費量ではない。また、発電設備の能力から時間帯ごとの電力供給量を直接求めたり、水道の供給能力から地域で実際に利用できる水の純増分を算出したりすることもできない。地域への影響を判断するには、設備完成後の供給実績とデータセンターの消費量を照合する必要がある。

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水冷方式を採用、熱帯環境でもPUE 1.12〜1.14を目指す

Googleは新たなデータセンターに水冷方式を採用する方針を示している。同社によると、環境・水文分野の専門家による評価では、建設予定地周辺の流域は水不足や枯渇のリスクが高い地域には該当しないと判断された。また、水冷方式は空冷方式と比べて約10%の省エネルギーにつながる可能性があると説明している。ただし、水冷による電力消費の削減は、水の使用量が少ないことや、水資源への影響がないことを意味しない。

Googleはデータセンター向けの供給設備とは別に、地域の水環境を改善する取り組みも計画している。2つの河川流域では、人工湿地や護岸の整備、汚染状況の監視を進める。また、セランゴール州の4校には、雨水収集設備と容量2万リットルの貯水タンクを設置する方針だ。

電力効率については、マレーシアのような熱帯環境でも、電力使用効率(PUE)を1.12〜1.14に抑えて運用できるとGoogleは説明している。PUEは、データセンター全体の電力消費量をIT機器の電力消費量で割った指標で、1に近いほど冷却や電力供給設備などによる追加的な電力消費が少ないことを意味する。ただし、今回示された数値はGoogleの説明に基づくものであり、マレーシアの各新拠点について独立した測定で確認された実績ではない。

PUEが低い施設は電力を効率的に利用していると評価できるが、それだけで総電力消費量が少ないとは限らない。IT機器の規模や稼働率が大きければ、効率が高くても大量の電力を消費する可能性がある。また、PUEから水の使用量を推定することもできない。今回の公式発表では、新キャンパスごとの電力・水使用量や、時間帯別のクリーン電力供給実績は明らかにされていない。

Googleは、各施設が完全に稼働した後、四半期ごとのPUEを公表する予定だ。しかし、地域への環境負荷を評価するには、電力効率だけでなく、施設の実際の電力・水消費量、共用設備からの供給実績、時間帯ごとの電力需給を確認する必要がある。150億ドルという大規模投資が、データセンターの拡張と地域の資源確保をどこまで両立できるかは、設備完成後に公表される運用データが判断材料となる。