Googleは、自社製AIアクセラレータ「TPU」の配分で、最先端のAGI(汎用人工知能)開発を最優先する。Sundar Pichai CEOが7月22日の2026年第2四半期決算説明会で明らかにした。同じ四半期には、顧客のデータセンターへTPUシステムを初めて納入し、売上の計上も始めている。Googleは社内利用と外販を同時に進める。AGI研究と自社サービスに必要な容量を先に押さえる一方、顧客側の設備や外部資本も使う供給経路を開いた。
AGI開発を起点にした計算資源の順番
Pichai氏はTPUの配分について、「第1優先は、AGI開発の最先端で競争するために必要な量を割り当てることだ」と説明した。さらに計算資源全体の配分を問われると、最先端のAGI開発に必要な量を基準にすると重ねて答えた。AlphabetはAGI向けのTPU台数や社内外の配分比率を開示していない。それでも、モデル開発の計算需要をほかの事業より先に見積もる方針は明確である。
残る容量では、SearchやYouTubeと並んでGoogle Cloudを優先する。Cloud内でも、Vertex AIとGemini Enterpriseで自社モデルを提供する計算資源に加え、データ分析やサイバーセキュリティなど中核サービスへ割り当てるという。多くのCloud顧客へGoogleのモデルを提供する際には、TPUとNVIDIA製GPUの両方を使う。自社製チップだけで需要を満たす運用ではない。
この順番は、GoogleがTPUの外販を止めるという意味ではない。外部の顧客がインフラそのものを求める場合は、顧客のデータセンターへTPUを設置する。Googleが保有するデータセンターの容量を外販へ振り向ける前に、設置場所を顧客側へ広げるわけだ。
学習用8tと推論用8iで処理を分ける
Googleが2026年4月に発表した第8世代TPUは、学習向けの「TPU 8t」と、推論・強化学習向けの「TPU 8i」に分かれる。8tは1つのSuperpodに9,600チップを収め、121 exaflopsの演算性能と2PBの共有メモリを備える。複数拠点をまたげば、100万基超のTPUを1つの学習クラスタとして接続できる設計だ。
一方、8iは推論時に使うKVキャッシュをチップ上へ載せやすくし、前世代より80%高い推論性能/ドルを掲げる。AGIの最先端モデルを作る学習処理と、SearchやGemini Enterpriseで回答を返す推論処理では、適したシステムが異なる。このため、社内研究と顧客向けサービスが常に同じ型番のTPUを取り合うわけではない。
ただし、学習用と推論用にチップを分けても、Alphabetが示した供給制約そのものは残る。第2四半期の技術インフラ投資は約60%がサーバー、約40%がデータセンターとネットワーク機器に向かった。Alphabetは何が最大のボトルネックかを開示していないが、投資先はチップを収めるサーバーと、そのサーバーを動かす設備の両方に広がっている。
外販は顧客側のデータセンターへ
Alphabetは第1四半期の時点で、選定した顧客のデータセンターへTPUを届ける計画を示していた。第2四半期には初回納入を終え、TPUシステム販売の売上を初めて計上した。計画が実際の出荷へ移った。ただし、2026年に売上となるのは既存契約の比較的小さな部分で、大半は2027年に計上する見通しである。
TPU販売契約はGoogle Cloudの受注残にも入る。受注残は前四半期から500億ドル超増え、5,140億ドルに達した。大半は通常のGCP契約であり、TPUが占める金額は非開示だ。第2四半期のCloud売上高は247億6,800万ドルで前年同期比82%増、営業利益は88億1,400万ドル、営業利益率は35.6%だった。Alphabetによると、TPU販売の影響を除いてもCloudの成長は大きく加速した。
外部資本を使う供給経路も動き始めている。GoogleとBlackstoneは5月、TPUクラウドを運営する合弁事業を発表した。Blackstoneが50億ドルを当初出資し、2027年に500MWの容量稼働を見込む。GoogleはTPU、ソフトウェア、サービスを供給する。顧客設備への直接販売と合わせ、Google自身がデータセンター投資をすべて負担せずにTPUの設置先を増やせる。
1,950億〜2,050億ドルと短期調達の代償
Alphabetは2026年の設備投資見通しを従来の1,800億〜1,900億ドルから、1,950億〜2,050億ドルへ引き上げた。第2四半期だけでも設備投資は449億2,400万ドルに達し、390億6,900万ドルの営業キャッシュフローを上回った。フリーキャッシュフローはマイナス58億5,500万ドルとなった。容量を増やすペースが、足元の現金創出を上回っている。
それでも社内設備の完成は需要に追いつかない。Alphabetは第3四半期に、外部事業者から調達する計算容量を橋渡しとして増やす。その費用により、短期的にGoogle Cloudの利益率が下がる見込みだ。Pichai氏は、数カ月の高い費用を先に負担しても、複数年の大型顧客契約では高い投資収益を得られると説明した。
GoogleのTPU戦略は、AGI開発を守りながら外販を増やすため、計算資源の置き場所まで組み替える段階に入った。2027年には既存のTPU販売契約の大半が売上に変わる見通しだ。次の決算では、その計上額と、外部容量によるCloud利益率への圧力を別々に確かめる必要がある。



