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Intel、Microsoftと18Aプロセスで歴史的契約か? 巨額投資と新CEO体制でTSMC追撃へ

Y Kobayashi

2025年5月9日

Intelが、長年のライバルであるTSMCの牙城を崩すべく、ついに勝負手を打ったようだ。韓国メディアChosun Bizが報じたところによると、IntelはMicrosoftとの間で、最先端の1.8ナノメートル(nm)プロセス「Intel 18A」を用いた大規模なファウンドリ(半導体受託製造)契約を締結したという。この動きは、ここ数年停滞していたIntelのファウンドリ事業にとって、業界勢力図を塗り替える号砲となるかもしれない。

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「1.8nm」の実力と野心的なロードマップ:Intel 18Aプロセスの全貌

今回注目される「Intel 18A」プロセスは、2nm級に分類されるIntelの最先端製造技術だ。Intel関係者によれば、18Aは現在リスク生産段階にあり、今年後半にも安定的な量産体制に入る見込みだという。さらに、Intelのグローバル最高執行責任者(COO)であるNaga Chandrasekaran氏は、先月開催された「Intel Foundry Direct Connect 2025」イベントで、「18Aは米国で開発されたノードの中で最も先進的な技術であり、大量生産で拡大する技術への最初のゲートウェイだ」と強調。「現在、大きな進歩を遂げており、今年後半末までにこのノードを通じて量産を開始し、顧客にサービスを提供できると確信している」と述べている。Intel 18AはTSMCのN2プロセスに匹敵するSRAM密度と性能/効率を持つと報告されており、Intel 3ノードからの世代的な飛躍は大きそうだ。

Intelの野心は18Aに留まらない。すでに性能を強化した派生ノード「Intel 18A-P」の初期ウェハーが工場に投入されており、2026年の展開が予定されている。さらに、2028年には「18A-PT」の投入も計画されているという。これに加えて、次世代の「14A」ノードに関しても、初期のPDK(プロセスデザインキット)を一部の主要パートナーと共有し始めていることも明らかになっており、18A以降の継続的な微細化への道筋を示している。

Intelが進める巨額投資と米国内生産強化の狙い

長らくファウンドリ市場の盟主として君臨してきたTSMCに対し、Intelは「IDM 2.0」戦略を掲げ、大規模な投資と生産能力の増強で猛追を図っている。特に、米国内での生産体制強化は、昨今の地政学リスクや関税問題を考慮する上で大きな意味を持つ。

Intelは、アリゾナ州に320億ドル以上を投じて2つの最新鋭工場を建設中であるほか、ニューメキシコ州では40億ドルを投じて先端パッケージングラインを拡張している。オレゴン州でも新たな300mmロジックおよびファウンドリ工場の建設を進めており、オハイオ州では280億ドルを投じた2つの新工場建設計画が進行中だ。ただし、オハイオの工場についてはスケジュールの遅れから、稼働開始は2030年から2032年頃になると予測されている。

海外拠点でも動きは活発だ。アイルランドのFab 34ではIntel 4プロセスの量産を開始し、今年中には3ナノチップの製造も開始予定。イスラエルのFab 38では、EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置を用いた高性能チップの生産を計画している。さらに、マレーシアのペナンには先端パッケージング工場も有しており、グローバルな供給体制を構築しつつある。

これらの積極的な投資と米国内を中心とした生産拠点拡充は、Trum政権第二期における半導体関税が主要企業のリスク要因として浮上する中で、TSMCやSamsung Electronicsと比較して多様な供給網を持つIntelにとって、地政学的な優位性をもたらすと期待されている。特に、ファウンドリ企業の中で最も多くの米国工場を持つことは、関税圧力からの回避に繋がる可能性がある。

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新CEO、Lip-Bu Tan氏の手腕に集まる期待 – IDM 2.0からの転換も?

今回のMicrosoftとの契約報道において、もう一つ注目すべきはIntelのリーダーシップの変化だ。新CEOであるLip-Bu Tan氏の存在が、Intelファウンドリ事業の潮目を変えるのではと期待されている。

Tan氏は、半導体設計自動化(EDA)、パッケージング、ファウンドリの各分野に深い理解と戦略を持つ人物として評価されており、前CEOのPat Gelsinger氏(プロセス専門家)とは異なるアプローチでIntelを率いることが期待されている。ある業界関係者はChosun Bizに対し、「Intel取締役会がプロセス専門家である前CEOのPat Gelsinger氏の代わりにLip-Bu Tan CEOを抜擢したのは、Intelのファウンドリ事業に大規模な受注の道を開くためだ」と語っており、今後数ヶ月がIntelの方向性を決定づける重要な時期になるとの見方を示している。

Tan氏のリーダーシップの下で、従来の「IDM 2.0」戦略から転換し、半導体設計自動化(EDA)、パッケージング、ファウンドリに重点を置くことで、CPUなどのコンシューマー向けビジネスでも勢いを取り戻す可能性があるかも知れない。

Google、NVIDIAも続くか? Intelファウンドリ復活への狼煙

Microsoftとの大型契約は、Intelにとって大きな弾みとなることは間違いない。そして、この動きは他の大手テック企業にも波及する可能性がある。報道によると、IntelはGoogleやNVIDIAとも18Aプロセスに関する協議を進めているという。

特に、TSMCの生産ラインが現在逼迫しており、他の企業が代替案を模索せざるを得ない状況も、Intelにとって追い風になっているようだ。Samsung Foundryも競争に加わってはいるものの、現時点ではIntelがTSMCの2nmノードの対抗馬として強力なポジションを築きつつある。

今回のMicrosoftとの契約が正式に発表されれば、それはIntelファウンドリ事業の本格的な復活、そして半導体業界における新たな競争時代の幕開けを告げる狼煙となるだろう。Intelが長年の悲願であるファウンドリ市場での覇権奪還に向け、どのような一手を見せてくれるのだろうか?


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