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Intel、次世代14Aプロセスで採用の「Turbo Cells」技術を発表-CPU最大周波数とGPU性能を革新的に向上

Y Kobayashi

2025年5月1日

Intel社はサンノゼで開催されたFoundry Direct Connectイベントにおいて、2027年にリスク生産を開始予定の次世代プロセス「14A」向け技術「Turbo Cells」を公表した。「Turbo Cells」は、CPUの最大動作周波数やGPUの演算性能を制約するクリティカルパスの高速化を目的とし、性能・消費電力・半導体チップの面積(PPA:Power, Performance, Area)の最適バランスを実現するための設計支援ライブラリである。

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設計の自由度を広げる特殊セルライブラリ

「Turbo Cells」の中核を成すのは、性能重視のセルと電力効率重視のセルを同一設計ブロック内で自在に組み合わせられる特殊な標準セルライブラリである。これにより、設計者はアプリケーションの要求に応じて、高速動作が求められる領域には高性能セルを、低消費電力を重視すべき領域には高効率セルを配備し、PPAを調整しやすくなる。

Tom’s Hardware誌が伝えるところによれば、14Aプロセスでは特性の異なる複数のセルライブラリが提供される見込みだ。たとえば、高い動作周波数を追求するがセル密度は比較的低い「トール(tall)」、性能と効率のバランスを最適化した「ミッドサイズ(mid-size)」、「ショート(short)」と呼ばれる高密度セル群などである。中でも「ショート」ライブラリをダブルハイト(二段重ね)構成で用いる際に、トランジスタ駆動電流を増強する形でTurbo Cellsが機能を発揮する。

イベントでは、NMOSとPMOSのナノシート(リボン)幅を変形・結合する各種オプションが図示され、特定箇所に最適な駆動電流を選択的に供給できるツールキットとしての有用性が示された。このように、単なる高速セルの追加ではなく、設計全体への柔軟性を高めつつ、限られた面積と消費電力枠内で重点領域の性能を効率的に引き上げる仕組みと言える。

クリティカルパス高速化へのアプローチ

プロセッサの動作周波数は、チップ内信号経路のうち最も遅延が大きい「クリティカルパス」によって制限を受ける。従来は、これを短縮するために高速・高リーク電流型トランジスタを配置したり、回路構成を見直したりしてきた。しかし、こうした手法は往々にしてセル密度の低下や消費電力増大といったトレードオフを伴った。

Turbo Cellsは、クリティカルパスとなる箇所に性能セルと効率セルを巧みに組み合わせることで、遅延を低減しつつ、電力ペナルティを最小限に抑える設計支援機能を提供する。Intel社はこの技術により、「CPUの最高動作周波数およびGPUのクリティカルパスに起因する性能限界をさらに押し上げる」ことを目指している。

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14Aプロセスノードと開発ロードマップ

Turbo Cellsは、14Aプロセスおよびその派生版「14A-E」で導入される予定だ。14Aノードは、今年後半に量産開始予定の18Aプロセスの後を受け、2027年にリスク生産を開始する計画となっている。Intel社によれば、14Aは18Aと比べて15~20%の性能/ワット向上を実現し、同等性能時には25~35%の消費電力削減に相当するとされる。

この性能改善には、第2世代のゲート・オール・アラウンド構造(RibbonFET)や、PowerVia後継の裏面電力供給ネットワーク「PowerDirect」、さらにはHigh-NA EUVリソグラフィ技術の活用、そして18A比で1.3倍のトランジスタ密度向上が寄与する。既に14A向けPDK(プロセスデザインキット)は顧客に提供済みであり、複数のパートナーがテストチップ製造を準備中である。

なお、18Aプロセスは「4年間で5ノード」達成を掲げるIntelの戦略の一環として、RibbonFETとPowerViaを初導入し、今年後半に量産される見込みだ。18Aには高性能版「18A-P」や電力効率強化版「18A-PT」もラインアップされており、これらの技術基盤を踏まえて14Aではさらなる進化が図られる。

ファウンドリ事業とAI戦略における位置付け

14AプロセスとTurbo Cellsの発表は、Intel社がファウンドリ事業の躍進を狙う中で、AI用途向けプロセス技術として強調されたものだ。過去4年間で900億ドルを投じてきた同社のファウンドリ投資は、AMDやApple、NVIDIAを擁するTSMCへの対抗策である。18Aに続く14Aは、最先端技術での優位回復と市場シェア獲得の鍵を握る。

Foundry Direct Connectでは、Foundry Services SVPのKevin O’Buckley氏らが「AIサービス企業」への転換を重視すると強調。高性能かつ高効率なプロセス技術は、爆発的需要が続くAIチップ市場を支える要となる。イベントでは、高速メモリ搭載のエンタープライズGPUイメージも提示され、来るべきAI時代に向けたIntelの方向性が示された。

加えて、Intel社は「2年サイクル」でプロセスを進化させる方針を表明。18Aから14Aへの移行はこの予測可能な開発リズムに沿ったものであり、顧客が製品開発計画を立てやすい環境を整備する狙いがある。Synopsis、Cadence、Siemens EDA、PDF Solutionsなどエコシステムパートナーとの連携強化も打ち出され、顧客フィードバックを反映したプロセス開発への姿勢が明確にされた。

こうした戦略的背景のもと、Turbo Cellsは高性能コンピューティングやAI用途における設計自由度を大幅に向上させる技術として、2027年以降、その有効性が問われることになるだろう。


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