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Intel、新CEOの下で約2万人規模の大規模人員削減を計画か

Y Kobayashi

2025年4月24日

半導体大手Intelが従業員の約20%にあたる約2万人規模の大幅な人員削減を計画していることが、Bloombergによって報じられた。これは新たに就任したLip-Bu Tan CEOが主導する構造改革の一環で、管理層の合理化とエンジニアリング主導の文化を再構築する狙いがあるとされる。

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新たな衝撃を呼ぶ大規模人員削減計画:その詳細と背景

2万人超、従業員の2割に相当する規模か

今回の人員削減計画を最初に報じたのはBloombergだ。同メディアは関係者の話として、Intelが今週後半にも従業員の20%以上を削減する計画を発表する予定だと伝えた。Intelが2024年末時点で約10万8900人の従業員を抱えていたことを考えると、削減規模は2万人を超える可能性がある。これは、2024年後半に実施された約1万5000人の人員削減を上回る、極めて大規模なリストラとなる。

人員削減の正式な発表は、現地時間4月24日(木曜日)に予定されている2025年第1四半期の決算発表と同時に行われる可能性が高いと見られている。

なお、これらの報道に対し、IntelはReutersなどの取材に対し「噂や憶測にはコメントしない」として、肯定も否定もしていない。

なぜ今、大規模削減なのか? 新CEO Lip-Bu Tan氏の狙い

この大規模な人員削減計画の背景には、Intelが直面する深刻な経営課題と、それを打開しようとする新CEO Lip-Bu Tan氏の強い意志がある。

新CEO Lip-Bu Tan氏の改革路線

Tan氏は、半導体業界で長年の経験を持つ著名な投資家であり、Intelの取締役も務めていた人物である。2024年8月に一度取締役を退任したが、これは当時のCEO Pat Gelsinger氏の経営方針、特に人員削減の規模について意見の対立があったためとも報じられている。Gelsinger氏が2024年12月に「退任」した後、2025年3月に Tan氏がCEOに就任した

Tan氏のCEO就任は、Intelが大きな転換期にあることを示唆している。彼は就任時の従業員向けメッセージで「Intelの世界クラスの製品会社としての地位を取り戻し、世界クラスのファウンドリ(半導体受託製造)としての地位を確立し、これまで以上にお客様を喜ばせるために懸命に取り組む」と述べ、改革への決意を示した。

目的:官僚主義打破とエンジニアリング文化の再興

報道によると、Tan氏が目指すのは単なるコスト削減ではない。今回の人員削減は、特に「中間管理職」をターゲットとし、肥大化した組織構造をスリム化することで、官僚主義的な非効率性を排除し、意思決定を迅速化することを狙っている。

そして、より本質的な目的は「エンジニアリング主導の文化」を再構築することにある。Tan氏は、Intelが失った優秀なエンジニアリング人材を取り戻し、顧客のニーズに合わせた製造プロセスを適応させる必要があると考えているとされる。技術革新こそがIntel再生の鍵であるという強い信念がうかがえる。

中間管理職削減という業界トレンド

Intelの中間管理職削減の動きは、他の大手テック企業でも見られるトレンドと一致する側面がある。例えば、Microsoftも管理職層を削減し、エンジニア(コーダー)の比率を高めることで組織の効率化を図ろうとしていると報じられている。「肥大化」した組織構造は、変化の速いテクノロジー業界において競争力を削ぐ要因となりかねない。Tan氏もIntelの組織が肥大化していると考えている可能性が高い。

苦境に立つ巨人Intel: 再建への険しい道のり

今回の報道は、Intelが依然として厳しい状況下に置かれていることを改めて浮き彫りにした。

近年の業績悪化と市場での劣勢

Intelは長年にわたり半導体業界の盟主として君臨してきたが、近年はその地位が揺らいでいる。2024年には株価が60%も下落し、第4四半期には16億ドルの純損失を計上するなど、業績は低迷している。第2四半期の決算(2024年8月1日発表)でも、売上高は前年同期比1%減の128億ドル、GAAPベースの純損失は16億ドル(希薄化後1株あたり損失0.38ドル)と、厳しい結果が続いている。

競合との熾烈な争い

PC向けCPU市場ではAMDの猛追を受け、データセンター市場やAI(人工知能)分野ではNvidiaが圧倒的な存在感を示している。さらに、最先端の半導体製造技術においては、台湾のTSMCに後れを取っており、かつての製造プロセスにおけるリーダーシップを失っている。

AI戦略の課題と見直し

急速に拡大するAI市場への対応もIntelにとって大きな課題である。NVIDIAのGPU(Graphics Processing Unit)がAI学習・推論の分野でデファクトスタンダードとなる中、Intelは対抗軸を打ち出せずにいる。期待されていたAIアクセラレーター「Falcon Shores」の開発計画も後退し、社内テスト用にとどまると報じられており、市場競争力のある製品を投入できていないのが現状だ。

Tan CEOは、ネットワーク&エッジグループ担当SVP兼GMだった Sachin Katti氏を、新たに技術・AI担当役員(Chief Technology and AI Officer)に任命し、AI戦略全体の指揮を執らせるなど、テコ入れを図っている。しかし、具体的な製品ロードマップや競争戦略が市場の期待に応えられるかは未知数である。

前CEOの退任と繰り返されるリストラ

前CEOの Pat Gelsinger氏は、「IDM 2.0」戦略を掲げ、大規模な設備投資を行い、ファウンドリ事業への本格参入を目指すなど、野心的な計画を推進した。しかし、その成果が十分に現れないまま、取締役会の信頼を失い、退任に至ったと見られている。

そして、今回の報道が事実であれば、Intelはわずか1年足らずの間に2度の大規模な人員削減を行うことになる。これは、同社がいかに抜本的な改革を迫られているかを示している。

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今後の展望: Intelは再生できるのか

新CEO Lip-Bu Tan 氏の下で、Intelはまさに正念場を迎えている。

Tan氏による具体的な再建策

人員削減計画に加え、Tan氏はすでに具体的な再建策に着手している。FPGA(Field-Programmable Gate Array)メーカーであるAltera(旧Intel PSG)の株式の過半数(51%)を売却することで合意したと報じられており、これは非中核事業を整理し、経営資源をコア分野に集中させる狙いがあると見られる。

また、経営陣のフラット化を進め、意思決定の迅速化を図っているほか、前述の通りAI戦略の立て直しにも着手している。Intelが持つ技術力、特に次世代プロセス技術「Intel 18A」などの開発が順調に進めば、反撃の糸口となる可能性はある。Intel 18Aは2025年末までに製造準備を完了し、2026年前半には量産ウェハーの投入を開始する計画である。

市場と従業員への影響

大規模な人員削減は、短期的にはコスト削減効果が期待できる一方、従業員の士気低下や、将来の成長に必要な人材の流出につながるリスクも伴う。また、市場からは Tan氏の再建策の手腕が厳しく問われることになるだろう。アナリストの中には、Intelがかつての栄光を取り戻すのは困難であり、回復には数年を要するとの見方もある。

米中間の貿易摩擦や地政学リスクも、Intelの再建計画にとって無視できない懸念材料だ。グローバルなサプライチェーンや市場への影響は、同社の業績を左右する可能性がある。

テクノロジー業界の巨人、Intelが再び輝きを取り戻すことができるのか。新CEO Tan 氏が断行するとされる「厳しい決断」が、その試金石となることは間違いないだろう。


Sources

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