「iPhoneのワイヤレス充電は便利だが、有線に比べれば遅い」。これは長年、多くのユーザーが抱いてきた共通認識ではないだろうか。しかし、その常識が来年、ついに覆されるかもしれない。台湾の規制当局のデータベースから、Appleが開発中とみられる新型のMagSafe充電器が発見された。その仕様は、現行モデルから約2倍となる「45W」出力。これは、次期「iPhone 17」シリーズが、新ワイヤレス充電規格「Qi2.2」に対応し、充電体験の大幅な改善が期待出来る兆候と見られる。
発見された「45W」の次世代MagSafe充電器
今回の情報は、テクノロジーニュースサイト「91Mobiles」が発見した台湾の規制当局NCC(国家通訊伝播委員会)の認証情報だ。規制当局の認証を通過したということは、その製品がすでに完成に近く、市場投入を前提に動いていることを示す信頼性の高い証拠である。
台湾の規制当局が明かした二つの新モデル (A3502, A3503)
今回発見されたのは、「A3502」と「A3503」という二つのモデル番号を持つApple製のMagSafe充電器だ。公開された画像によれば、外観は現行の白い円形パックデザインを踏襲しており、一見しただけでは違いに気づくのは難しいかもしれない。
両モデルの違いは付属する編み込み(ブレイデッド)ケーブルの長さにあるとみられ、A3502が1m、A3503が2mと、現在の製品ラインナップと同じ構成が維持されるようだ。しかし、その心臓部たる性能は、全くの別物に進化を遂げている。


パックに刻まれた「15V x 3A = 45W」
最大の注目点は、充電器本体に印字された仕様にあり、「15V x 3A」という出力表記が確認できる。これは単純計算で「45W」の出力を意味する。


Appleが現行のiPhone 16シリーズ向けに提供しているMagSafe充電器の最大出力は25W。つまり、今回リークした新型充電器は、その出力を80%も向上させる、まさに「次世代」と呼ぶにふさわしいスペックを備えているのだ。この数字は、Appleがワイヤレス充電戦略を大きく転換させようとしていることを物語っている。


新規格「Qi2.2」がもたらすワイヤレス充電革命
この45Wという高出力を実現する鍵となるのが、新たなワイヤレス充電規格「Qi2.2」だ。Appleは、業界団体のWPC(Wireless Power Consortium)が策定したQi 2.1をスキップし、一気に最新のQi2.2へとジャンプしようとしている。
速度だけではない、Qi2.2の3つのメリット
Qi2.2がもたらす恩恵は、速度向上だけではなく、ユーザー体験を向上させる重要なメリットが複数存在する。
- 劇的な速度向上: 理論上の最大出力は50Wとされており、今回の45W対応充電器はそのポテンシャルを最大限に引き出すものとなる。これにより、短時間での急速充電が可能になり、「急いでいるのにワイヤレスでは間に合わない」というジレンマから解放されるだろう。
- 充電効率の改善: ワイヤレス充電の課題の一つであった、充電中の発熱やエネルギー損失が抑制される。これは、iPhone本体やバッテリーへの負荷を軽減し、長期的なバッテリー寿命の維持にも貢献する可能性がある。
- 磁気吸着の精度向上: Qi2規格の根幹でもあるマグネットによる位置合わせがさらに改善される。これにより、充電器にiPhoneを置くだけで、より確実かつ最適な位置に吸着し、安定した充電が約束される。
Appleが主導したQi2規格の進化
そもそもQi2規格は、AppleがiPhone 12で導入した「MagSafe」の磁気技術をWPCに提供したことで誕生した背景がある。Appleは単に既存の規格を採用するだけでなく、自社の技術を業界標準へと昇華させることで、エコシステム全体の進化を主導してきた。
今回のQi2.2へのいち早い対応も、その戦略の一環とみられる。Appleが業界の先陣を切ることで、今後のスマートフォンやアクセサリ市場全体でQi2.2の採用が加速する可能性も考えられる。
iPhone 17への搭載は確実か? 専門家としての分析と考察
これほどの大幅なアップグレードが施されたアクセサリが登場するということは、それに対応するデバイスの存在を強く示唆している。では、この45W充電器はどのiPhoneのためのものなのだろうか。
なぜ「iPhone 17」なのか?
論理的に考えれば、その最有力候補は2025年秋に登場が見込まれる「iPhone 17」シリーズだ。通常、これほど大きな仕様変更を伴うアクセサリは、対応するフラッグシップ製品の発売と同時に発表されるのがAppleの常である。
今年のiPhone 16シリーズ発表のタイミングではMagSafe充電器が25W出力に対応になったが、次の一手としてiPhone 17で更なる機能強化が図られると考えるのが最も自然なシナリオだろう。
45W充電は実現するのか? 残された疑問点
ここで一つ、冷静に見ておくべき点がある。それは、充電器が45W出力に対応していても、iPhone本体がその速度を完全に受け入れるとは限らないということだ。
Appleは伝統的に、スペック上の最大値よりも安全性やバッテリーの長寿命化を優先する。過去にも、高出力のMacBook用アダプタでiPhoneを充電しても、iPhone側が受け入れ可能な電力に自動で制限されてきた。
そのため、iPhone 17が実際に受け入れるワイヤレス充電速度は、安全マージンを考慮して40Wや35Wといった値に調整される可能性も否定できない。とはいえ、現行の25Wから大幅に向上することはほぼ間違いないだろう。このリークは、iPhoneの充電体験が新たなステージへ移行する序曲と捉えるべきだ。
ユーザーにとっての意味と今後の展望
もしiPhone 17で45Wクラスのワイヤレス充電が現実のものとなれば、私たちのスマートフォンとの付き合い方は大きく変わるだろう。
「充電のわずらわしさ」からの解放
有線ケーブルに匹敵する速度でのワイヤレス充電は、「充電」という行為をより意識させないものへと変えていく。デスクに、ベッドサイドに、ただ置くだけ。それだけで、朝の短い支度の間や、少しの休憩時間で十分なバッテリーを確保できる。これは、日々の小さなストレスからユーザーを解放する、真に価値のある進化だ。
長年、有線でのスマートフォン充電速度においてAndroidのハイエンドモデルに後れを取ってきたAppleだが、ワイヤレス充電ではMagSafeを開発し、業界を牽引してきた実績がある。今回のアップデートも、業界全体の競争を活性化させ、ワイヤレス充電技術のさらなる標準化と発展を促す起爆剤となるかもしれない。来年の秋、iPhone 17がもたらすであろう「充電革命」に、今から期待が高まる。
Sources