TSMCが2027年初めから、先端製程と成熟製程の半導体製造サービスを値上げする方針だとNikkei Asiaが報じた。基本価格は顧客と製品に応じて5〜10%上がり、当初予測を超える高性能コンピューティング(HPC)向けの追加注文には、さらに10〜15%の割増料金がかかるという。二つの上限を足せば25%になるが、この数字が全製品に当てはまるわけではない。今回の改定案から見えてくるのは、TSMCが通常の年間契約と、逼迫した先端ラインへ後から差し込む注文を別の価格で扱おうとしていることだ。
標準5〜10%、追加枠に10〜15%
基本価格の改定は、TSMCが先端製程と定義する7nm以下に加え、12nm、16nm、28nmなどの成熟製程にも及ぶとされる。成熟製程の上げ幅は最大10%で、製品によってはこれを下回る。Nikkei Asiaによると、顧客との交渉は6月ごろに始まり、7月にまとまった。新価格は2027年初めから適用される見通しである。
一段高い料金が想定されるのは、顧客が当初TSMCへ示した需要予測を超えてHPC向けの生産枠を追加する場合だ。Nikkei Asiaによると、基本改定に加えて10〜15%のプレミアムが設定される。年間を通じて計画した数量と、需要が膨らんだ後に確保する数量の値段が分かれる。TSMCにとっては、増産の余力が限られる局面で、予測を外した顧客へ追加能力のコストを配分する仕組みになる。
TSMCは価格改定を認めていない。台湾の経済日報に対し、価格問題にはコメントしないとしたうえで、価格戦略は「機会主義ではなく戦略的」であり、顧客と緊密に協力して価値を提供すると回答した。報道された料率と対象は、会社の公表価格表ではない。
最大25%が当てはまる注文の条件
「最大25%」は、基本価格の上限10%と追加HPC枠の上限15%を単純に足した数字である。通常の注文に一律25%を課すという内容ではなく、両方の上限が同じ追加注文に適用される場合の見方だ。基本価格の5〜10%は顧客と製品で変わる。全体の基本改定として報じられた上限は10%であり、それを超える部分は予測超過のHPC注文という条件で報じられている。
計算方法にも未確定部分が残る。10〜15%のプレミアムを旧価格に対して加算するのか、改定後の価格へ順番に掛けるのかは開示されていない。前者なら上限の合計は25%だが、後者なら最終的な倍率は異なる。25%という見出しだけでは、顧客が実際に受け取る見積書の金額を確定できない。
完成品への影響も同率にはならない。ファウンドリーへの支払いはCPUやGPU、スマートフォン、サーバーを構成する費用の一部であり、ダイ面積や歩留まり、先端パッケージ、メモリ、各社の契約条件で最終的な負担が変わる。5〜10%の製造価格改定から、小売価格も同じ割合で上がるとは導けない。
77%の先端ノード、売上高の66%に伸びたHPC
TSMCの2026年第2四半期決算では、7nm以下の先端製程がウエハー売上高の77%を占めた。内訳は2nmが3%、3nmが30%、5nmが33%、7nmが11%である。基本価格の改定対象は、すでに同社のウエハー事業の大半を覆う。
用途別ではHPCが前四半期比20%増え、全社売上高の66%に達した。スマートフォンは22%だった。HPC売上のすべてが予測超過の追加注文ではないため、66%をそのまま割増料金の対象とはみなせない。それでも、先端製程とHPCがそれぞれ売上高の中心を占める現在、予測を超えるHPC追加発注へ別料金を置く余地は大きい。
一方、成熟製程の需給は一様ではない。魏哲家(C.C. Wei)会長兼CEOは7月16日の決算説明会で、AIデータセンター向けの電源管理ICやセンサーは不足しているが、消費者向けを含む他分野の需要は強くないと説明した。成熟製程の値上げ報道は、全面的な供給不足よりも、材料や装置、海外工場の建設費を広く価格へ反映する改定として読む必要がある。
600億〜640億ドルの設備投資と値決め
TSMCは2026年の設備投資計画を600億〜640億ドルへ引き上げ、その70〜80%を先端製程へ振り向ける。増額の主因について魏氏は顧客需要の拡大を挙げ、装置価格のインフレも理由に加えた。Nikkei Asiaが伝えた材料費、製造装置、海外工場建設費の上昇は、会社が決算で示した投資負担と方向が一致する。
足元の収益力は高い。第2四半期の粗利益率は67.7%だった。ただし、TSMCは2nmの急速な増産が2026年後半の粗利益率を3〜4ポイント押し下げると見込む。海外工場の立ち上げによる希薄化も、初期の2〜3ポイントから後期には3〜4ポイントへ広がる見通しだ。現在の利益率と、次の生産能力を立ち上げる費用は分けて考える必要がある。
魏氏は価格戦略について、顧客が事業を続けられないような4倍、5倍の急な値上げはせず、長期の増産を支えられる粗利益を確保すると説明した。今回報じられた二段階の料金は、この方針と矛盾しない。基本価格は広く緩やかに改定し、計画外のHPC需要には高い追加料金を求めるからだ。ただし、TSMC自身は2027年の料率を確認していない。
2027年初めに確かめるべき数字は、顧客・製品別の基本改定率と、予測超過分にプレミアムが付く条件である。両方の上限が同じ注文に適用されて初めて「25%相当」が現実の請求額に近づく。実際の見積書が出るまでは、最大10%の全体改定と、追加HPC枠の例外料金を混ぜずに追う必要がある。
