LGとNVIDIAのロボット協業が、共同検討の段階から実機と工場実証の工程を伴うMOUへ進んだ。LGは8月14日、前日に米カリフォルニア州サンタクララのNVIDIA本社で戦略的事業協力MOUを締結したと発表した。両社は2027年第1四半期に二足歩行ヒューマノイドを公開する目標を掲げ、これに先立ち2026年中には車輪型のLG CLOiDを米テネシー州の洗濯機生産ラインへ入れてPoCを始める。

6月時点でNVIDIAは、LGがIsaac GR00Tの利用を「検討」し、リファレンスロボットを共同開発する「計画」だと説明していた。公開時期も実証場所も示されていなかった。今回具体化した内容には、二足歩行機と、工場で集めるデータを学習・検証へ戻してLG独自のRobot Foundation Model(RFM)を改良する循環が含まれる。計算基盤の整備も、この計画の工程に入った。

ただし、MOU締結だけで発売や量産が確定したわけではない。最も近い現地検証は二足歩行機ではなく、車輪を備えるCLOiDである。この順番を分けて読む必要がある。

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6月の共同開発計画が、8月に実行目標へ進んだ

8月のMOUはロボット、AIファクトリー、モビリティの3分野を対象とし、R&Dから現場PoC、事業化を担う共同タスクフォースも置く計画だ。ロボット分野では、LGがJetson Thorをオンボード計算に使い、開放型のヒューマノイド基盤モデルであるIsaac GR00Tと、ロボット安全アーキテクチャのHalos for Roboticsを組み合わせる。LG Electronicsのアクチュエーター、LG Innotekのセンサー、LG Energy Solutionのバッテリーも統合する予定である。

目標時期は2027年第1四半期の「公開」だ。LGは機体寸法や自由度、手とセンサーの構成を明らかにしていない。稼働時間と対象タスクも不明で、性能指標も公表されていない。価格や台数、発売・量産時期も未公表である。公開を出荷や量産開始と同じ意味に置き換えることはできない。

安全面にも同じ留保がいる。HalosはAI計算とOSを中心に、センサーから安全アプリケーション、検査までを結ぶアーキテクチャで、NVIDIAはHalos CoreとOutside-In Safety Blueprintを早期アクセスで提供している。Inspection Labは第三者認証の準備を支援するものだが、Halosを採用すればLG機が認証済みになるわけではない。認証規格、評価主体、完了時期はまだ示されていない。

二足歩行LG機、NVIDIA既存機、CLOiDの役割

「リファレンスロボット」という言葉は、3種類の機体を一つに見せやすい。LGが今回発表した二足歩行機、NVIDIAが5月に公開した既存の研究向け設計、そしてテネシー工場へ入れるCLOiDは別の機体であり、検証する目的も異なる。

機体 構成・状態 今回の役割
LGの二足歩行ヒューマノイド Jetson Thor、Isaac GR00T、HalosとLG系列の部品を統合予定。2027年第1四半期の公開が目標 LG系列の部品とNVIDIAの基盤を統合するリファレンス機
NVIDIAの既存リファレンス機 Unitree H2 Plus、Sharpa Waveの5本指触覚ハンド、Jetson Thor、Isaac GR00Tを統合。全身と手を合わせ75自由度 研究機関が共通のハードウェアとソフトウェア上で挙動を比較・共有する設計
車輪型LG CLOiD 頭部、胴体、2本の多関節アーム、車輪ベースで構成。各腕は7自由度、各手は独立駆動の5本指 2026年中にテネシー工場の洗濯機生産ラインでPoCを始める

NVIDIAの既存機は、Unitreeが2026年後半に提供予定とした研究向けの統合設計である。機体の立ち上げから実機配備までを、データ取得とシミュレーション、学習・評価を含む一つの開発基盤にまとめ、研究チームが同じ環境で挙動を比べられるようにする。LG機もJetson ThorとIsaac GR00Tを共有するが、LG系列のアクチュエーター、センサー、バッテリーを使う別の機体として発表された。既存機の75自由度をLG機の仕様として扱うことはできない。

LG機がリファレンス機を名乗る意味は、消費者向け完成品を直ちに売ることより、LGの部品とNVIDIAのソフトウェアを統合して現場検証の基準機にすることにあるとみられる。ただし、標準化団体の承認や業界標準としての採用は発表されていない。外販、仕様公開、第三者による採用も未公表である。

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2026年の工場PoCが、二足歩行機より先に動く

LGが最初に製造現場へ持ち込むのはCLOiDだ。2026年1月にLGが示したCLOiDは、冷蔵庫から牛乳を取り出し、クロワッサンをオーブンへ入れ、洗濯物をたたんで積む家庭タスクを実演する予定だった。LGはVLMとVLAを数万時間の家庭タスクデータで訓練したと説明したが、成功率や人手なしで動ける時間は公表していない。

8月発表では、CLOiDをテネシー工場の洗濯機生産ラインへ2026年中に投入し、PoCを始める。LGは結果を基に性能と用途を改善し、その後に他の生産施設、家庭、商業空間への展開を計画する。家庭のデモから工場の作業へ対象を移すことで、学習用のデータと実地の運用経験を得る狙いである。

車輪ベースのCLOiDは二足歩行機とは異なる。工場PoCが二足歩行機の性能を証明するわけでもない。実用性を判断するには、まず対象作業と成功率、介入頻度を示す必要がある。そのうえで稼働時間と安全性を測り、投資回収を見通せるかが問われる。PoCはその数値を測る入り口であって、本格配備の実績ではない。

LGは7月1日付でCEO直轄のRobotics Business Centerを置き、事業開発から営業、運営までをまとめた。専任のデータファクトリー組織も設け、ソウルのYangjae R&D Campusに置く大規模データファクトリーを2026年中に稼働させる予定である。工場PoCを単発のデモで終わらせず、機体の改善へ戻す組織も並行して作っている。

PhysicalWorksからAIファクトリーまで回す

LG CNSのPhysicalWorksを基盤に、両社は現場でPhysical AI Data Factoryを構築・運用する技術協力を進める。データを収集・生成し、学習と検証を繰り返す仕組みである。CLOiDの工場PoCで得るロボットデータと運用経験は、LG独自のRFMを改善するために使う計画だ。

この循環は計算基盤の工程表にもつながる。LGは2027年上半期、Vera Rubinを基盤にLGの冷却、電力、IT技術を適用・検証するAIファクトリーのリファレンスサイトを構築する計画を示した。さらに2028年上半期には、韓国・忠清南道天安で80MW規模へ拡張するAIファクトリーを建設する予定で、Prefab方式により建築期間を20%以上短縮できると見込む。

もっとも、80MWは施設規模であり、GPU台数、稼働率、ロボット学習だけに使う電力を表す数字ではない。20%以上も完成済みの実績ではなく、LGの計画値だ。MOU締結、工場PoC、検証用サイトの順に実行できるかで、実機と現場データをRFM、AIファクトリーへつなぐ計画が動くかどうかが決まる。二足歩行機の公開までに、CLOiDが工場でどんな作業をどの水準でこなしたかが、最初の具体的な判断材料になる。