National University of Singapore(NUS)は7月28日、白熱電球を思わせる電気加熱式の化学反応器を、脱炭素に関わる3つの反応へ適用した研究群としてまとめて公表した。細い金属フィラメントに電流を流し、反応器全体ではなく狭い領域を1,200℃超まで加熱する。周囲の温度を比較的低く保てるため、高温で反応物を活性化し、低温側では生成物を別の条件で扱える。

今回の新しさは、アンモニア、ポリオレフィン、メタンで得た数値を一つにまとめたことではない。各反応に合わせてフィラメントと触媒、温度を使い分けつつ、活性化と選択性制御を同じ温度帯へ押し込めない設計を共通のプラットフォームとして示した点にある。もっとも、NUSはスケールアップと産業利用をなお検討中としている。商用反応器の発表ではない。

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熱を反応器全体へ広げない設計

電気で加熱するフィラメントは、反応に必要な熱を小さな領域へ集中させる。NUSによると、薄い金属フィラメントを高温にしても、反応器の大半はより低い温度に保てる。反応器全体を同じ温度まで熱する方式とは、熱の置き方が異なる。

高温反応では、反応物を十分に活性化しようとすると、生成物まで反応し続けてしまうことがある。3研究はこの問題を、加熱源を局所化し、必要に応じて低温側へ反応を移すことで扱った。コンパクトな設計や電化はこの構成から期待される利点だが、個々の性能値は反応ごとの実験条件に属する。

たとえばアンモニア分解の研究では、タングステン線に電流を流し、局所温度を最大1,800Kまで上げた。論文の要旨は変換率を最大99.995%と報告し、研究では実験上のエネルギー効率を最大60%としている。これはアンモニアを水素と窒素へ分解した結果であり、上流のアンモニアがグリーンであることや、水素供給網全体のゼロ排出を示すものではない。

メタンを二つの温度帯で扱う

メタン変換の研究は、温度を分ける設計が最も明確に現れた例である。ジュール加熱したモリブデンのフィラメントを1,000〜1,457℃で使い、メタンを活性化する。内壁のパラジウム系触媒は154〜350℃に置き、下流で生成物の選択性を制御した。

非酸化的なメタン変換は、反応段階でCO2を作らず、エチレンとBTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)を狙う。一方で、メタンを反応させるための高温は、生成物の過剰反応も招きやすい。論文は、非等温の構成によってこの変換率と選択性のトレードオフを切り離すことを目指した。

報告されたエチレンとBTXの合計収率は39.4%で、水素収率は62%だった。1,457℃/350℃の条件では、生成物中のエチレンとBTXを合わせた選択性が60%を超えた。コークは主にフィラメントへ付着し、Pd触媒層では少なかった。フィラメントはCO2で再生したと報告している。

ただし、これらは実験室での結果である。コークの位置を分けられたことは触媒層を守る可能性を示すが、長期間の工業運転に耐えることまでは立証していない。メタンがそれ自体で炭素中立になるわけでもない。

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アンモニアとプラスチックで測った性能

アンモニア研究は、急峻な半径方向の温度勾配により、反応器の全容積を加熱するより低い電力入力で高い局所反応速度を狙う。論文には、1日100kgの水素を生産する3L、1,700本チューブの設計も示された。しかし、これはシミュレーションに基づく提案であり、稼働中のプラントではない。現在の最先端反応器より2〜3桁小さくできるという比較も、提案設計に対するものだ。

ポリオレフィン分解の研究では、高温の遷移金属フィラメントが局所的なジュール加熱源と、その場の触媒を兼ねる。フィラメント温度は最大2,300℃で、オレフィンモノマーの選択性は最大65%に達した。ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)を1対1で混ぜた試料では合計選択性が58%、ステンレス鋼ではエチレン選択性が最大63%だった。

この反応では、従来の遅い熱分解で起きやすい二次反応を抑えるため、急速に加熱し、生成物をより低温の領域へ移す。だが対象はPEやPP型のポリオレフィンであり、混合された一般廃プラスチック全体を商業的な処理量で循環利用できることを意味しない。論文は原料中の不純物や添加剤、水分への対応を課題に挙げる。フィラメント破損やコーク、生成物の分離も、実用化に向けて詰める必要がある。

産業化に必要な検証

メタン研究の技術経済分析とライフサイクル分析は、分析で置いた条件の下では、コスト競争力を持つネットゼロ生産の可能性を示した。これは商用設備で測定したライフサイクル結果ではない。エネルギー源、原料の炭素強度、システム境界が変われば結論も変わる。

3本の論文は、同じ反応器の単一仕様を示したものでもない。タングステン、遷移金属、モリブデンのフィラメントと、触媒や温度条件は反応ごとに異なる。したがって、次の段階では個々の収率や選択性より、連続処理量を上げたときに局所加熱の利点を保てるかを確かめる必要がある。

電化された高温反応器が工業設備へ近づくには、フィラメントの寿命と再生、原料中の不純物への耐性、生成物の分離を連続運転で示さなければならない。3反応に共通する設計が、その条件でも反応の活性化と生成物制御を分け続けられるか。そこが産業利用の判断を左右する。