LTO Programは、2025年に出荷されたLTOテープの容量が160.3EB(エクサバイト)だったと発表した。2024年の過去最高176.5EBから9%減ったものの、年間では歴代2位である。さらに2026年第1四半期(Q1)は前年同期比57%増へ転じた。ただし、この二つの数字は年間の落ち込みと四半期の反発を示すものであり、2026年の最高記録を保証するものではない。
## 160.3EBへの反落後、Q1は57%増
LTO Programが公表する出荷容量は、2.5対1のデータ圧縮を仮定した換算値である。160.3EBは販売されたカートリッジの本数でも、利用者が実際に書き込んだデータ量でもない。世代ごとの媒体出荷を容量に換算した市場指標として読む必要がある。
この違いは、2026年Q1の57%増を解釈するうえで欠かせない。高容量のLTO-10が出荷構成に占める割合が上がれば、販売本数が同じでも換算容量は増える。今回の発表にはQ1のカートリッジ本数や世代別構成比がないため、57%をそのまま顧客数や導入件数の増加とみなすことはできない。
2024年は前年比15.4%増の176.5EBで最高記録を更新し、2025年はそこから16.2EB減った。ストレージアナリストのTom Coughlinは、国際貿易を巡る環境の変化により、企業が調達や在庫の判断を慎重にしたことが減少に影響したとみている。これは同氏の分析であり、出荷統計だけから貿易環境との因果を確定することはできない。
一方、2026年Q1の57%増について、LTO ProgramはLTO-9の継続的な出荷とLTO-10の立ち上がりが寄与したと説明する。AI向けストレージの増設や従来型アーカイブ、サイバー攻撃に備えたバックアップも需要要因に挙げているが、用途別の出荷比率は開示していない。したがって「AIがテープ需要を反転させた」とまでは言えない。確認できるのは、2025年Q1を大きく上回る出荷容量から2026年が始まったことまでだ。
## 40TB媒体は同じLTO-10ドライブで使える
2026年初めに投入された新しいLTO-10カートリッジは、非圧縮で40TB、2.5対1圧縮を仮定すると最大100TBを収める。先行するLTO-10媒体は非圧縮30TB、圧縮時75TBだった。カートリッジ1本の非圧縮容量は約33%増えた計算になる。
圧縮時の100TBは保証容量ではない。実際に保存できる量はデータの圧縮しやすさで変わる。物理的な保存密度を比較するときは、40TBという非圧縮容量を基準にするのが安全だ。
容量増加には、薄く平滑なアラミド製ベースフィルムが使われた。テープを薄くすれば、同じ外形のカートリッジへより長く巻き取れる。LTO Programは、このベースフィルムとLTO-10のドライブヘッド設計を組み合わせて40TBを実現したとしている。
40TB媒体は、30TB媒体に使われている同じLTO-10ドライブで読み書きできる。既存のLTO-10導入企業にとっては、ドライブを交換せずにスロット当たりの保存容量を増やせる点が大きい。ただし「完全な上位互換」と呼ぶのは正確ではない。LTO-10ドライブが扱えるのは30TBと40TBのLTO-10媒体であり、LTO-9以前の媒体は読み書きできない。導入時にはドライブだけを見ず、ライブラリや管理ソフトを含む自社構成で40TB媒体が認定されているかを確認する必要がある。
## 電力とエアギャップは運用条件で変わる
テープがデータセンターで再評価される理由の一つは、低頻度データを保管している間、媒体そのものへ通電する必要がないことだ。HDDやSSDを常時稼働させる構成に比べ、アクセスの少ないデータをテープ層へ移せば保管時の消費電力を抑えられる。LTO Programは、一定のアーカイブ条件ではLTOがHDDより96%少ない電力で済むとの試算を紹介している。
ただし、テープライブラリ全体の消費電力がゼロになるわけではない。ドライブ、搬送ロボット、制御装置には電力が必要であり、データの読み出し時には媒体を装填して走行させる。削減幅はデータの呼び出し頻度、保持期間、比較するディスク構成によって変わる。
サイバー耐性も同じだ。カートリッジをライブラリから取り出すか、システムをネットワークから完全に切り離せば、物理的なエアギャップを作れる。ネットワーク上の攻撃者がオフライン媒体を直接暗号化する経路は断たれるが、テープを使うだけでエアギャップが成立するわけではない。接続状態の管理、オフラインコピーの世代数、復元試験まで含めた運用が必要になる。
こうした特性から、テープはリアルタイム推論を支える一次ストレージではなく、参照頻度の低い学習データ、バックアップ、法令対応の長期保存に向く。GPUへ継続的にデータを供給する層はフラッシュやHDDが担い、その後ろにテープを置く。役割は代替ではなく階層化である。
## 365TBが非圧縮、913TBは圧縮時の目標
LTO Programが2025年11月に更新したロードマップでは、LTO-14の目標はカートリッジ1本当たり約365TBの非圧縮容量で、2.5対1圧縮時に913TBとなる。この913TBは非圧縮容量ではなく、圧縮時の目標値だ。LTO Program自身も、ロードマップは将来の方向を示す目標であり、変更や撤回の可能性があって達成を保証しないと明記している。
密度が上がっても、テープ固有の制約は残る。目的のファイルを読むには媒体の装填と位置決めが必要で、SSDやHDDのような低遅延のランダムアクセスには向かない。保存容量が増えるほど、全量を書き込み、検証し、復元するための時間と転送帯域も運用設計に効いてくる。
供給網にも注意が要る。The Registerは、LTO用磁気テープ媒体の実製造が富士フイルムとソニーに集中していると報じている。LTOは複数企業が製品を供給するオープン形式だが、そのことと記録媒体の製造元が分散していることは同義ではない。大規模利用者はドライブ互換性に加え、媒体の調達先と在庫も分けて考える必要がある。
2026年Q1の57%増は、テープ市場が2025年の減少後も強い需要を残している証拠にはなる。しかし、最高記録の更新はまだLTO Programの見通しにすぎない。2026年通年の圧縮換算出荷容量と40TB媒体の構成比が判明すれば、今回の増加が導入初期の集中発注だったのか、長期的な拡大へつながったのかを判断できる。
LTO出荷容量、2026年Q1は57%増 40TB媒体が支えるテープ需要の現在
この記事のポイント
- 何が起きた: LTOの2025年出荷容量は160.3EBへ9%減ったが、2026年Q1は前年同期比57%増えた。
- なぜ重要か: 40TBのLTO-10媒体が保存密度を高め、電力制約のあるアーカイブ用途でテープの選択肢を広げる。
- 次に見るべき点: Q1の増加が年末まで続くか、40TB媒体の供給と通年出荷容量で確認する必要がある。
