AppleのM6とM5 Ultraを搭載したとするMacのCPUベンチマークが、2026年9月15日にGeekbench Browserへ投稿された。M6はシングルコアで4,071、M5 Ultraはマルチコアで52,516を記録し、小型Mac向けチップの世代更新と、多数のコアを持つUltraの強化が別々の方向に進んでいる。歴代Macの集計と比べると、無印のM6はM1 Ultraに近いマルチコアスコアに達する一方、M5 Ultraの優位は処理内容によって大きく変わる。買い替えの判断には、総合点の順位に加えて、自分が待たされている処理でどれほど差がつくかを見たい。
確認できたのは、M6の投稿とM5 Ultraの投稿である。いずれもGeekbench 7.0.0のmacOS AArch64版を使い、OSはmacOS 27.0、ビルドは26A428と表示されている。
| 投稿上の項目 | M6 | M5 Ultra |
|---|---|---|
| モデル識別子 | Mac18,5 | Mac17,15 |
| CPUコア数 | 12 | 36 |
| メモリ | 32GB | 256GB |
| 登録周波数 | 4.78GHz | 4.61GHz |
| シングルコア | 4,071 | 3,774 |
| マルチコア | 22,783 | 52,516 |
この構成差は結果を読む前提になる。M5 UltraにはM6の3倍のCPUコアがあり、メモリ容量も異なる。登録周波数は測定中の持続クロックを示す値ではなく、投稿だけでは電力設定や冷却条件まで分からない。Appleによる公式な測定結果でも、投稿内容の真正性を独立に検証した製品レビューでもないため、以下では各チップの公開投稿1件として扱う。
また、比較はすべてGeekbench 7のCPUスコアにそろえた。Primate Labsの説明によると、同版では入力データを拡大し、実際のアプリで複数スレッドを使う処理だけをマルチコアテストへ組み入れた。例えばHTML5 Browserはマルチコア側に含まれない。Geekbench 6の数字を混ぜたり、マルチコア総合点をシングルコア総合点で割ってコアの利用効率と解釈したりすると、比較の意味が変わってしまう。
M6は無印の進化で、M1 Ultraに近いマルチコアへ
M6のマルチコア22,783は、M4搭載Mac miniの集計15,353より48.4%高い。シングルコアも3,278から4,071へ24.2%上がる。直前のMac miniからの更新として見ると、複数コアを使う側で伸びが大きい。
| チップ | 採用した機種 | CPUコア | シングル | マルチ |
|---|---|---|---|---|
| M1 | Mac mini (2020) | 8 | 2,187 | 8,577 |
| M2 | Mac mini (2023) | 8 | 2,403 | 9,811 |
| M3 | MacBook Pro 14 (2023) | 8 | 2,762 | 11,506 |
| M4 | Mac mini (2024) | 10 | 3,278 | 15,353 |
| M5 | MacBook Pro 14 (2025) | 10 | 3,643 | 17,959 |
| M6 | Mac18,5(個別投稿) | 12 | 4,071 | 22,783 |
出典はGeekbenchのMac集計と上記M6投稿。集計は2026年9月17日に参照した値で、少なくとも5件の独立した投稿結果がある機種を掲載する。M6だけは今回採用した1件であり、各世代の最高記録を集めた表ではない。M3とM5はMacBook Proを選んでいるため、筐体が異なる点にも注意が必要だ。
データを表で見る
| シングルコア (スコア) | |
|---|---|
| M1 | 2,187 |
| M2 | 2,403 |
| M3 | 2,762 |
| M4 | 3,278 |
| M5 | 3,643 |
| M6 | 4,071 |
無印のシングルコアは世代ごとに上がり、今回のM6投稿はM5搭載14インチMacBook Proの集計3,643に対して11.7%高い。これは同じ時間に一つの処理を速く進める能力の目安になるが、アプリの操作すべてが同じ割合で軽くなるわけではない。
データを表で見る
| マルチコア (スコア) | |
|---|---|
| M1 | 8,577 |
| M2 | 9,811 |
| M3 | 11,506 |
| M4 | 15,353 |
| M5 | 17,959 |
| M6 | 22,783 |
マルチコアではM5の17,959に対して26.9%増、M1 Mac miniの8,577に対して2.66倍となる。増加率は「新スコア÷比較対象スコア−1」、倍率は両者の割り算で求めた。参照時点の集計値で再計算しているため、公開直後の記事に載る割合とは多少違う。
さらに興味深いのは、M1 Ultra搭載Mac Studioの集計23,372との距離だ。M6はマルチコアで2.5%下回るだけで、シングルコアではM1 Ultraの2,218を83.5%上回る。かつて上位ワークステーションが担っていたCPU処理の一部へ、無印チップが近づいたと読める。ただし、これは総合CPUテストでの接近だ。GPUの規模や扱えるデータ量まで同じになったことは意味しない。
M5 Ultraは旧Ultra比でどう伸びたか
M5 Ultraの52,516を無印M1 Mac miniの8,577で割ると6.12倍になる。しかし、この数字にはCPUの世代更新に加え、8コアの無印から36コアのUltraへ製品クラスを変えた効果も入っている。旧Mac Studioからの買い替えなら、Ultra同士の差がより直接的な材料になる。
| チップ | 採用した機種 | CPUコア | シングル | マルチ |
|---|---|---|---|---|
| M1 Pro | MacBook Pro 14 (2021) | 10 | 2,198 | 13,933 |
| M1 Max | Mac Studio (2022) | 10 | 2,229 | 14,307 |
| M1 Ultra | Mac Studio (2022) | 20 | 2,218 | 23,372 |
| M2 Pro | Mac mini (2023) | 12 | 2,413 | 16,411 |
| M2 Max | Mac Studio (2023) | 12 | 2,541 | 17,385 |
| M2 Ultra | Mac Studio (2023) | 24 | 2,518 | 27,779 |
| M3 Pro | MacBook Pro 16 (2023) | 12 | 2,811 | 16,900 |
| M3 Max | MacBook Pro 16 (2023) | 16 | 2,825 | 24,653 |
| M3 Ultra | Mac Studio (2025) | 32 | 2,907 | 38,862 |
| M4 Pro | Mac mini (2024) | 14 | 3,312 | 24,748 |
| M4 Max | Mac Studio (2025) | 16 | 3,496 | 29,071 |
| M5 Pro | MacBook Pro 16 (2026) | 18 | 3,692 | 33,598 |
| M5 Max | MacBook Pro 16 (2026) | 18 | 3,731 | 35,120 |
| M5 Ultra | Mac17,15(個別投稿) | 36 | 3,774 | 52,516 |
機種とCPUコア数を固定してMac集計から抜き出した。M5 Ultraのみ個別投稿で、ほかは9月17日参照の集計値。M2 UltraはMac ProではなくMac Studioを採用した。同じチップ名でも筐体やコア構成が異なれば数値は変わるため、機種を省いて「チップの点数」とはしない。
データを表で見る
| マルチコア (スコア) | |
|---|---|
| M5 Ultra(投稿) | 52,516 |
| M3 Ultra | 38,862 |
| M5 Max | 35,120 |
| M5 Pro | 33,598 |
| M4 Max | 29,071 |
| M2 Ultra | 27,779 |
| M4 Pro | 24,748 |
| M3 Max | 24,653 |
| M1 Ultra | 23,372 |
| M6(投稿) | 22,783 |
| M5 | 17,959 |
| M2 Max | 17,385 |
| M3 Pro | 16,900 |
| M2 Pro | 16,411 |
| M4 | 15,353 |
| M1 Max | 14,307 |
| M1 Pro | 13,933 |
| M3 | 11,506 |
| M2 | 9,811 |
| M1 | 8,577 |
M5 Ultraの投稿値は、M1 Ultra集計の2.25倍、M2 Ultra集計の1.89倍、M3 Ultra集計の1.35倍である。M3 Ultra比の増加率なら35.1%だ。M1からの「6倍」と、M1 Ultraからの「2.25倍」は、分母が違う。
個別投稿の選び方でも倍率は動く。例えば、同じ9月15日に投稿されたM1 Ultraの1件はマルチコア24,362で、これを分母にすればM5 Ultraは2.16倍となる。平均と好成績の1件を入れ替えるだけで、進歩の見え方が変わるのだ。
M5 Maxとの関係も単純な倍増ではない。18コアのM5 Max搭載16インチMacBook Proは集計35,120で、36コアのM5 Ultra投稿はその1.50倍だった。AppleはM5 Ultraについて、2つのM5 MaxをUltraFusionで接続し、合計4枚のダイを一つのプロセッサとして動かすと説明している。しかし、このスコア差には筐体やメモリ条件も含まれ、接続そのものの効率を測った実験ではない。ただし、M5 Maxからコア数を倍にした効果は、この総合点だけでは切り分けられない。後段の処理別比較はM6とM5 Ultraを対象とし、M5 Maxに対する伸びを示すものではない。
AMD・Intel・Qualcommと並べると見える得意分野
M6のシングルコア4,071は、GeekbenchのCPU集計にあるSnapdragon X2 Elite Extreme X2E-96-100の3,396を19.9%上回る。一方、マルチコアでは同Snapdragonの27,045より15.8%低い。単コアの高さだけで、CPU全体の処理能力を代表させることはできない。
| CPU | コア | シングル | マルチ |
|---|---|---|---|
| M6(個別投稿) | 12 | 4,071 | 22,783 |
| M5 Ultra(個別投稿) | 36 | 3,774 | 52,516 |
| Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-96-100 | 18 | 3,396 | 27,045 |
| Ryzen 9 9950X3D2 | 16 | 3,163 | 28,167 |
| Ryzen 9 9950X | 16 | 3,048 | 25,768 |
| Core Ultra 7 270K Plus | 24 | 2,933 | 27,402 |
| Core Ultra 9 285K | 24 | 2,832 | 25,837 |
| Ryzen AI Max+ 395 | 16 | 2,442 | 20,978 |
| Ryzen Threadripper 9980X | 64 | 2,850 | 37,849 |
| Ryzen Threadripper 7970X | 32 | 2,575 | 35,262 |
M6とM5 Ultraは9月15日の個別投稿、競合は9月17日参照のGeekbench 7集計値。PC側も最低5件の投稿を持つCPUが対象となる。集計には異なるOSやメモリ構成、電力設定のシステムが含まれ得る。ノートPC向けからデスクトップ、ワークステーション向けまでを、同じテストの尺度で位置づけるための比較であり、同価格・同消費電力の勝負ではない。
データを表で見る
| シングルコア (スコア) | |
|---|---|
| M6(個別投稿) | 4,071 |
| M5 Ultra(個別投稿) | 3,774 |
| Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-96-100 | 3,396 |
| Ryzen 9 9950X3D2 | 3,163 |
| Ryzen 9 9950X | 3,048 |
| Core Ultra 7 270K Plus | 2,933 |
| Core Ultra 9 285K | 2,832 |
| Ryzen AI Max+ 395 | 2,442 |
| Ryzen Threadripper 9980X | 2,850 |
| Ryzen Threadripper 7970X | 2,575 |
M6はこの比較に選んだCPUの集計値をシングルコアで上回る。マルチコアではRyzen AI Max+ 395の20,978より高い一方、Ryzen 9 9950XやCore Ultra 9 285Kの集計には届かない。小さなチップの単コア性能が高くても、多数のコアを長く動かす処理では別の順位になる。
M5 Ultraのマルチコア52,516は、64コアのRyzen Threadripper 9980Xの集計37,849より38.8%高い。ただし、Geekbenchのこの結果から、大規模レンダリングや科学技術計算でも同じ差になるとは言えない。コア数の多いCPUほど、ソフトがどれだけ処理を並列化できるかで結果が変わる。消費電力の実測値もない以上、ワット当たり性能の勝者を決める材料にはならない。
総合2.31倍の内側では、処理ごとの差が大きい
この2件の投稿では、M5 UltraのM6に対するマルチコア倍率は総合2.31倍だが、処理別ではファイル圧縮の1.44倍からアセット圧縮の3.43倍まで開く。
両投稿のマルチコア欄にある全8項目を取り出したのが次のグラフだ。CPU版の処理なので、レイトレーシングという名前でもGPUベンチマークではない。
- M6
- M5 Ultra
データを表で見る
| M6 (スコア) | M5 Ultra (スコア) | |
|---|---|---|
| ファイル圧縮 | 16,934 | 24,350 |
| 写真ライブラリ | 23,594 | 53,728 |
| Clangコンパイル | 31,202 | 82,084 |
| テキスト処理 | 23,770 | 36,937 |
| アセット圧縮 | 27,698 | 95,110 |
| HDR処理 | 16,526 | 28,943 |
| 写真編集 | 18,393 | 54,913 |
| レイトレーシング | 29,096 | 96,491 |
コンパイルやレイトレーシングではUltraの差が広がり、ファイル圧縮やHDR処理では比較的小さい。同じ「マルチコア性能」でも、仕事の中身によって多数のコアがもたらす利点は変わる。
| 処理 | M6 | M5 Ultra | Ultra/M6 |
|---|---|---|---|
| ファイル圧縮 | 16,934 | 24,350 | 1.44倍 |
| 写真ライブラリ | 23,594 | 53,728 | 2.28倍 |
| Clangコンパイル | 31,202 | 82,084 | 2.63倍 |
| テキスト処理 | 23,770 | 36,937 | 1.55倍 |
| アセット圧縮 | 27,698 | 95,110 | 3.43倍 |
| HDR処理 | 16,526 | 28,943 | 1.75倍 |
| 写真編集 | 18,393 | 54,913 | 2.99倍 |
| レイトレーシング | 29,096 | 96,491 | 3.32倍 |
出典:M6のマルチコア内訳、M5 Ultraのマルチコア内訳。倍率は各行のM5 UltraスコアをM6スコアで割り、小数第2位に丸めた。総合は52,516÷22,783で2.31倍となる。両者は同日投稿のGeekbench 7.0.0、同じmacOSビルドだが、M6は12コア・32GB、M5 Ultraは36コア・256GBである。
名前が似た圧縮テストにも差がある。ファイル圧縮は1.44倍なのに対し、アセット圧縮は3.43倍だった。これを「圧縮処理はUltraでも伸びない」と一括りにすると、後者の大きな差を落としてしまう。開発者ならClangの2.63倍が参考になるが、実際のビルドではリンク処理やストレージ待ちも含まれ、プロジェクト全体の所要時間がそのまま同じ倍率になるわけではない。
なぜ差が開くかを、この2件だけで特定することはできない。並列化の度合いに加え、メモリアクセスやキャッシュの使い方も影響し得る。M5 Ultraはメモリ容量も異なり、同じ環境でコア数だけを変えた測定ではないからだ。結果が教えるのは、総合点で得た倍率を個々の処理へ一律に当てはめられないということである。
買い替えで確かめたいのは、総合点より自分の処理
M1やM2の無印Macからなら、M6の公開スコアは単コアとマルチコアの双方で大きな差を示す。対してM4やM5からの更新では、日々の待ち時間がCPU計算によるものか、それともメモリ不足や読み書きの遅さによるものかで評価が変わる。CPUの順位表だけでは、後者の改善は判断できない。
旧Ultraユーザーには、M3 Ultra比35.1%という総合点の差と、使うソフトの処理別測定を組み合わせたい。Appleが示すM5 Ultraの最大512GB、1.2TB/sというメモリ仕様は、大規模データを扱う別の判断材料になる。M6の最大メモリは32GBだ。総合CPU点が旧Ultraに近づいても、大きなモデルやデータをメモリへ載せられるかという条件は残る。
Appleの公称値とも、試験条件をそろえず答え合わせはできない。同社はM6のマルチスレッド性能をM5比で最大1.2倍、M5 UltraをM3 Ultra比で最大1.3倍とするが、脚注が示すのは試作機を使った特定の業界標準ベンチマークである。今回のGeekbench 7と同一の試験だとは明示されていない。投稿値が公称倍率を上回ったことを、AppleのAI性能や省電力性の主張まで検証できた証拠にはしない。
次に必要なのは、市販機を使って同じアプリとデータを繰り返し処理したときの時間と、その間の消費電力だ。長い処理で速度を保てるか、GPUやAIの実作業でも短縮できるかまでそろえば、小型Macの世代更新で足りる仕事と、Ultraへ投資する意味がある仕事を、実際の待ち時間で選べるようになる。



