Googleは先日、Googleマップアプリのタイムライントラッキングデータが一部ユーザーで消失した問題について、技術的エラーによりデータが誤って削除されたことを認めた。この問題では、デフォルトでは無効になっているバックアップ機能を事前に有効化していたユーザーのみがデータを復元できる可能性があり、そうでないユーザーは数年分の位置履歴が永久に失われる恐れがある。
Googleマップのタイムラインデータ消失問題の発生と影響
3月初旬頃から、一部のGoogleマップユーザーがアプリの「タイムライン」機能(訪問した場所の履歴を記録する機能)において、「この日の訪問なし」というエラーが表示され、何年も前のデータが突然消失する問題を報告していた。Redditをはじめとする各種フォーラムでユーザーが問題を指摘したことを受け、Googleは問題を認め、影響を受けたユーザーへメールで通知を行った。
GoogleのスポークスパーソンであるGenevieve Park氏はThe Vergeに対して次のように声明を発表した。「一部のユーザーのタイムラインデータが削除される技術的な問題が一時的に発生しました。暗号化されたタイムラインバックアップを有効にしていたほぼすべての人はデータを復元できますが、残念ながら、バックアップを有効にしていなかった人は失われたデータを復元することができません」。
この問題はすべてのGoogleマップユーザーに影響したわけではなく、Googleは影響を受けたユーザーにのみ謝罪とデータ復元方法を案内するメールを送信している。筆者も影響を受けたようで、以下の様にGoogleからメールが届いていた。
(実名) さん
平素より Google マップをご利用いただきありがとうございます。このたび Google マップでは、一時的に技術的な問題が発生し、一部のお客様のタイムライン データが削除されたことが判明いたしました。そこで、お客様のアカウントが影響を受けている可能性があるため、ご連絡させていただきました。暗号化バックアップが有効になっていた場合は、データを復元できる可能性がございます。Google マップが最新バージョンであることをご確認のうえ、タイムラインに移動してください。次に、画面上部にあるクラウド アイコンをタップし、バックアップを選択してデータをインポートしてください。バックアップが無効になっていた場合は、大変申し訳ございませんが、失われたデータを復元することはできません。
タイムラインを使用して訪れた場所を記録されているお客様には、ご不便をおかけいたしましたことを心よりお詫び申し上げます。以後このようなことがないよう、システムの改善に向けて最善を尽くしてまいります。今後ともよろしくお願い申し上げます。
タイムライン チーム
今回の事態は、一部のユーザーにとっては、数年分の位置履歴が失われる可能性があり、思い出や訪問記録の貴重なアーカイブが消失することを意味する。
データ復元の可能性と暗号化バックアップの重要性
Googleによれば、タイムラインの暗号化バックアップを事前に有効にしていたユーザーはデータを復元できる可能性があるという。復元するには、GoogleマップアプリをiOSまたはAndroid端末で最新バージョンにアップデートし、「あなたのタイムライン」(タイムライン)機能を開き、画面上部の雲アイコンをタップしてバックアップを選択し、データをインポートする手順を踏む必要がある。
問題の深刻さを増しているのは、タイムラインのバックアップ機能がデフォルトでは有効になっていなかったことだ。現在のバックアップ状態を確認するには、GoogleマップアプリでユーザーアイコンをタップしてYour Timeline(タイムライン)に入り、画面上部に雲アイコンが表示されているかどうかで確認できる。アイコンに矢印が入っていればバックアップが有効、斜線が入っていれば無効となっている。無効の場合は、雲アイコンをタップすることで今後のデータについては設定を変更できるが、すでに消失したデータの復元には役立たない。

Redditのコメント欄には、バックアップからデータを復元できたという報告がある一方で、「直近数週間のデータしか復元できなかった」という声も見られる。また、Android Authorityによれば、複数のスマートフォンを所有しているユーザーの場合、「メインタイムラインデバイス」として設定した端末に全履歴データが保存されている可能性もあるため、確認が推奨されている。
プライバシー重視のオンデバイスストレージへの移行とその代償
この問題の背景には、2024年12月にGoogleがマップユーザーに対して通知した重要な変更がある。Googleはタイムラインデータの保存方法をクラウドベースからユーザー端末内(オンデバイス)に移行し、同時にWeb版タイムラインの終了日も設定した。この変更は、ユーザーのプライバシー保護を強化する目的で行われたものだ。
オンデバイスストレージへの移行により、ユーザーはGoogleのサーバー上でトラッキングされることなく位置履歴を保持できるようになった一方で、今回のような「技術的問題」によりデータが突然消失するリスクも浮き彫りになった。The Vergeが指摘するように、Googleマップは位置履歴データをファイルにエクスポートする機能を提供しているが、Googleの復元手順にはクラウドバックアップサーバーを介さないデータの再インポート方法は含まれていない。
GoogleはThe Vergeに対する声明で「暗号化されたタイムラインバックアップを有効にしていたほぼすべての人はデータを復元できる」としているが、「ほぼすべて」という表現は、一部のユーザーはバックアップを有効にしていてもデータを復元できない可能性があることを示唆している。
Googleは影響を受けたユーザーへのメールで「タイムラインを使用して訪れた場所を記録されているお客様には、ご不便をおかけいたしましたことを心よりお詫び申し上げます。以後このようなことがないよう、システムの改善に向けて最善を尽くしてまいります」と謝罪し、将来のシステム改善を約束している。
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