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Meta、最新AI技術を結集した独自アプリとLlama APIを同時発表

Y Kobayashi

2025年4月30日

Metaは初のAI開発者会議「LlamaCon」で、一般ユーザー向けのスタンドアロンAIアシスタントアプリ「Meta AI」と、開発者向けのプラットフォーム「Llama API」を発表した。これにより、OpenAIのChatGPTなどに対抗し、自社の大規模言語モデル(LLM)「Llama」のエコシステム拡大と収益化を目指す。

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Meta、AI市場で攻勢を強める-LlamaConで二大サービスを発表

2025年4月29日、Metaは初めてのAI開発者カンファレンス「LlamaCon」を開催し、同社のAI戦略における重要な二つの新製品を発表した。Mark Zuckerberg CEOが主導するこの発表は、AI技術の民主化と普及に向けた取り組みを加速させる意図を示している。

Metaはこれまで、WhatsApp、Instagram、Facebook、Messengerなどの自社プラットフォームにMeta AIを統合してきたが、今回初めて独立したアプリとして提供することで、OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなどの競合AIアシスタントと直接競争する姿勢を明確にした。

同時に発表されたLlama APIは、開発者がLlamaモデルを活用したアプリケーションを容易に構築できるプラットフォームであり、OpenAIやGoogleが提供するAPIサービスへの対抗措置となる。特に注目すべきは、CerebrasやGroqとの提携による高速推論機能であり、従来のGPUベースのソリューションと比較して最大18倍の処理速度を実現している。

Meta AIアプリ:パーソナライズされたAIアシスタントの新時代

Meta AIアプリは最新のLlama 4モデルを基盤としており、ユーザーの好みを学習し、より個人化された応答を提供することを目指している。このアプリは、テキストによるチャット機能に加え、高度な音声会話機能を備えている。

特筆すべき機能として「フルデュプレックス音声」がある。これは、AIが話している最中でもユーザーの発言を聞き取り、会話を自然に中断できるというものだ。通常のAIアシスタントでは、AIの発言が終わるまで待つ必要があるが、この機能により、より自然な対話が可能になる。

「このテクノロジーは、会話的な対話でトレーニングされたより自然な音声体験を提供します。AIは書かれた応答を読み上げるのではなく、直接音声を生成します」とMetaは説明している。

さらに、Meta AIアプリは画像生成・編集機能も備えており、音声や文字によるプロンプトから画像を作成できる。Webバージョンでは、さまざまなスタイル、ムード、照明コントロールが強化されており、特に画像生成ツールが充実している。

パーソナライゼーションは、Meta AIアプリの中核的な特徴だ。ユーザーは自分の興味や好みをAIに記憶させることができる。例えば、旅行や言語学習が好きであること、LEGOプロジェクトを楽しむこと、熱心な読書家であることなどを伝えると、AIはそれを記憶し、将来の会話に活かす。さらに、FacebookやInstagramのプロフィールや交流コンテンツからユーザーデータを取得し、より的確なレスポンスを提供する。

この個人化機能により、例えば次の休暇でワインとチーズの試飲会に行くことを勧める前に、ユーザーが乳糖不耐症であることを覚えておくといった、細やかな配慮が可能になる。現在、このパーソナライズ応答機能はアメリカとカナダのユーザーが利用可能だ。

Meta AIアプリはまた、「Discover」フィードを導入しており、ユーザーはAIとのやり取りを友人と共有することができる。Metaが示したモックアップ画像では、ユーザーがAIに「自分を3つの絵文字で表現して」と頼み、その結果を友人と共有する様子が描かれている。ユーザーのMeta AIとのやり取りは、選択した場合にのみフィードに共有される。

デバイス間連携も注目ポイントだ。Meta AIアプリは、Ray-Ban Metaスマートグラスの既存のMeta Viewコンパニオンアプリと統合される。これにより、ユーザーはグラスでの会話を開始し、アプリやWebでその履歴にアクセスして続きを行うことができる。ただし、現時点ではアプリやWebで会話を開始してグラスで続けることはできない。

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Llama API:開発者向けの高速AI推論プラットフォーム

Meta AIアプリが一般ユーザー向けの製品である一方、Llama APIは開発者に向けたプラットフォームだ。このAPIは現在、限定プレビュー版として提供されており、開発者がLlamaモデルを活用したアプリケーションを構築するための様々なツールを提供している。

「ワンクリックでAPIキーを作成できる」と、Metaは説明する。Llama APIは、開発者がLlama 4 ScoutやLlama 4 Maverickなどの異なるLlamaモデルを探索・実験できるインタラクティブな環境を提供する。開発者がアプリケーションの構築を始める準備ができたら、PythonとTypeScriptの両方でSDKが利用可能だ。また、Llama APIはOpenAI SDKとも互換性があり、既存のアプリケーションの移行が容易になっている。

「Llama 4モデルをAPIで1行のコードで使用できるようにしました」と、Chris Cox最高製品責任者は基調講演で述べた。

Llama APIの最も注目すべき特徴は、CerebrasやGroqとの提携による高速推論機能だ。CerebrasのAIチップを活用したLlama 4モデルは、従来のGPUベースのソリューションと比較して最大18倍の推論速度を実現している。

第三者のベンチマーキングサイト「Artificial Analysis」によると、Cerebrasでのllama 4 Scoutは毎秒2,600トークン以上を処理できるのに対し、ChatGPTは約130トークン/秒、DeepSeekは約25トークン/秒と測定されている。この速度は、会話型低遅延音声、インタラクティブなコード生成、即時マルチステップ推論、リアルタイムエージェントなど、従来の技術では構築不可能だった新世代のアプリケーションを可能にする。

「Cerebrasは、Llama APIを世界最速の推論APIにすることを誇りに思います」と、Cerebras CEOおよび共同創業者のAndrew Feldmanは述べている。「エージェントやリアルタイムアプリを構築する開発者にとって、速度は不可欠です。Llama API上のCerebrasを使用することで、主要なGPUベースの推論クラウドでは根本的に到達できないAIシステムを構築できます」。

この高速推論機能に加えて、Llama APIはファインチューニングと評価のためのツールも提供している。開発者はLlama 3.3 8Bモデルのカスタムバージョンを調整し、データを生成し、それに基づいてトレーニングし、新しいモデルの品質を簡単にテストするための評価スイートを使用することができる。

Metaは、ユーザーのプロンプトやモデル応答を自社のAIモデルトレーニングに使用しないことを強調している。また、Llama API上で構築されたモデルは、開発者が希望する場所でホストすることができ、Metaのサーバーにロックされたままにすることはない。この点は、一部の競合他社のより閉鎖的なアプローチとは一線を画している。

競合製品との差別化:速度と開放性がMetaの強み

Meta AIアプリとLlama APIの導入は、AIアシスタントおよびモデル提供市場において、OpenAI(ChatGPT)、Google(Gemini)、Anthropicなどの主要プレイヤーとの直接的な競争を意味する。

Meta AIアプリの差別化ポイントは、その個人化能力と社会的統合にある。FacebookやInstagramなど、Metaの既存プラットフォームとの緊密な統合により、Meta AIは「あなたが誰で、何が好きで、誰と交流しているかについて、すでに理解している」とMetaは述べている。これは、何年もの間ユーザーがFacebookやInstagramで共有してきたデータに基づいている。

一方、Llama APIの主な競争優位性は、その速度と柔軟性だ。CerebrasのAIチップによる高速推論能力は、OpenAIやGoogleが提供するAPIサービスを大幅に上回っており、開発者に新たな可能性を提供する。また、オープンソースの柔軟性とクローズドモデルAPIの利便性を組み合わせたアプローチにより、開発者は自由にモデルをカスタマイズし、必要に応じて別のホストに移行することができる。

「Metaは30億のユーザー、ハイパースケールデータセンター、そして巨大な開発者エコシステムを持つ独自のポジションにあります」と、Cerebrasのプレゼンテーション資料は述べている。Cerebrasテクノロジーの統合により、「MetaはOpenAIとGoogleのパフォーマンスを約20倍上回ることができます」。

AI市場の新たな展開と今後の影響

Meta AIアプリとLlama APIの発表は、AI市場に大きな影響を与える可能性がある。特に注目すべきは、Metaが広大なユーザーベース(Meta製品全体で約30億人)を活用してAIテクノロジーを普及させる能力だ。

Mark Zuckerberg CEOは、AI技術に対するMetaのビジョンについて、「数年後を考えると、一日中、さまざまな疑問についてAIと会話することになるでしょう」と述べている。彼は、迅速で、ネイティブにマルチモーダルで、日常生活に深く統合されたシステムの構築に焦点を当てていることを強調した。

Metaは今年、AI関連プロジェクトに最大800億ドルを割り当てる計画を発表しており、新しいAIモデル、インフラストラクチャ、およびツールの開発をサポートすることを目指している。また、Reutersの報道によると、Metaは第2四半期に高度なバージョンのAIチャットボット用の有料サブスクリプションのテストを開始する予定だという。

一般ユーザーにとって、Meta AIアプリは日常的なタスクの支援、情報の検索、創造的な表現の新しい方法を提供する。一方、開発者にとって、Llama APIは高速で柔軟なAIモデルを活用したイノベーションの機会を提供する。

Meta AIアプリは現在、iOS App Store、AndroidのGoogle Play Storeから無料でダウンロード可能だが、日本語には対応していない。一方、Llama APIは現在、選ばれた顧客に限定プレビューとして提供されており、今後数週間から数ヶ月の間に広く展開される予定だ。


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