Micron Technologyは2026年7月9日、米国内の工場と技術に2035年までに2500億ドル超を投じる計画を発表した。同時に、ニューヨーク州クレイで建設するDRAM工場では最初のコンクリート打設を終え、造成から建屋を立ち上げる工程へ移った。予定より1四半期以上早い。だが、2500億ドルはニューヨーク工場だけの建設費ではなく、同工場がDRAMを供給し始めるのも2030年以降である。巨額の数字と実際に増える供給量の間には、複数年の建設と量産立ち上げが横たわる。

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2000億ドルから1年で500億ドル超を積み増す

Micronが2025年6月に示した米国投資は約2000億ドルだった。内訳は、国内のメモリ製造に約1500億ドル、研究開発に500億ドルである。今回の2500億ドル超は、そこから500億ドル超を上積みした規模になる。

増額の全体像はまだ見えない。Micronは新計画を「工場と技術への投資」と説明したが、製造と研究開発にいくらずつ振り向けるのか、どの拠点をどこまで拡張するのかという新しい内訳は公表していない。2025年の計画には、アイダホ州の量産工場2棟、ニューヨーク州の最大4棟、バージニア州の既存工場改修、米国内でのHBM先端パッケージング、研究開発が含まれていた。今回の数字は、これらを束ねた全米計画がさらに膨らんだことを示す。

時間軸にも注意が要る。2500億ドル超は2035年までの投資として発表された一方、ニューヨークの最大4棟、1000億ドル規模という構想は20年以上をかけて進める。二つの計画は重なるものの、対象期間は同じではない。2500億ドルを、そのまま4棟分の建設費や短期間の設備発注額として読むことはできない。

コンクリート打設の先にある240万平方フィートのクリーンルーム

クレイの現場では2026年1月に起工し、半年足らずで最初の基礎コンクリートを打設した。Micronによれば、当初の工程より1四半期以上早い。現場が造成中心の段階を抜け、建屋の垂直方向の建設へ進んだという意味で、今回は具体的な進捗である。

完成までの規模は大きい。米国立標準技術研究所(NIST)のCHIPS for America資料によると、計画する4棟はそれぞれ60万平方フィートのクリーンルームを備え、合計は240万平方フィートに達する。連邦政府の直接助成が対象にするのは、このうち最初の2棟だ。Micronはニューヨーク全体で最大1000億ドルを20年以上かけて投じるとしている。

ただし、工事が予定を上回っても、DRAMの供給時期が目前に来たわけではない。同社が米証券取引委員会へ提出した2026年度第3四半期のForm 10-Qでは、第1工場が供給に寄与するのは2030年以降と明記されている。工場を建てた後も製造装置を搬入し、プロセスを立ち上げ、歩留まりを高める必要があるためだ。最大4棟の全体像は、さらに長い期間で需要に合わせて形になる。

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建物より先に、300mmシリコンウェハを10年契約で押さえる

Micronは同じ7月9日、米国内の半導体供給網へ最大30億ドルを投じる別の計画も発表した。その第一弾として、台湾のGlobalWafersがテキサス州シャーマンで拡張する300mmシリコンウェハ工場へ、5億ドルの戦略的資金を提供する。両社は10年間の供給契約も結ぶ方針だ。

300mmの生シリコンウェハは、DRAM回路を形成する前の基板になる。米国内に巨大な前工程工場を建てても、基板を安定して調達できなければ設備は動かせない。10年契約は、Micronが2030年代までの工場稼働を見据え、建屋と同時に材料の供給能力も確保しようとしていることを物語る。

この取引はまだ完了していない。5億ドルの資金提供には正式契約、通常の承認、取引完了条件が残る。最大30億ドルという計画についても、この5億ドル以外の投資先や金額は公表されていない。したがって、米国内の供給網がどこまで広がるかは、今後の個別案件で確かめることになる。

64億4000万ドルの直接助成は工程達成後に支払われる

全米規模の建設を支える公的支援も大きい。NISTの現行資料は、ニューヨーク、アイダホ、バージニアのMicron案件に対するCHIPS法の直接助成を最大64億4000万ドルとしている。このうち2024年12月に確定したニューヨークとアイダホ向けは最大61億6500万ドルで、後にバージニア工場向けの最大2億7500万ドルが加わった。

助成金は一括で前払いされる資金ではない。米商務省は、Micronが建設と技術の工程を進め、量産・商業面のマイルストーンを達成した後に支払う。連邦政府が支えるニューヨークの対象も、計画する4棟のうち最初の2棟である。

Micronの10-Qによれば、適格な米国内半導体製造投資には35%の投資税額控除も適用される。ニューヨーク州とは、20年以上にわたり最大55億ドルを税額控除や対象雇用の賃金インセンティブで提供する条件案を結んでいるが、こちらは法的拘束力のないタームシートだ。2500億ドルという民間投資の背後には複数の支援制度があり、実際の受給額は投資、工事、雇用が条件を満たすかで決まる。

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逼迫は2027年を越え、ニューヨークの供給は2030年以降

Micronが長期投資を増やす理由は、足元の業績に表れている。2026年度第3四半期の売上高は414億5600万ドルで、DRAM売上高は313億ドルと全体の76%を占めた。DRAMの平均販売価格は前四半期から60%台前半の伸びとなり、同社はDRAMとNANDの需給逼迫が2027年を越えて続くと予想する。2026年度の設備投資も、政府支援の受取額を差し引いたベースで250億ドルを上回る見通しだ。

もっとも、ニューヨークは現在の逼迫に間に合わない。当面の増産日程では、アイダホ州の第1工場が2027年半ば、第2工場が2028年末に初回ウェハを出し、ニューヨークの第1工場は2030年以降に続く。Micron自身も市場環境に応じて供給計画を調整するとしており、2500億ドルの発表が全額の即時執行を保証するわけではない。

次の証拠は数字より工程に出る。GlobalWafersとの正式契約が成立するか。Micronが500億ドル超の増額分をどの拠点と技術へ割り当てるか。そして第1ニューヨーク工場が2030年以降に予定通りウェハを流せるか。コンクリート打設は長い計画を実物へ変えたが、米国内DRAM比率40%への距離は、これから開示される設備発注と量産日程で測ることになる。