NVIDIAMarvell Technologyは2026年3月31日、NVLink Fusion™を通じた戦略的パートナーシップと、NVIDIAによる20億ドルの投資を発表した。発表を受けてMarvell株は約13%急騰した。しかしこの取引が持つ意味は株価の反応よりも深いところにある。Marvellはクラウド大手向けカスタムチップ設計の最大手であり、その顧客の多くが作るチップはNVIDIAのGPU(画像処理ユニット)の直接の代替として開発されている。それでもNVIDIAがMarvellを取り込んだのは、GPU販売とは別のレイヤーでAIインフラの主導権を握る構造を構築するためだ。

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Marvellが担う役割:NVIDIAのGPUに代わるチップを設計する企業

Marvellはカスタム半導体設計の最大手として、ASIC(特定用途向け集積回路)の受託設計市場でBroadcomと並ぶ2強の一角を占める。その顧客には世界最大のクラウドプロバイダーが名を連ねており、AWSはMarvellの協力を得てTrainiumシリーズのAIアクセラレータを開発してきた。TrainiumはAWSのデータセンターでNVIDIAのGPUと同じAI学習・推論ワークロードを処理するチップであり、開発の動機の一つはGPUへの依存を軽減することにある。つまりMarvellは、NVIDIAの最大顧客たちが「NVIDIAから購入せずに済む」チップを設計してきた企業だ。

2025年12月、Marvellは光インターコネクト・スタートアップのCelestial AIを最大55億ドルで買収した。Celestial AIが持つ光インターポーザー技術は、プロセッサのチップレット(機能別に分割された半導体ダイ)間を光で結ぶ仕組みで、大量のデータを高速かつ低消費電力で転送できる。この買収でMarvellはシリコンフォトニクスと高速光インターコネクト分野の技術基盤を大幅に強化し、AIアクセラレータの設計能力を次の段階へと引き上げた。今回のNVIDIAとの提携は、その技術力を持つMarvellを正式にNvidiaのエコシステムへと組み込む宣言でもある。

今回の提携の核心はNVLink Fusion™(以下NVLink Fusion)にある。NVLink Fusionは2025年5月にNVIDIAが発表した技術で、サードパーティの半導体をNVIDIAの独自インターコネクト「NVLink」のエコシステムへ統合するための仕組みだ。企業がカスタムプロセッサ設計に組み込めるチップレットを提供し、そのチップレットを介してホストプロセッサがNVLink接続で他のチップと通信できるようにする。NVLinkは同一サーバー内のチップを高速接続し、ラック内の複数サーバーをまたぐ「NVLink Switch」と組み合わせることで大規模なAIコンピュートクラスターを構成できる。NVLink Fusionはこの両方のスコープに対応している。

MarvellはカスタムXPU(AI専用アクセラレータ)とNVLink Fusion対応のスケールアップネットワーキングを提供する。NVIDIAが提供するのはVera CPU、ConnectX NIC(ネットワークインターフェースカード)、BlueField DPU(データ処理ユニット)、NVLinkインターコネクト、Spectrum-Xスイッチ、そしてラックスケールのAIコンピュートだ。この構成が意味するのは、クラウド大手が独自設計のカスタムチップを採用したとしても、そのチップがNVLink Fusionに対応している限り、NVIDIAのインターコネクト基盤の上で動作するという現実だ。GPUを購入しなくても、AI工場の「配線」を握るのはNVIDIAという構図が成立する。

Jensen Huang氏はCNBCのインタビューでこの取引を「エコシステムの拡張」と表現し、「両社のTAM(総市場規模)を拡大した。だからこそ投資家になりたかった」と述べた。TAMの拡大という表現には、Marvellが担うカスタムチップ市場ごとNvidiaの影響圏に取り込むことで、ハイパースケーラーがどのような調達戦略を取ろうとも、AIインフラのインターコネクトレイヤーで主導権を持ち続けるという構想が込められている。カスタムASICの採用は、Nvidiaにとってエコシステムを広げる機会として機能する。

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シリコンフォトニクスと5G/6G:光ネットワーク支配に向けた第二の軸

NVLink Fusionによるカスタムチップ統合と並行して、両社はシリコンフォトニクスと光インターコネクト技術の共同開発、およびNvidia Aerial™を用いた通信インフラのAI化でも協業する。Nvidia AerialはNvidiaが提供する5G/6Gネットワーク向けのハードウェアモジュールとソフトウェアツール群で、通信キャリアのネットワークをAIワークロードに対応したインフラへと転換することを目指している。Marvellはメトロネットワーク向けの高性能光トランシーバーやデータセンター内スイッチングチップをすでに手がけており、Celestial AI買収による光インターポーザー技術がそれに加わった。チップレット間接続から長距離データセンター間通信、5G/6G通信キャリアのインフラまでをカバーする技術ポートフォリオが整いつつある。

この動きの数週間前、NVIDIAはCPO(コパッケージドオプティクス)技術を持つCoherentとLumentumの2社に合計40億ドルを投資している。CPOはデータセンターの高速光ネットワーク構築に必要なコンポーネント数を削減してコストを低下させる技術で、AI向けデータセンターの配線密度が急増するにつれて重要性が高まっている。今回のMarvell投資はその流れの延長線上にあり、シリコンフォトニクスから5G/6Gインフラまでをカバーする光ネットワーク分野の包囲網を形成する一手として機能している。

連続する20億ドル投資が示すAI工場全体の掌握戦略

今回のMarvell投資は、NVIDIAが近年実施してきた一連の戦略的少数持分投資の最新件だ。投資先にはSynopsys(EDA(電子設計自動化)ツール)、CoreWeave(AIクラウド)、Coherent(光ネットワーク部品)、Lumentum(光ネットワーク部品)、Nebius Group(AIクラウド、欧州最大規模のデータセンター建設中)が含まれ、CoherentとLumentumへの投資は合計40億ドルに上る。投資先をカテゴリで整理すると、EDAツールからクラウドインフラ、光ネットワーク部品、そしてカスタムシリコンまで、AI工場を構成するすべてのレイヤーに資本を通じた関係を構築していることが分かる。Huang氏が「エコシステムの拡張」と繰り返す言葉は、具体的な投資の積み上げによって実体を持ちつつある。

この構造が持つ含意は大きい。ハイパースケーラーがNVIDIA製GPUの調達を分散させようとしても、カスタムチップはNVLink Fusionを通じてNvidiaのインターコネクトに統合され、クラウドインフラはNvidiaが出資した事業者が運営し、光ネットワークはNvidiaが投資した光部品メーカーが支える。GPU販売額に換算されないところでNvidiaのエコシステムが広がっていく構図だ。

Matt Murphy氏はMarvellが「単独でも好調だったが、NVIDIAとの連携でMarvellは大きく飛躍できる」と語った。MarvellにとってNVIDIAのエコシステムへの統合は、技術的な正当性の確保と成長の加速という二重のメリットをもたらす。ただし、この統合が深まるほど、MarvellがAWS向けTrainiumをはじめとするGPU対抗チップの設計でどこまで独立した判断を維持できるかは業界が注視すべき問いだ。現時点でHuang氏は「AI推論の変曲点が到来した。トークン生成需要は急増しており、世界はAI工場の建設で競争している」と表現しており、NvidiaはGPUメーカーの枠を超え、AIインフラという産業基盤そのものの設計者として振る舞っている。


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