オークリッジ国立研究所(ORNL)は2026年8月4日、カリホルニウム252(Cf-252)の生産で放射化後の分離工程を約1週間短縮する手法を実規模で確かめたと発表した。2015年に始まった研究は、2025年の生産キャンペーンで本番設備を使う試験に到達した。従来と同じ品質を保ったまま、約2週間を要した工程を半分にできたという。西側でCf-252を生産する施設がORNLに限られるなか、今回の成果は希少な中性子源の供給を増やすための現実的な改良となる。

ただし、短くなったのは原子炉での照射から製品の封入までを含む製造期間ではない。高放射性の標的を溶かした後、目的の核種を取り出していく化学処理の一工程である。何が速くなり、どの制約が残ったのかを切り分けると、今回の改良が生産量へ効く条件が見えてくる。

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約2週間を半分にした中性配位子

Cf-252は、High Flux Isotope Reactor(HFIR)でキュリウム同位体に中性子を繰り返し当て、中性子捕獲とベータ崩壊を重ねて作る。照射済み標的はRadiochemical Engineering Development Center(REDC)のホットセルへ移され、濃硝酸で溶解される。ここからアメリシウムやキュリウム、核分裂で生じたランタノイドを分け、Cf-252を精製していく。

旧工程では、bis-diethylhexyl phosphoric acid(HDEHP)を使って三価アクチノイドとランタノイドを抽出していた。ところが、標的を完全に溶かす液は硝酸濃度が6〜8 Mと高い。HDEHPを働かせるには0.1 M未満まで酸性度を下げる必要があり、この供給液調整に約1週間を費やした。

ORNLのLætitia Delmauらは、中性配位子のtetraoctyl diglycolamide(TODGA)を使い、高酸性のまま目的元素を有機相へ移す経路を選んだ。2017年の技術報告では、Exxsol D60に0.2 MのTODGAを溶かした系が、実際のCf生産キャンペーンから得た高酸性溶液で三価アクチノイドをほぼ定量的に抽出できた。酸を薄めるために待つ工程を外せるのは、この化学的な違いによる。

開発は少量試験から段階的に進んだ。2015年には放射能を下げた廃液の小滴をグローブボックスで扱い、2017年以降はホットセル内の実液へ移った。2023年キャンペーンでは材料の6%を使って規模を広げ、2025年に実規模で試した。1サイクルでCf-252溶液中のアメリシウム、キュリウム、セリウムなど95%を抽出し、品質を変えず処理時間を約2週間から約1週間へ縮めた。

速くなったのは製造全体ではない

ORNLのCf-252生産は、標的の照射、溶解、元素群の分離、個別核種の精製、線源への加工という長い流れで進む。TODGA系が置き換えるのは、溶解直後に三価アクチノイドとランタノイドをまとめて回収する段階だ。2017年報告でも、ジルコニウムやルテニウムなどの核分裂生成物をどこまで排除するか、抽出後の洗浄と逆抽出をどう最適化するかは残る課題とされた。

したがって、「製造が2倍速くなった」とは言えない。ORNLが確認したのは、一つの分離工程で時間を半減し、従来と同じ結果を得たことまでである。年間の生産量、Cf-252の収率が何ポイント上がるのか、ホットセルの費用をいくら減らせるのかは公表されていない。

それでも、時間短縮には直接的な価値がある。高線量の物質を遠隔操作する専用施設では、1時間の占有にも大きな費用がかかる。占有期間が約1週間短くなれば、同じホットセルを必要とする別工程との競合を減らし、キャンペーン全体の処理能力を上げられる。新手法は追加改良を経て、2027年の次回キャンペーンから継続使用される予定だ。

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2年周期を決める費用と設備、2.645年の半減期

ORNLはCf-252を2年ごとにまとめて生産する。プログラム責任者のSamantha Schrellは毎年のキャンペーンも検討したが、費用と限られたホットセル時間に加え、2.645年という短い半減期を理由に見送った。

Cf-252は1グラム当たり毎秒2.31×10^12個の中性子を放出する。強力な中性子源である一方、実際の販売単位はグラムではない。DOE傘下のNational Isotope Development Center(NIDC)はマイクログラム単位で扱い、製品ページに数量を入力して見積もりを依頼する方式を採る。価格表は掲載していない。

この取引形態では、「1グラムなら数千万ドル」という換算を市場価格として扱えない。少なくとも、今回の工程短縮を金額へ置き換えられる公式データはない。供給の意味を測るなら仮想的なグラム単価より、次回キャンペーンの生産量と顧客へ出荷できるマイクログラム数を見る必要がある。

ORNLが1966年から2019年5月までの78キャンペーンで作ったCf-252は累計10.2グラムだった。半世紀を超える生産を合計してもこの量にとどまる。NIDCが現在も「在庫あり」としながら見積もり制を採るのは、少量かつ用途ごとに管理して供給する核物質だからである。

10基計画とCf-252の供給制約

需要を押し上げる用途の一つが原子炉の起動である。Cf-252は自発核分裂で中性子を出し続けるため、核分裂連鎖反応を立ち上げる起動用線源に使える。未使用燃料の検査や油井検層に加え、石炭分析にも用いられる。港湾保安と計器校正にも需要があり、原子力発電だけで決まらない。

米国のExecutive Order 14302は、2030年までに設計を完了した大型炉10基を建設中の状態とし、既存炉の出力を計5 GW引き上げるようDOEに促した。小型炉や軍事施設向け原子炉も動けば、起動用線源や燃料検査向けのCf-252が必要になる。ただし、原子炉計画の増加がそのままCf-252需要の確定量になるわけではなく、ORNLも具体的な需要予測を開示していない。

生産量を実際に増やす施策は二本立てだ。ORNLは新しい分離法に加え、HFIRでキュリウム標的を照射する運転サイクルを増やす。前者がホットセルの滞在時間を削り、後者がCf-252へ変わる原料を増やす。分離工程だけを速めても、照射できる標的が増えなければ出荷量は伸びない。

2027年のキャンペーンで確認すべき数字は、短縮された日数そのものではなく、回収率を保ったまま何マイクログラムを追加供給できたかである。照射量と化学処理の両方が伸びたとき、10年越しの新溶媒は初めて西側のCf-252供給能力を押し上げる。