ブラウザで遊べる移植作品を集めたリンク集「Ported2Browser」は、SavePointによると2026年9月29日の公開時に100本強だった掲載を10月27日には277本まで増やし、仏VGTimesは11月1日時点で「300本近く」と伝えた。SavePointやVGTimesは、同サイトがゲーム本体を置かず、各移植者のページへ案内する形だと説明している。一方で同じ10月、Ported2Browserとは別のCall of Dutyのブラウザ再現版について、Activisionから削除要請を受けたと開発者が公表した。ゲームを自分では置かないリンク集は、著作権上のリスクをどこまで避けられるのか。日米の著作権法は、この問いにそれぞれ別の仕組みで答えている。

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ゲームを置かずに移植先へ案内するPorted2Browserの仕組み

VGTimesの11月1日の記事によれば、Ported2Browserの各エントリーは「エミュレーター」「リコンパイル」「ファンゲーム」「ロムハック」「開発中」といった種別で分類されている。利用者はプラットフォームやジャンル、操作方法(キーボード、ゲームパッド、タッチ)で絞り込め、既知の不具合がある作品には別のアイコンが付く。ゲームのファイルを自前で配信せず、移植を手がけた人のページへ誘導するディレクトリだという点で、SavePoint、VGTimes、仏ブログKorbenの説明は一致している。

掲載作として報じられた顔ぶれは幅広い。VGTimesが11月1日時点で挙げた例には、Hollow KnightやCeleste、Stardew Valleyが含まれ、Grand Theft Auto(GTA): Vice CityやSuper Mario 64、Half-Lifeもある。約半数はPCゲームで、残りはNESやGame Boy、Nintendo 64からPlayStation 2、Xbox 360までにまたがるという。ただし掲載の単位は「ブラウザ移植」であり、画像編集ソフトCompositorのようにゲームではないアプリも数に入っている。

種別ラベルは、移植の作り方の違いを表している。エミュレーターは元のゲーム機の動作をソフトウェアで再現し、その上で元のゲームを動かす。リコンパイルは、ゲームのプログラムそのものをブラウザで動く形に作り直す方式だ。Tom's Hardwareは、QuenqのVice City版が、逆コンパイルで復元したソースコードのプロジェクトreVCを使い、WebAssemblyとWebGL 2でブラウザ上で動いていると推定している。Ported2Browserは、こうした個別の成果を1か所から探せるようにした入口にあたる。

掲載先の権利の状態も一様ではない。SavePointは、掲載作には公式デモ、オープンソースの作品、ファンによる移植が混在し、一部は利用者が所有する元のゲームファイルを読み込ませる方式だと説明している。

運営者は「BrowserBoy」と名乗る個人とされ、romhacking.netのフォーラムで公開を告知したと報じられている。実名や所在地は明らかになっていない。ドメインの登録記録(RDAP)では、ported2browser.comは2026年9月15日にNetwork Solutions経由で登録され、ネームサーバーにはCloudflareを使っている。サイトは公開が続いており、アクセスすると人間かどうかを確かめる画面が表示されることがある。

海外の紹介記事を見て日本から名前で検索する場合は、同名の別サイトに注意したい。ported2browser.sbsは自らを「independent guide(独立したガイド)」と称し、広告と別サイトwasmarcade.sbsへの誘導を載せている。SavePointは、ported2browser.orgも無関係の別サイトだとしている。

公開から約4週間で掲載277本、紹介が広がった10月

掲載数の推移と、同じ時期に起きた周辺の出来事を日付順に並べると次のようになる。掲載数は各媒体が記事の時点で示した値で、間の数字を補ってはいない。

日付 出来事 伝えた媒体
2026年9月15日 ported2browser.comのドメイン登録 RDAP
9月29日 Ported2Browser公開、掲載100本強 SavePoint
10月6日 非公式サイトplaygta5.comのGTA Vブラウザ版が数時間で停止 GodisaGeek、HotHardware
10月9日 AIで逆コンパイルしたブラウザ移植の急増を報道 Kotaku
10月10〜11日 開発者Luckey FaradayがActivisionの削除要請を公表 GameRiv、TweakTown、XDA
10月14日 掲載200本以上 Korben
10月16日 掲載217本 SavePoint
10月27日 掲載277本 SavePoint(追記)
11月1日 掲載300本近く VGTimes

公開日から数えると、Ported2Browserは約1か月で掲載を100本強から300本近くまで増やし、その間の10月にはplaygta5.comのGTA Vブラウザ版の停止と、Activisionの削除要請の公表が続いた。ただし、表にある権利者側の動きは、どれもPorted2Browser自体に向けられたものではない。playgta5.comの停止は権利者の削除要請によるとの見方があるものの、公式な確認はない。Activisionも通知を公開しておらず、削除要請の存在は開発者の説明に基づいている。

Ported2Browserの名前は、個人の紹介投稿を通じて広がった。SNSや海外のブログでの紹介は10月に相次ぎ、Redditのr/Portmasterに告知が投稿されたほか、仏Korbenが10月14日に取り上げ、10月18日にはThreadsにも紹介投稿が出た。もっとも、個々の反応の数字は控えめだ。Threadsの別の紹介投稿の表示回数は972回、掲示板Discuitの投稿は9票とコメント2件にとどまる。Hacker NewsやXでサイト単体が大きく取り上げられた形跡も見当たらない。

同じ時期に海外メディアが取り上げたのは、Ported2Browser単体よりも「AIで作ったブラウザ移植」全般の動きだった。Kotakuは10月9日、直近2週間ほどでAIを使って逆コンパイルしたエミュレーターやゲームが数百本現れたと書き、その理由をAnthropicのAIモデルClaude Opus 5.5の逆コンパイル能力に求めた。同記事が引用した10月8日のX投稿は、Call of Duty: Black Ops、Halo: CE、GTA: Vice City、Skate 3、The Simpsons: Hit and Runのブラウザ版を紹介している。本数はKotakuの見立てで、独立した検証はない。Ported2Browserはこの波の中で、ばらばらに公開される移植作品をまとめる役割を担った形になる。

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原作の素材を使った再現版と、手持ちのファイルを読み込む移植の違い

Activisionの削除要請を公表したLuckey Faradayは10月10〜11日、Xで「Activisionから、Call of Duty(CoD)のゲームをブラウザに移植したことでDMCA(米デジタルミレニアム著作権法)に基づく削除要請を受けた」と述べた(原文:"Activision just DMCA'd me for porting CoD games to the browser.")。Faradayによると関連する投稿は削除され、全ゲームがオフラインになった。対象は、Call of Duty: Black Ops 2のマルチプレイヤーを再現した「Claude of Duty: Vibe Slops II」と、Zombiesモードのマップを再現した「Kino der Toten」の2作である。Activisionは通知を公開しておらず、コメントも出していない。

TweakTownとXDAの説明によると、Faradayの2作のプロジェクトページには、原作のPC版からマップ、モデル、アニメーションを書き出して使ったと記されていた。確認できる事実は、原作の素材を取り込んだプロジェクトに削除要請が出たというところまでだ。Activisionは削除の理由を説明しておらず、素材の使用が要請の決め手だったとは確認されていない。

この事例を読むには、ゲームが2つの部品でできていることを押さえておくとよい。1つはキャラクターを動かし、当たり判定や勝敗を決めるプログラムで、逆コンパイルやリコンパイルで書き直せるのはこちら側だ。もう1つはマップ、3Dモデル、アニメーション、音声といったデータ、つまり素材である。プログラムを一から書き直しても、ブラウザで原作の見た目と音を再現するには素材が要る。その素材を原作から書き出して移植版に同梱するか、利用者の手元にある元のゲームファイルから読み込ませるかで、配布されるものの中身が変わる。

GTAでも削除と再公開が起きている。2025年12月には、DOS ZoneがTake-TwoのDMCAに基づく削除要請を受けてGTA: Vice Cityのブラウザ版を取り下げたと報じられた。その後、2026年9月にはQuenqでVice CityとGTA IIIのブラウザ版が再び遊べる状態になったとTom's Hardwareが伝えている。

Tom's Hardwareは、DOS Zoneの旧版が元のゲームファイルの所有を求める仕組みだったにもかかわらず削除されたことを、過去の記事の見出しで伝えている。同誌は現在のDOS ZoneのVice CityとGTA IIIが素材のアップロードを求める方式で公開されているとも書き、削除要請が配布の仕方を変えたと見る。手持ちのファイルを読み込ませる方式でも削除要請の対象になりうることを示す例だが、Take-Twoが削除を求めた理由はこの事実だけでは特定できない。

Ported2Browserの掲載先にも、この違いはそのまま当てはまる。SavePointの説明どおり、公式デモ、オープンソースの作品、ファンによる移植、所有ファイルを読み込ませる方式が同じ一覧に並ぶ。どの方式なら問題がないかを示した報道や公式の判断はない。言えるのは、リンク先によって権利の状態が異なり、それをリンク集の見た目からは判別しにくいということだ。

リンク集の運営者に、日米の著作権法は何を求めるか

米国著作権法の第512条(d)項は、ディレクトリ、索引、ハイパーリンクといった「情報所在ツール」で侵害物の所在へリンクしたサービス提供者を対象にした規定だ。条文は、提供者が(1)侵害を実際に知らず、侵害が明らかな事実も認識していない、または認識した後に速やかにリンクを削除または無効化する、(2)侵害行為を管理する権利と能力がある場合に、そこから直接の金銭的利益を得ていない、(3)侵害の通知を受けたら速やかに削除または無効化する、といった条件を満たすとき、金銭的救済の責任を負わないと定めている。

この規定は、一定の条件を満たした事業者の責任を免じる「セーフハーバー」と呼ばれる仕組みの一つである。この規定の要点は、条件の中身にある。第512条(d)項はそもそもリンクを張る側のための規定で、条文が挙げる条件の中に、リンク先を自分で置かないことは含まれていない。免責を受けられるかどうかは、侵害を知った後や通知を受けた後に速やかにリンクを外すか、侵害から直接の利益を得ていないかといった、運営の仕方で決まる。

日本では、2020年10月1日施行の令和2年著作権法改正でリーチサイト対策が盛り込まれた。侵害コンテンツへのリンクを集めて利用者を誘導する「リーチサイト」の運営は、刑事罰(上限5年、親告罪)の対象になった。リーチサイトなどで侵害コンテンツへのリンクを提供する行為も著作権侵害とみなされ、民事上の措置と、上限3年の刑事罰(親告罪)の対象になる。

文化庁の解説は、規制の対象を「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するもの」と「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるもの」の2類型に分けている。一般論として、適法なリンクが多くてもサイトの構成から侵害コンテンツへの誘導が明らかなものや、侵害コンテンツへのリンクが半数以上を占めるものは対象になりうると説明する。ストリーミング形式の侵害コンテンツへのリンク集も対象に含まれ、該当するかどうかは最終的に裁判所が判断する。

項目 米国(著作権法第512条(d)項) 日本(令和2年改正のリーチサイト対策)
規定の位置づけ リンクを張るサービス提供者の責任を条件付きで免じる規定 リーチサイトの運営と、そこでの侵害リンク提供を規制する規定
責任が生じる、または免れる条件 侵害の認識後や通知後に速やかに削除する、管理できる侵害から直接の利益を得ない、などを満たせば免責 侵害物へ殊更に誘導する、または主として侵害物の利用のために用いられるサイトが対象。該当性は司法が判断
制裁の種類 民事の金銭的救済の責任。刑事責任は扱わない 運営は刑事罰(上限5年、親告罪)。リンク提供はみなし侵害で、民事措置と刑事罰(上限3年、親告罪)

侵害物へのリンクを集めたサイトについて、米国著作権法は侵害の認識後や通知後に速やかに削除するなどの条件を満たせば金銭的責任を免れる仕組みを持ち、日本の著作権法は侵害コンテンツへの誘導を主とするサイトの運営自体を刑事罰の対象にしている。両者は制度の種類が違うため、どちらが厳しいかを単純には比べられない。それでも、どちらの制度もリンク集を「置いていないから無関係」とは扱っていない点は共通している。

Ported2Browserがどちらの規定に当たるかは、ここから直接は導けない。運営者BrowserBoyの所在地は明らかになっておらず、どの国の法が適用されるかも定まらない。掲載先それぞれが侵害物にあたるかどうかも、個別の素材の扱いと許諾の有無による。

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運営者の削除対応と掲載先の権利状態がリスクを左右する

2026年11月5日時点で、Ported2Browser自体に対する削除要請や声明、訴訟は報じられていない。表に並べた措置はいずれも、リンク先と同じ種類のプロジェクトに向けられたものだった。

KotakuのLewis Parkerは10月9日の記事で、Take-TwoやMicrosoftの弁護士が移植版を削除させても、簡単に作れるため別の版が作られると論じた。DOS ZoneのVice Cityが取り下げられてから約9か月後にQuenqで同じ作品が遊べるようになった経緯は、この見立てと重なる。移植版が消えては現れる状況では、リンク集の側にも、新しい掲載先を載せるたびに判断が求められる。

日米の制度を並べると、リンク集がリスクを下げる道筋は条文と文化庁の資料から読み取れる。米国の第512条(d)項に照らせば、侵害を知った後や権利者から通知が来た後に速やかにリンクを外す運用が条件の中心になる。日本の文化庁の目安に照らせば、侵害の疑いがある掲載先を載せず、一覧全体が侵害コンテンツへの誘導に傾かないようにすることが意味を持つ。これはPorted2Browserが現にそうしているという意味ではなく、リンク集という形態一般に当てはまる条件である。

遊ぶ側にも見分ける手がかりはある。掲載先のページで、その移植が原作の素材を同梱して配っているのか、利用者の手持ちのファイルを読み込ませるのか、公式デモやオープンソースの作品なのかを確かめることだ。どの方式なら問題がないという保証はなく、判断の材料が増えるにとどまるが、それでもリンク集の一覧だけを見て遊ぶよりは状況を把握できる。

ゲームを置かないことだけでは、リンク集の著作権リスクは消えない。Ported2Browserが掲載基準や削除依頼への対応方針を公に示すかどうかが、このサイトのリスクを測る次の材料になる。