中性原子量子コンピュータを開発するQuEra Computingは2026年8月27日、AnthropicのClaudeを使ってレーザーの復旧・調整ロジックを開発したと発表した。完成した復旧コントローラは、700回の試験のうち695回でレーザーを目標周波数へ戻した。成功率は99.3%である。だが、注目すべき変化はAIが量子計算機を常時操るようになったことではない。Claudeが実機で試行錯誤した知識を、検査できる通常のプログラムへ封じ込めたことだ。

レーザーは中性原子機の手足に当たる。QuEraの装置では、光ピンセットで原子を捕まえ、別のレーザーで状態を操作し、最後は光を読んで計算結果を得る。Anthropicによると、今回扱ったレーザーには約1兆分の1の周波数精度が要る。温度や振動、気圧で「ロック」が外れれば、量子ビットへ正しい操作を送れなくなる。人間の専門家が5〜10分かけて戻していた稀な故障を、数秒で処理するのが今回の仕事である。

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Claudeが作り、通常のコードが動く

QuEraがClaudeへ渡したのは、顧客向け量子コンピュータ全体ではなく、約70万ドル相当のレーザー専用テストベッドだった。AIはマイクロ秒単位で動くサーボループの内側には入らず、その上位から機器の状態を読み、制御値を変えた。人間は操作範囲と成功条件を先に決めた。再ロックは初回で成功し、その状態を30秒保つ必要がある。

開発ループは四つの役割に分かれた。新しい復旧仮説を立てるClaude、コードを直すClaude、実機で試して全操作を記録するClaude、ログから次の変更を決めるClaudeである。それぞれ新しいインスタンスを使い、ビームの遮断や機器の電源断、周波数のずれを与えながら、一晩に数百回の改善を重ねた。

ここで開発と運用を分けて見る必要がある。復旧スクリプトは実行時にAIを呼び出さない一方、調整ワークフローはClaudeを実行中のループに残している。前者はClaudeが設計・検証したスタンドアロンの決定論的プログラムで、処理内容を人間が検査できる。故障時に大規模言語モデルの応答を待ったり、モデルが毎回別の判断を下したりする構成ではない。

700回の数字を三段階に分ける

99.3%へ至るまでには、性質の異なる三つの数字がある。Anthropicによると、人間の操作手順を順番どおり再現した従来の固定スクリプトは、復旧率が約58%、所要時間は約150秒だった。途中で室温や気圧が動くと、すでに終えた操作が無効になり、最初からやり直す弱点があった。

段階 公表された成功率 復旧時間 測定の意味
従来の固定スクリプト 58% 約150秒 人間の線形手順を自動化
Claudeによる無人開発の走行 96% 約6秒 一晩の反復後に到達した開発値
後日の検証 695/700、99.3% 0.9〜5.4秒、最難関は約10〜14秒 七つの故障クラスを各100回試験

開発中の96%と独立評価の99.3%は同じ測定ではなく、後者は七つの故障クラスを各100回試した700回の検証結果である。五つの未成功は共通する実験装置側の条件が原因だったとQuEraは説明している。コントローラが誤った周波数を成功と判定した例はなかった。ただし、試験と原因分析はいずれもQuEraによるもので、第三者の追試や査読論文、完全な試験手順は公開されていない。

注入した故障以外の記録もある。人が出入りする通常の実験室で数週間にわたるパイロットを行い、自然に発生した43回のモードホップをすべて自動復旧したという。700回の制御された試験を、実環境に近い揺らぎが補う。とはいえ、これは専用テストベッドの成績であり、QuEraは本番QPUへの適用を次の工程としている。

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12個のパラメータを無人で調整

再ロックが故障からの復帰なら、調整は平常時の揺らぎを小さくする作業だ。QuEraは、相互に影響する12個のフィードバックパラメータをClaudeに調整させた。人間は一部の周波数帯を目で追いながら値を合わせるが、エージェントは変更のたびにノイズスペクトル全体を計算し直した。約12,500回の評価で、レーザーが別のモードへ飛ぶ事故は一度も起きなかったとしている。

調整後の残留周波数ノイズは5分の1になった。約19時間の無人連続試験ではロック外れがゼロで、調整前は1時間あたり1.6回だった。さらに、最適化系が触れない独立した計測器で熟練者の手動調整と比べたところ、測定帯域全体で同等だった。一方、手動調整が見落としていた約220kHz付近の共振は約1,000分の1に抑えられ、線幅に相当する指標が58kHzから21kHzへ縮んだ。

同じ方法を量子ゲートに使う二つ目の波長へ移すと、一晩で設定を見つけ、初期状態より約10倍静かなロックにして受入試験を通過した。最初の開発で得た感度マップや安全範囲を再利用できたためだ。ただし、調整側は今もClaudeが実行中に判断する。QuEraは、復旧側と同じスタンドアロンツールへまとめる作業を今後進めるとしている。

MHSは安全装置を含む接続層

Claudeが異なる計測器を読んで操作できたのは、AnthropicとHHMI Janelia Research Campusが始めたModel Hardware Standard(MHS)を介したためである。MHSのドライバーは、温度を読む、設定値を書くといった基本操作を共通の形で公開する。機器が何を測れるか、何を変えられるか、安全上どこまで許されるかも機械可読な説明へ変える。

エージェントはMCP、コマンドライン、コードAPIからドライバーへ接続できる。オンライン推論では間に合わない処理や長時間の実験では、複数の命令をコードファイルへまとめ、機器側で決定論的に走らせる。QuEraの復旧スクリプトはこの経路を使った例である。物理装置をAIへつなぐ仕様でありながら、常にAIへ操作を委ねる設計ではない。

安全性もモデルの善し悪しだけには預けない。機器が宣言した操作範囲、インターロック、緊急停止をハードウェアとの境界で強制し、AIはその内側でしか動けないようにする。今回の試験でも、候補設定がロックを外せば元へ戻す仕組みが働いた。

もっとも、MHSは限定的な研究プレビューにある。仕様と参照実装はまだオープンソースではなく、独立した安全評価も公表されていない。プログラム可能な接続口がない装置には対応せず、Anthropic自身もClaudeの空間・物理推論には専門家の監督が必要だと認める。モデル非依存を掲げる共通仕様として評価するには、別のモデルと第三者製ドライバーでも同じ安全制限が働くかを再現できなければならない。

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誤り訂正を自動化したわけではない

QuEraは、Aquilaで一般的なレーザー障害を以前から自動復旧し、公称稼働率は99%を超えると説明している。Aquilaは2022年からAmazon Braketで使える256量子ビットのアナログ機だ。今回狙ったのは、固定手順では処理しにくく、専門家の判断が残っていた稀で重い故障である。

この違いは将来の装置ほど重くなる。QuEraとAWSは、数百の論理量子ビットで100万回規模の論理演算を目指す「Libra」を2028年にAmazon Braketへ投入する計画を掲げる。QuEraのロードマップ上の目標は最大256論理量子ビット、論理誤り率10⁻⁶だ。計算が数時間から数日に延びれば、途中のレーザー停止で誤り訂正では救えない結果破損が起こり得るとQuEraは説明する。遠隔拠点にレーザー専門家を常駐させ続ける運用も、台数が増えるほど難しい。

ただし、今回公表されたのはレーザー制御の成績である。99.3%は再ロックの成功率で、量子計算の成功率ではない。ノイズを5分の1にした結果も、量子ゲート忠実度や回路の完走率、論理誤り率を直接測っていない。レーザー安定化は誤り耐性量子計算を支える設備条件だが、量子誤り訂正そのものをClaudeが自動化したわけではない。

商用展開への効き目は、本番QPUへ載せた後の平均故障間隔や誤復旧率を測り、停止時間と保守工数がどれほど減るかで判断する必要がある。そのうえでレーザーノイズの改善と量子ゲート、論理量子ビットの成績が結び付けば、AIが熟練者の手順をコードへ移した成果が、量子コンピュータの稼働率として初めて表れる。植